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平成20年07月号 第252回

全剣連会長  武安義光

  1年で1番日が長い6月を迎え、皐月やあじさいが咲き誇っています。
  京都の行事を終えて、講習会が各地でつぎつぎと展開されます。


  まずは奈良市での第46回中堅剣士講習会、第17回剣道八段研修会、第3回女子審判法研修会および第13回女子審判講習会、男子と女子の強化訓練講習会、社会体育指導員養成初級・中級講習会、第17回杖道中央講習会など、さらに全剣連後援の講師を派遣する各剣連主催の講習会と続きます。6月は錬成の月でもあります。

平成19年度全剣連事業報告、収支決算決定

  6月は前年度事業の締めくくりの月です。11日に、評議員会、理事会を開催し、前年度事業報告、収支決算等を承認願いました。


  『剣窓』で毎月お知らせしているように年度事業計画に沿ってそれぞれの仕事はおおむね順調に進められました。講習事業では、地方各剣連に軸足の重点を移した体制は定着したと見ます。若手剣士を選抜して行う、通称骨太剣士養成計画は、第2期の2年間養成に取り組み効果をあげつつあります。生涯剣道の進展を反映して、全剣連が行う六段以上の審査の受審者は増加しつつありますが、順調に実行されました。このうち受審者増加が著しい剣道八段審査は、2日にわたって行い順当に結果を得ました。審査の質の向上には努力を重ねてきましたが、逐次成果が上がりつつあると見ています。


  居合道、杖道部門も、審査の適正化、指導資料の充実、普及の活性化に努力し、成果を収めつつあります。


  国際関係は、要望の多い指導者の派遣を重点的に実施しました。また国際剣連の事務を処理する他、新規に加盟したGAISF(国際競技団体連合)の活動にも適切に対応しました。


  剣道界の事務運営の効率化を計るためITの活用を進める他、各剣連でのホームページの立ち上げを促進しました。


  全剣連設立55周年事業として、都道府県剣連の協力を得て、はじめて剣道人口国勢調査を行い、多くの知見を得ることができました。また5年ごとの七段以上の高段者名簿を刊行しました。


  教育改革の一環として行われる、中学校体育での武道必修化に対し、全剣連は都道府県剣連、関係剣道団体と協力し、その準備、関係機関への協力に全力をあげることを決議しました。


  収支決算については、過去の蓄積の一部を使うことで、予算を組んでいました。登録人員の減少による減収などがありましたが、節約、合理化などにより、おおむね予算どおり、一般会計5億9千百万円、単年度赤字4千4百万円の決算を行いました。

20年度事業における重点事項

  本年度事業は、すでに3月に決定された事業計画に基いて仕事に取り組んでいますが、今後の重点に触れておきます。


  指導、教育を通じ、質の良いレベルの高い剣道を育てること、剣道の普及を進め愛好者を増やす努力をすることなどの基本方針に変更ありません。全剣連はこれまで積み上げてきたものを現場で生かし、剣道の普及、水準の向上を実現する年にすることを目指します。


  中学校での武道必修化に対する準備を加速させるほか、社会一般の剣道に対する理解を広め、評価を高めるための活動を強化していきます。


  まず指導法教育の強化のために、これまでも行って軌道に乗ってきた審判法講師要員研修に組み合わせた形で、指導法講師要員の特別研修を試行します。中学校での武道必修化に対しては、現在の中学校における剣道教育の実態把握、教育に協力できる人材バンクの整備、教育事例集の作成などをまず行います。


  また動きが活発な国際剣道の状況には的確に対応していくことが必要で、世界大会への準備のみならず、情報の把握に努め、援助を強化しつつ、万全の対応を行うよう努力します。

『剣道指導要領』が出版される

  昭和52年3月に出版され、その後何回かの補足改訂を経て、全剣連における剣道指導書として広く普及、活用されてきた『幼少年剣道指導要領』は、見直しの時期に来ていることから、18年6月に全面的見直し作業に着手しました。内容、体裁ともに面目を一新されてようやく完成、本年7月に出版されます。


  今回は総合的指導書とすることを目指し、表題もこれまでの「幼少年」を削除し、一般指導書として活用されることを願っています。担当された委員には大変なご努力を頂いたことに深謝するものです。


  カラー図版を全面的に取り入れ、内容のみならず、体裁面でも全剣連の代表指導書といえるものになったと思います。従来の指導書より値段は少し張りますが、広く活用されることを願っています。

段位審査における60歳以上の修業年限特例を廃止

  生涯修業を前提とし、剣技の基準に基づく実力評価による審査を行うこととして制定された現行の段位審査規則において、段位受審資格は、前段取得後の実力涵養期間としての修業年限を定めて組み立てられてきました。


  称号を重視して大幅な組み替えを行った、平成12年実施の現行規則においても、修業年限については、従来の考え方を引継ぎ、平成元年の規則で定めた修業年限を踏襲しました。ただこの中で目立つ内容は、第16条第2項第3号の、満60歳以上の六〜八段の受審者に対する修業年限を短縮する優遇措置です。


  これは規則制定の前年3月に合意を得た「称号・段位の見直しについて」の中の具体的改善策第3号の「昇段のための修業年限の改善」の、五段以下の英才の抜擢のための短縮と並んで、「六段以上については高齢者対策として、受審資格の短縮等の優遇的措置を盛り込む」という方針に基づいて取り上げられたものです。


  改定後8年を経た今日、この条項を顧みると、問題点が浮かび上がってきました。まずは審査の生涯修業、実力主義の基本方針の中で、受審資格に高齢者優遇を取り上げることに、基本的に疑問が生じます。


  合格率が高く、若い少年少女が主体の低段位への年配者配慮はともかく、六段以上の剣道界の高段者にこの種の措置を一般的に設けることが良かったのかどうか、特に60歳という年齢は、社会的にも高齢者と言えるかどうか、この年齢は修錬を重ねて伸び得る年齢であることは、審査の合格者年齢を見ても理解される所です。


  一方現実にこの条項に基づき受審者される方の成績は、八段では過去に一名、七、六段では少数見られますが、このクラスでは、正規の受審者資格で挑戦される同年代の方との比較において、不公平感が生まれていることは見逃せません。


  それらを考慮の上、この条項は廃止し、来年度から施行することに致しました。もちろん年配で該当される方には、同情する意見もありましたが、現行制度の基本思想に基づき決定致しましたので、ご理解を得たいと思います。


  なおこの措置の実施により、全剣連も受審者の減少による収入減がありますが、審査の質の向上が期待できるメリットで報いられると考えます。

断 片 戦前の二刀の名手を取り上げた図書

  昭和9年5月に行われた皇太子(現天皇)ご生誕奉祝の天覧剣道試合一般の部で、香川県代表として出場、弱冠21歳で逆二刀を駆使して健闘決勝戦に進み、東京府代表講談社の野間 恒と決勝を争い敗れた藤本 薫の生涯を扱った文庫本が、昨年秋出版されています。南堀英二著『昭和の二刀流ビルマに死す 天覧試合の花形藤本薫の生涯』(光人社)です。(敬称略)


  ここで本書を取り上げるのにはいくつかの理由があります。まずはこの御前試合は2回目で、世の関心を集めた有名な大会だったことです。


  特に野間 恒は講談社社長の野間清治氏(剣道普及の功績で剣道殿堂入り)の子息の名手で、この大会が講談社発行の各雑誌で大大的に報道され、私も中学校時代に関心を持っていました。


  藤本は高松中学の出身で、同窓の植田 一氏(剣道特別功労者)、大島 功元会長と当時親交があり、ご両人は書中にしばしば登場されます。


  この決勝戦の勝負は激戦の末、野間が勝ちましたが、見る人の多くの所見は明らかに藤本が勝っており、誤審というより、二刀に勝たせず、講談社の野間を意図的に勝たせたのだという風評が一般であったといわれました。


  この時の審判は3人制でしたが、現在と異なり主審に判定の権限があり、主審の中山博道範士は道義的に非難を浴び、東大の師範を退かざるを得なくなったという副産物までありました。


  また試合者の野間はまもなく病死、藤本も将校として召集され大東亜戦争緒戦のビルマで戦死し、共に剣道人として終わりを全うすることができませんでした。


  一方たまたま「剣道指導要領」の内容に二刀の記述がないことが議論になり、現在欠けている二刀の指導書を別にまとめようという話になりましたが、この時期に目に付いたのが本書です。戦前の剣道人を取り上げた本書は価値あるもので、ご一読をお薦めします。

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