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平成22年07月号 第276回

(財)全日本剣道連盟会長  武安義光

  冬が去っても続いた不安定な気候も正常化し、皐も花開く好季節を迎えました。京都での大会・審査など行事も済んで、剣道界も新人を加えての体制充実、実力向上の時期を迎えています。全剣連も各剣連の40歳台の中堅幹部の充実強化を図るための中堅剣士講習会、昨年秋とこの5月の合格者を集めての八段研修会を開催、また審判・指導法の講師要員を養成する幹部研修、女子高段者を対象にした審判研修・講習会など、目白押しのプログラムをこなしています。

  6月は経営体として前年度事業の締めくくりをする時期でもあり、事業報告・決算が評議員会・理事会で承認されました。このあと役員は仕事に油が乗る改選2年目を迎えます。

  経営面の課題としては、国の方針である公益法人制度改革への対応に向き合う年になります。また中学校体育での武道必修化も迫ってきました。剣道が中学校体育に広くスムーズに取り入れられるよう準備を進めなくてはなりません。

  さて政界では鳩山由紀夫首相が退き、菅 直人内閣が発足しました。参議院選挙を控えての表紙の取換えだと野党は批判しますが、その評価は目前の事象への人気取り対策でなく、国の長期的発展への道を誤らぬ政治に取り組めるかどうかについて行うべきです。お互い剣道人が目指すべき長期的修錬への姿勢と同じであって欲しいものです。


21年度事業を顧みる

  事業報告に載せる文章を練るために、専門委員会が担当事項につき検討を加えることが慣例になりました。今回の報告は本年度の事業計画と共にこの手順を経てできています。今後の改善を図る上で望ましい手法であると思います。

  昨年度は指導力強化の仕事を進めるために、指導委員会を独立させ、普及委員会に学校教育部会を設けました。秋から発足したこれらの組織は関係委員の努力と相俟って、本年度事業の講習の充実に着実に貢献しつつあると見ています。

  ブラジルでの世界大会は順調に行うことができました。国際活動として前年度の大きな事業でした。またこの大会への参加選手の強化活動も成果を挙げ、最小限責任を果たす成績を挙げました。

  強化活動としては、大会と別に若手剣士の充実を目指した、骨太剣士養成と称している選抜特別訓練講習会の強化活動が三期目に入り実績を収めつつあります。

  大会関係では、全日本都道府県対抗剣道優勝大会と全国家庭婦人剣道大会を男子・女子の対抗大会に組み替え、そこに高校生・大学生剣士の出番を与えたことは、成功というべきで、観客の増加も目立ったばかりでなく、今後の都道府県剣道界の充実に貢献することになりましょう。

  秋の全日本剣道選手権大会への一般の関心も高まっており、会場の入場券が完売、札止めになったことは関係者を元気づけています。

  一方大会の充実に対応する審判技術の水準向上については、講師要員の育成、講習会の効果的実施と相俟って向上が図られました。

  称号・段位審査の適切な運営は、剣道の文化面での価値を左右する重要な要素であり、審査員の行う審査内容の向上を図るため、審査の結果を解析して情報の提供を進めています。

  規則関係では受審に際して60歳以上の受審者に認めていた、修業年限を半分にする優遇措置を廃止しました。また長年手を付けていなかった級位の審査規則を改定し、称号・段位審査規則の一環として位置付けました。この運用についは従来通り地方剣連に任せており、審査の際「木刀による剣道基本技稽古法」を取り入れることを要請しています。

  社会体育指導員養成事業は発足以来14年を経て、上級認定者の更新講習を行う段階に至り、初級認定者も6千名に近付き、各地の現場の指導力の充実に貢献していると確信します。また剣道を専攻した学生の資格取得を容易ならしめるための特別講習会を試行し、事業として拡大することとしています。

  居合道・杖道ではそれぞれ事業の運営と内容の向上を進めました。

  医・科学関係では、主要大会でのドーピング検査を行いましたが、全般的な安全対策を進めました。

  情報関係ではホームページの充実を進めましたが、とくに選手権大会において即時性を高めた画像の提供を行い好評を得ました。

  長期構想の検討では、公益法人制度改革に対応する全剣連の在り方の検討を進めました。

  以上主要事業につき概要を取り上げましたが、全般的に見た成果として着実に前進が見られると締めくくらせて頂きます。

選抜特別訓練講習会(第三期 第3回)の様子
選抜特別訓練講習会(第三期 第3回)の様子
Bumb東京スポーツ文化館・2月25日-28日

21年度の決算と財務事情

  少子化の影響もあり、初段取得者の数は年間4万人を割り、さらに減少傾向が続いています。中高年の活動がこの傾向を補ってはいますが、称号・段位の登録料・審査料の減少傾向はやむを得ないところです。しかし前年度決算ではその減少幅は、計上した予算を下回りました。また特別会計の収入増加、支出の削減の効果もあり、21年度の一般会計の収支は、収入5億7千5百万円、支出6億百万円、収支差額は予算を下回る△2千6百万円で収まりました。 経費の節減、合理化など運営の努力の効果もあり、社会全般が不況に追いまくられている時期に、まずまずの実績であったと感じています。詳細は記事で御覧下さい。


公益法人制度改革にあたり、全剣連は一般法人を指向

  政府の公益法人制度の改革の方針から、現存の公益法人は一昨年12月から特例民法法人という、いわば暫定的な組織に移行しており、5年以内つまり平成25年11月末までに、新制度の公益法人か、一般法人かいずれかに移行すべきことが規定されています。移行できない場合には解散になるという厳しい規制があります。さきに「公益法人の改革に向き合う年とする」と記したのはこのような情勢にあるからです。

  新制度による公益法人になるには「公益目的の事業の比率が50%以上であること」など、これまでの公益法人に比較して、いくつかの厳しい条件が課せられます。

  全剣連はこれらをクリアすることは可能だと思いますが、許認可に至る過程において、全剣連の持つ内部留保の扱いなど幾つかの関門がありそうです。また新公益法人としてスタートできた後も、運営面で厳しい役所の監督を受けることが予想されています。

  基本姿勢として、日本の伝統と文化で育てられた剣道を通じての人造りを目指す剣道界の運営を司る連盟は公益法人であることが望ましいという判断があります。また公益法人であれば、税法上の優遇措置が受けられます。

  これらの条件を比較判断した結果、公益法人制度の改革への対応に当たっては、事務面の多くの困難を回避するため、まず一般法人を目指してスタートしよう。そしてその後の進展、情勢を見つつ公益化を目指すことにしよう。このような判断を行った訳です。

  この方針を今回の評議員会・理事会において提案し、それぞれ承認されましたので、今後新法人の定款の立案、評議員の選任などの手続きを進めることになります。この際つぎの段階での公益法人化に進むことを念頭に置きつつ、定款などの立案を行うことにします。


剣道界の充実に貢献された二人の方を失う

  全剣連専務理事を務められ、後に副会長を兼ねられた、宗像善俊氏が去る6月3日に亡くなられました。宗像さんは東大法卒、通産省に入られ行政の道を進まれました。海外勤務もされ、中小企業庁次長、大阪府副知事、公正取引委員会委員などを歴任されています。旧制第二高等学校ご出身で、剣道には熱意を持つ熱血漢でした。全剣連常任理事に就任を願い、平成9年から二期にわたり専務理事を務められました。事務的事項には厳しいご指導があり、立派な実績を残して頂きました。その後顧問に就任されましたが、体調を崩され、剣道行事に顔を出されることがなかったのは寂しいことでした。ご逝去を悼みます。

  (財)愛知県剣連会長を務められた谷 鐐吉郎氏が6月6日に亡くなられました。谷さんは戦前の東京高等師範のご卒業。戦時には海軍予備士官として海軍兵学校の教官を務められました。戦後剣道が復活してから、愛知県警において、剣道の修業・振興に努められました。全剣連常任理事、審議員、相談役にも就任されご尽力頂きました。名古屋を基盤として、剣道の振興に大きな功績を挙げられ、全剣連は平成20年剣道功労賞を贈りました。ご冥福を祈ります。


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