図 書
現代剣道百家箴
剣道趣旨
川村 音次郎(一橋剣友会会長)
抑モ剣道ハ我国古来武士道ノ粋タリ。其理深邃ニシテ、應用ノ道廣ク、利害ノ関係モ亦大ナリ。
故ニ之ヲ學ブ者ハ、剣中ニ於テ心性ヲ悟リ、己ヲ責メテ人ニ勝ツベキ決断力ヲ修養シ、形體ノ運用ハ自然ニシテ刀形ニ適ヒ、剣ヲ用ヒテ乱サズ、理非ヲ分別スルハ剣道ノ本然ナリ。
之ニ適フ者ハ無作ノ妙用ヲ発スルニ至リ、未萌ヲ制シ、不立ニ勝チ、彼等ノ虚実ヲ察シ、生殺与奪ノ機ヲ知リ、変化應用ノ法理ヲ自得シ、上剣ノ道ニ超出ス。
学者剣道ノ樞紐(大切なところ)ヲ失ハズ。輕忽ナク誤認ナカランコトヲ切望ス。
以上は在校6年間、日曜、祭日を除く毎日、晝休、放課の2回、時に寒稽古、暑中稽古ある場合は更らに1回、道場に集まる者の眼に触れた、一橋道場に掲示されたもので、我等学生に強い印象を與え、自然暗するようになったもので、諸兄熟読玩味の資にと敢て轉記したものである。
*現代剣道百家箴は、1972(昭和47)年、全剣連20周年記念事業の一つとして企画された刊行物です。詳しくは「現代剣道百家箴の再掲載にあたり」をご覧ください。