アンチ・
ドーピング
剣道におけるアンチ・ドーピング(コラム34)
剣道は様々な年齢、体格の人がそれぞれの条件に合わせて真剣に楽しむことが出来るもので、身体能力が高ければそれで勝てる訳ではありません。そういった点で、ドーピングは剣道上達への効果もあいまいで、一般の剣道愛好家はほとんど意識されていないものと考えます。
しかし、ドーピング検査の対象となる大会の選手には、他のスポーツの選手と同様に、相応の知識と気構えが必要となり、想像以上に真剣に対応する必要があります。
例えば注意していても、知らないうちに禁止薬物を摂取してしまう可能性があります。厳密に管理されて、法律的に何の問題もない医薬品でさえも、極微量の禁止薬物が混入している可能性があり得ます。これは、一般のサプリメントや医薬品などは、一般の人や患者さんが安全に使用することを前提として製造されているためで、特定の禁止物質が混入していないことを、製造単位ごとに試験をして、保証することは非常に多くの作業と経費が掛かるため、実施されてはいないからです。
一方、近年の分析技術の進歩は驚くほどで、ごく微量(医薬品の不純物としては問題にされない量)を服用しても、実際に検知されてしまう事があるようです。
しかしどんな事情があっても、ドーピング検査で陽性に判定されると、選手は疑いの目で見られ、自己責任として自らの無実を証明することを求められてしまいます。
もちろんこれは極めてまれな例で、必要以上に神経質になることはありませんが、ドーピングに関しては、どんなことが起こるか想像を超える時があります。そのため選手には日ごろから万一の事態に丁寧に備えておくことが大切になります。日々頭の片隅でドーピングを意識し、使用するサプリメントや薬などについては専門家に相談し、製品情報や日々の服用履歴を記録するなどの対応をしておく事が非常に有効になります。
対象となる大会に出場される選手の方々には、稽古に集中される中、思わぬ違反を疑われないよう、実は大変な面倒もお願いしています。
アンチ・ドーピング委員会
委員 亀尾一弥
* この記事は、月刊「剣窓」2021年8月号の記事を再掲載しています。