
図書
『令和版剣道百家箴』
「生涯剣道」の実践
剣道範士 山城 宏惟(北海道)
15歳より始めた剣道を、80歳半ばの今もって、生活習慣として実践できる幸せに満足している。
昭和15年沖縄県生まれ、昭和16年太平洋戦争勃発、親は赤子を背負って疎開、昭和20年8月終戦、焼け野原と化した沖縄 (県から外される) に戻る。戦後、復興までの驚異的な先人方の復活魂は年齢を重ねるごとに心に焼き付いて離れない。戦争は二度とあってはならない。
私が剣道を学んだのは、戦後、沖縄経済の発展にも大きく尽力され、沖縄剣道の普及開始と同時に尚武館を建立された松川 久仁男先生 (国士館一期生)、のお蔭によるものである。中学1年尚武館入門、高校卒業時、師匠の一言、「国士館に行け」で東京に出る。卒業後、縁あって北海道に定住し今日がある。
北海道に住み着いて60数年。教職員、道職員、再び教職員等を勤めながら、剣道の稽古は欠かすことなく継続できた。好きこそものの上手なれの類であろう。職場においても「剣道思考流」と決め込んで部活動やいろいろな指導等々の中で楽しい活動を経験した。
現在は、連盟関係の朝稽古をはじめ同好会の稽古等々、週4回程の稽古を日課としている。中央体育館での朝稽古は、老若男女の元気な気合で道場が活気に満ちている。今の私にとって、欠くことのできない生活の楽しいひと時である。互いに大きな声を出し、竹刀を巧みに遣いながらの全力全身運動は快適そのものである。
防具や竹刀を使う動きの技術研究を、もっと楽しく解りやすく工夫し、剣道人口増に繋がる普及活動の輪が、さらに大きく広がることを念じて止まない。
「大衆受け」、必ずしも社会的評価が高いわけではないが、道徳的評価が得てして敬遠されがちな社会だからこそ、自己形成に重きを置く教育的剣道の特性を、次世代に浸透させたいものである。
少子高齢化現象の世になって、少年剣士人口減少の現実は淋しい限りであるが、高齢者剣道人口微増を利点ととらえ、剣道の魅力を幼少年に浸透させる努力を続けたい。(受付日:令和6年7月22日)
*『令和版剣道百家箴』は、2025年1月より、全剣連ホームページに掲載しております。詳しくは「はじめに」をご覧ください。