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剣道における熱中症への取り組み(第1回報告)
本年6月より全日本剣道連盟の新たな試みとして「剣道における熱中症報告 報告フォーム」によるオンライン報告システムが開始されました。皆さまにご協力をお願いしてから1か月(2020年6月17日〜7月16日)が経ちましたため、概要と考察をご報告いたします。
これから更に高温多湿の時期に向かい、熱中症が増加しやすくなります。
これまでにない状況での剣道稽古の実施であることを再度ご理解いただき、稽古時間(短縮等)と休憩時間の設定、水分補給、体育館・道場の換気と温度管理などに改めてご留意をいただきますようお願いします。
詳細結果は、全剣連「剣道における熱中症 報告フォーム(回答) : 集計結果 7月14日」をご覧ください。
報告件数 9件
重症度内訳
概 要
- 熱中症はⅡ度が多かった(56%)。
- 熱中症Ⅲ度は2件にみられた。
- 1件は救急車で運ばれたが、入院が必要な症例はなかった。
- 2件で、熱中症というよりは酸欠を疑わせる記載が見られた。
- 1件目:「面マスクが口と鼻に密着し、全く息ができない為に起こった」と記載。
- 2件目:不織布マスク着用、急に崩れ落ち、意識消失。
- 発生地域に明らかな地域差は見られなかった。
- 男女の数はほぼ同数であった。
- 生徒・児童、低段位者に多く、これは学校での部活動や道場の稽古の再開を反映していると考えられる。
- 発生時の気温は23~28℃であり、熱中症の『運動に関する指針』の気温(参考)の注意レベルでほとんどの事故が起きている。
- 発生時刻は日没後に半数がみられた。
- エアコンの使用は1件のみであった。
- 換気は1件を除き行われていた。
- エアコン・換気いずれも行われていなかった例が1件あった。
- 全件でマスクまたはフェイスシールドを着用しており、面マスク着用が多かった。ただし、全件が面マスクを着用していたかどうかは不明である。
- 1件は全剣連で警告している不織布マスクを着用していた。
- シールド着用は全件で行われており、口元タイプが多かった。
- 基礎疾患を有する者はおらず、体調不良は1件で見られた。
考 察
- 熱中症の「運動に関する指針」の気温(参考)の注意レベルでほとんどの事故が起きている。これについては以下などの理由が考えられる。
- 稽古前の暑熱順化*が不十分であった可能性
- マスク・飛沫防止策により体温が上昇しやすかった可能性
- 曇天が多かったことより湿度が影響した可能性
- 不織布マスクや顔に密着するマスクによる酸欠に注意が必要である。
- 高齢者や基礎疾患のある者については、特に酸欠と脱水、暑熱順化*を徹底する必要がある。
- 特に指導者は熱中症の知識を持ち、段階的に稽古量を増加させる計画立案を行い、また体調不良者の管理を行う必要がある。
全日本剣道連盟 医・科学委員会
イラスト(フリー)https://www.ac-illust.com/