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剣道中央講習会中止に伴う講習内容の掲載 ―第4回―
第55回剣道中央講習会は、2020年10月8日(木)・9日(金)、日本武道館研修センター(千葉県勝浦市)で開催予定でしたが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、已むなく中止となりました。
本講習会は、全剣連と各都道府県剣道連盟および全国組織剣道関係団体との意思の疎通を図るとともに
- 全剣連は「公益財団法人」に移行し、新たなスタートをすること
- 「対人稽古再開に向けた感染拡大予防ガイドライン」に関連する事項
を含め、ガイドラインを踏まえた剣道の審判法や稽古及び指導のあり方等を説明・講習する計画でしたので、これらの内容に関連する資料を4回に分けて掲載します。
*この記事は、月刊「剣窓」2021年1月号と2月号に掲載した記事を転載しています。
第4回 全剣連ガイドラインを踏まえた剣道の稽古法及び指導の在り方
指導部会 委員長 中田 琇士
一般財団法人全日本剣道連盟(以下「全剣連」)は、6月4日付「対人稽古再開に向けた感染拡大予防ガイドライン」(以下「全剣連ガイドライン」)を示し、感染拡大を予防しつつ、6月10日付で「対人稽古自粛のお願い」を解除しました。
指導部会は「全剣連ガイドライン」に沿った指導上の留意点を【全剣連ガイドラインを踏まえた剣道の稽古法及び指導の在り方】(以下「指導の在り方」)として作成しました。各都道府県剣連においては、本「指導の在り方」を参考に、各地域の特性や実態に合わせ、指導にあたるようお願いします。
本来ならば10月8・9日に開催を計画していた「令和2年度剣道中央講習会」で実習を交え留意点をお話しする予定でしたが、中央講習会が中止になりましたので、「指導の在り方」の留意点について述べさせて頂きます。
現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は終息をしておりませんので、「withコロナ」の発想で、指導者のみなさまがガイドラインに示された感染対策を遵守し、参加者が安心して安全に稽古を実施できるよう稽古環境を整備しつつ、稽古方法の工夫をお願いします。
なお本「指導の在り方」につきましては、今後の感染症の拡大状況を踏まえ、逐次見直しを行うものとします。
はじめに~稽古を実施するにあたって
- 全剣連(以下、本通達では「主催者」)は、稽古を実施するにあたって、稽古実施場所が所在する都道府県、及び稽古会場となる施設の利用方針を遵守するものとします。
- 主催者は稽古を実施するにあたって、参加者並びに保護者に対し、本通達の内容を周知徹底してください。
- 主催者は、稽古実施スケジュールを策定するにあたり、万全の感染対策を講じるために全体として余裕を持った時間を設定してください。
- 主催者は、稽古実施会場への入場を、原則、参加者のみとしてください。付き添い(保護者を含む)や見学者がいる場合は人数を制限し、滞在時間を短くするなどし、密にならないように協力を求めてください。
- 主催者は、利用施設側の制限措置(入場人数制限、冷水機、シャワールームなどの利用制限など)に従うようにしてください。
- 参加者並びに保護者は、本ガイドラインを遵守し、安全な稽古実施運営に協力するようにしてください。
稽古への参加にあたって
- 以下に該当する者は稽古への参加はできない。
- 基礎疾患のある者。
- 基礎疾患のある者とは、「糖尿病、心不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、透析を受けている方、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている方など」をいう。
- これらの者が理由あって出場(参加)する場合は、主治医の承認を得るものとする。
- 発熱のある者(個人差があるが、一般的には37.5度以上ある者をいう)。
- 咳・咽頭痛など風邪の様な症状がある者、その他体調がよくない者。
- 同居家族や身近な知人に感染が疑われる方がいる場合。
- 過去14日以内に政府から入国制限、入国後の観察期間を必要とされている国、地域等への渡航又は当該在住者との濃厚接触がある場合。
- 基礎疾患のある者。
- 付き添い(保護者を含む)や見学者に対しても、前記1.を遵守するよう事前に協力を求めること。
- 指導者は体温計(できれば非接触型体温計)を常備し、指導者、稽古参加者、付き添い(保護者を含む)および見学者に対し、稽古場所入口(受付)で検温し、健康状態を確認してから稽古を開始すること。
- 指導者および参加者は、稽古場所入口で体温測定により37.5度以上ある者は入場できない。
- 付き添いや見学者も、入場に当たって体温測定を受けることとする。
- 指導者は次の6つの事項につき参加者記録表を保管し感染の拡大防止に努めること。①氏名、②住所、③連絡先電話番号、④当日の体温、⑤当日の体調、⑥同居する家族の健康状態
- 指導者および稽古参加者は、面マスク及び家庭用マスク(付き添いおよび見学者は家庭用マスク)を持参する。指導者および稽古参加者は、面装着時には面マスクおよびシールドを着用する。稽古以外(稽古前、休憩時、稽古後)は家庭用マスクを着用する。
- 指導者は、付き添いおよび見学者に稽古会場内で常時、家庭用マスクを着用するよう協力を求める。
稽古前の留意事項
- 指導者は、参加者が自宅と稽古場所との往復の際にはマスクを着用し、感染予防に努めるよう協力を要請すること。
- 参加者は着替えの際、更衣室を利用する場合は、できるだけマスクを着用し、会話を控え、すみやかに更衣する。
- 指導者は、稽古場所の窓や入口の扉を開放の上、扇風機等を設置し稽古場所の換気に努める。稽古場所に窓が無い場合、換気に十分な台数の扇風機等を設置し、空気が滞留しない工夫をすること。
- 指導者は、稽古場所入口にアルコール除菌液を設置し、参加者、付き添いおよび見学者に手指の消毒を行うよう協力を求めること。
稽古中の留意事項
- マスクを着用し、指導者並びに稽古参加者は、フィジカル・ディスタンス(人と人の距離、最低でも1m、できれば2m)を保つようすること。
- 面を装着時は、面マスクおよびシールドを着用すること、稽古時以外(休憩時)でも、常にマスクを着用すること。面マスクおよびシールドについては「対人稽古再開に向けた感染拡大予防ガイドライン」を参照のこと。
- 稽古中の面マスク着用については、鼻を出して稽古を行うことも可である。マスクについては令和2年6月24日付「感染拡大予防ガイドラインのマスクについて(新たな調査結果を受けて)」を参照のこと。
- 付添人および見学者はマスクを着用すること。
- 指導者は、参加者、付添人および見学者に手洗いや、アルコールによる除菌消毒を促す。そのため除菌用アルコールの設置を必須とする。
- 開始の礼、終礼を整列して実施する場合は、マスクを着用しフィジカル・ディスタンスを保つようにすること。
- 指導者は、参加者の長期間の自粛期間による心肺機能や筋力の低下を考慮し、年齢や体調に応じた稽古計画を立てること。稽古計画は、「実施頻度(稽古回数)」、「稽古の強度(生理的、心理的に負担をかける打ち込み稽古やかかり稽古等の稽古の度合い)」、「稽古時間」について、参加者の体力に合わせ、無理の無いように計画をすること。
- 稽古時間(長さ)は、稽古前・後の感染対策に要する時間、稽古中の休憩時間を十分確保した上で、面をつけての稽古は稽古時間の2分の1程度(1時間であれば30分前後)を目安とする。なお、指導者は参加者の錬度を見極め、稽古時間を決定すること。
- 指導者は、稽古中、参加者の健康状態を随時観察し、事故が起こらないよう細心の注意を払い、稽古における安全の管理を遂行すること。
- 指導者は、稽古中に体調が悪くなった参加者に対し、直ちに稽古を中止させ、体調の回復を確認したのち帰宅させ、念のため病院で診断を受けるように薦める。万一、心肺停止などの重篤な状態に陥ったときには、AEDなどによる救命措置を迅速に施すとともに、消防署に救急要請(119番)し、病院への救急搬送を依頼すること。
- 稽古終了後のお礼や挨拶の際は、人と人との距離を1m~2m確保すること。
稽古内容の工夫について
- 対面稽古を自粛あるいは短縮している期間、一人稽古を実施することを薦める。とくに『剣道指導要領』および『剣道講習会資料』(P10―11)に「基本動作」があり、「姿勢」「呼吸(丹田呼吸法)」「構えと目付け」「足さばき」「素振り」などについて工夫・研究する良い機会でもある。
- 全剣連ガイドラインに従い、鍔ぜり合いを避ける。やむを得ず鍔ぜり合いとなった場合は、すぐに分かれるか、引き技を出し、鍔ぜり合い時に発声(掛け声)を行わない(引き技時の発声は認める)。
- 面をつけての稽古時間を短縮している期間、「日本剣道形」や、「木刀による剣道基本技稽古法」を学ぶ絶好の機会であり、「刀―木刀―竹刀」というつながりから剣道を捉えるための有効な稽古法である。
- 自粛期間において「木刀による剣道基本技稽古法」を実施する場合、元立ち、掛り手とも大きな気合でなくてもよい。また、人数が多い場合、相互の会話を少なくするため集団指導で行い、指導者が号令をかけるようにする。なお、木刀は自己所有のものを使用する。共用をする場合は使用後に木刀および手指の消毒をする。
- 指導者は、指導法を工夫・研究するためにも剣道に関する書籍にふれ、剣道の歴史や理論を学ぶことを薦める。以下の全日本剣道連盟ホームページには、書籍や視聴覚教材の情報が掲載されてる。(「図書」、「全剣連書庫」、「視聴覚教材(映像)公開」)
- 剣先の攻防、技の打ち切り、体捌き、応じ技等の身体接触の少ない稽古法に取り組み、理合・技前を体得する。
- 体育館・剣道場の大きさにもよるが、少人数・短時間集中型の稽古法(準備運動含め基本的には1~2時間以内が理想)を工夫する。
- 稽古時、元立ち間の間隔は2m以上(前後左右2m以上程度の間隔)とし、元立ちの立つ位置に2m毎に目印を貼る。
稽古後の留意事項について
- 稽古後は、床の清掃、除菌を行うこと。
- 参加者は手指等(足裏を含む)の消毒を行うこと。
- 稽古終了後は更衣しすみやかに帰宅するようにする。いわゆる反省会などの会食は控え、感染防止に努めること。
稽古参加者が感染した場合の対応
- 参加者が稽古日以降、2週間以内に新型コロナウイルス感染症を発症した場合、指導者に対して速やかに濃厚接触者の有無等について報告する。指導者は、稽古参加者名簿に基づき、濃厚接触者に知らせること。濃厚接触者は医師の診療を受けること。
- 指導者は前記1について、付き添いおよび見学者に対しても、同様の対応をすること。
その他
- 指導者は、多くの人が触れる用具、箇所(ドアノブなど)を定期的に消毒する。また必要に応じて、施設内トイレの出入口にはアルコール除菌液とペーパータオルを設置すること。
- 指導者は、「付き添いおよび見学者の留意事項、協力事項」を作成し、あらかじめ配布することで感染対策を周知徹底すること。
おわりに
新型コロナウイルス感染症が未だ終息しない現在、「感染しない・感染させない」ことが大切です。指導者は誤情報やデマに惑わされず、正しい医学情報に基づいた万全の対策を講じて下さい。参加者には「正しく恐れる」意識を持たせ、参加者一人一人が行うべき感染症対策(体温37.5度以下、手指の消毒、フィジカルディスタンスの確保、マスクの着用)を必須の条件として徹底し、稽古を実施していただけますようお願いします。