全剣連の
お知らせ
更新
2024年度 剣道における熱中症への取り組み(最終報告)
2024年4月末より開始された「剣道における熱中症報告 報告フォーム」によるオンライン報告システムにつき、10月23日に環境省「熱中症警戒アラート」の終了に伴い、本連盟での調査も終了しましたので、本年度の調査における概要と考察をご報告いたします。
I.報告件数と内訳
【件数】報告件数8件、事例数11件(以下は全て事例数による)
【重症度内訳】(注:重症度の申告は会員の判断による)
【救急搬送】
II.発生状況
【月間報告数】
【発生地域】
【発生行事】
【発生時の温度】
【発生時の時刻】
【発生時のエアコンの使用】
III.発症者の内訳
【発症者の年代】
【発症者の段・級】
【考察】
- 熱中症の報告件数は昨年より増加しており、特に7月以降の報告が多かった。明らかな地域差はみられなかった。
- 発症時の平均気温は31℃、発症時刻は12時~16時昼間が多く、暑熱下の稽古が原因と考えられた。
- 20℃での発症報告については、脱水による筋けいれんの可能性も考えられ、気温への配慮だけでなく積極的な水分摂取も促す必要があると考えられた。
- 発症者は高校生・大学生など激しい稽古が想定される年代に多い一方、2級以下の初心者の発症も多く、経験年数の浅い者が激しい稽古を行うことが熱中症リスクになると考えられた。
- 高温かつエアコンがない状況にて「短時間であれば大丈夫」と考えて稽古をはじめ、5分で意識消失した例もあった。高温時には剣道具を付けない稽古への切り替えなど、柔軟な対応が求められる。
【全日本剣道連盟の推奨】
- 稽古場に気温だけでなく湿度の目安も把握できるWBGT計の設置が望ましい。
- 稽古場にはエアコンあるいは業務用扇風機の設置が望ましい。
- エアコンの有無にかかわらず、稽古場が以下の条件にある場合は剣道具を着用しない運動を検討することが望ましい。
- エアコンの有無にかかわらず、稽古場が以下の条件にある場合は運動そのものの中止を検討することが望ましい。
- 気温の寒暖にかかわらず、こまめな水分摂取を行うことが望ましい。
▶︎WBGT温度28℃以上の時
▶︎WBGTがない場合でかつ、以下の時
◇気温26℃以上で湿度が70%以上の時
◇気温が29℃以上の時
▶︎WBGT温度31℃以上の時
▶︎WBGT計がない場合でかつ、以下の時
◇熱中症警報が出ていて、エアコンがない場合
◇気温が29℃以上かつ湿度70%以上の時
◇気温が31℃以上の時
以上に加え、剣道実践者は、熱中症に対する予防対策の意識を高め、自らの判断で運動の実践についての判断をすることも必要です。特に指導者は上記の医・科学的知識を踏まえた上で、より一層の熱中症管理体制強化をお願いします。
今年度、日本救急医学会による熱中症ガイドラインが更新されました。また今後、全日本剣道連盟医・科学委員会では、「剣道医学救急ハンドブック」および公式ホームページからの提供資料「熱中症スライド」の更新をし、より最新の情報を提供する予定としています。新しい基準に基づく情報収集にも努めてください。
【参考】
一般社団法人 日本救急医学会:熱中症ガイドライン2024
公益財団法人 全日本剣道連盟:医・科学について