アンチ・
ドーピング
スポーツのインテグリティー(コラム24)
開催まであと2年をきった東京オリンピックでは、史上最多の33競技339種目が行われます。
今回の大会では、地震や風水害などの自然災害や異常気象への備えのほか、テロやサイバー攻撃などの脅威への対処が必要となります。また、選手役員や観客だけでなく一般の交通対策も大きな課題です。
しかし、国際競技大会として最も懸念されるのは、スポーツの価値が損なわれることです。大会での選手の活躍は、人々に夢と感動を与え、世界の平和繁栄にも貢献します。このためには、スポーツのインテグリティーが守られていなければなりません。
インテグリティーとは、高潔さ・品位・完全な状態を意味します。スポーツのインテグリティーへの脅威には、スポーツ団体のガバナンス欠如、差別、各種ハラスメントなどがあります。特に大会における暴力行為、試合の不正操作(八百長)、そしてドーピングは、その成功に向けた選手、関係者の努力や観客の期待を無にするものです。
日本アンチ・ドーピング機構(JADA)では、クリーンな東京オリンピックを実現するため、世界のトップアスリートがスポーツへの自らの想いをつづるトーチリレープロジェクトを行っています。その中で、アテネオリンピックで記録一位選手のドーピングで繰り上げ金メダリストとなった室伏広治氏は、次のように述べています。
「アスリートである限り、つねに完璧を目ざして努力する。」「ルールがあるから競技の本質を追求する楽しさに触れることができ、制限・ルールの中から美しさが生まれる。」
剣道は、オリンピック競技ではありません。しかし、人間形成の道として、より高いインテグリティーが求められています。たとえ道を極めることができなくても、室伏氏の言う完璧を目ざした努力は続けたいものです。
日本オリンピック委員会 アンチ・ドーピング委員会 副委員長
全日本剣道連盟 監事 小風 明
* この記事は、月刊「剣窓」2018年11月号の記事を再掲載しています。