アンチ・
ドーピング
糖質コルチコイド使用の変更点(コラム36)
①競技会時の糖質コルチコイド注射は、全ての部位で禁止
糖質コルチコイド(別名、ステロイド)は、整形外科で関節や腱などの炎症の治療のため、局所注射として使用されます。これまで糖質コルチコイドの注射は、経静脈注射と筋肉内注射のみ禁止されていました。しかし2022年1月より、糖質コルチコイドの注射は全ての部位(静脈内、筋肉内、関節周囲、関節内、腱周囲、腱内、硬膜外、髄腔内、滑液嚢内、病巣内(ケロイド等)、皮内および皮下)で禁止となりました。ただし、どうしても使用が必要な場合はTUE(治療使用特例)を提出する必要があります。
競技会より前に注射を行った場合でも、競技会時の検査で体内に残存する薬物が検出される可能性があります。使用する薬物が体内から排出される期間(ウォッシュアウト期間)を確認する必要があります。禁止表には、局所注射のウォッシュアウト期間は種類によって3日または10日と記載されています。ウォッシュアウト期間は個人差があり、競技会時に完全に薬物が排出されていない可能性があります。万が一検査で薬物が検出された場合に遡及的TUEを行えるよう、予め医療情報を準備しておく必要があります。事前に医師とよく相談し、必ず治療の記録を残しましょう。
②競技会時の糖質コルチコイド口腔内局所使用も禁止
糖質コルチコイド口腔内局所使用とは、口内炎等の治療で使われる軟膏や貼付剤のことです。病院からの処方だけでなく、ドラッグストアで購入することが可能な薬剤です。世界アンチ・ドーピング機構が2021年4月に出した通達により、競技会時の口腔粘膜への投与(口腔(頬)内、歯肉内、舌下等)が禁止され、2022年の禁止表に明示されました。経口投与のウォッシュアウト期間は種類によって3日または30日です。①の注射使用と同様の注意が必要です。自身でドラッグストアから購入する場合は、禁止物質が含まれない物を薬剤師に相談して購入するのが安全でしょう。
アンチ・ドーピング委員会
委員 濱井彩乃
* この記事は、月刊「剣窓」2022年2月号の記事を再掲載しています。