図 書
現代剣道百家箴
私の体験
岩瀬 鉾太郎(剣道範士八段)
私は旧制栃木中学の剣道教師をしていた14年間24キロの道を自転車で約2時間かかって通い、寒稽古の時は早暁3時に起きて通ったものである。その間雨の日あり、風の日あり、又大雪の日もあったが、初心を貫くため一日も休まず頑張り通した結果、剣道を志す者にとって如何に精神力と根性が大切であるかを体得したのである。
又その間京都大会には毎年出演(当時は演武と云った)して諸大家先生方の試合、姿勢態度等を見学して、良いと感じた点は研究工夫して身に付けるよう心掛けたものである。
戦前は長屋を道場として造士舘と名づけて青少年の育成に当っていたが、戦後養心館道場を新築して、日本精神養成を主眼として指導している。
「剣は心なり、心正しければ剣亦正し、剣を学ぶ者は先づ心を学べ」これは私の道場の道場訓である。剣道を通して心の修養に重点を置いて指導している。正しい人間と正しい剣これが両立した時に真の剣道が生まれると確信している。
「人十度すれば吾百度し、人百度すれば吾千度す」これを、剣道を修業する者、常に心掛けて、他の人の何倍も努力精進すべきであり、更に「思い切る。飛び込む。延びる。」と云う事も剣道上達に最も大切であると思う。
*現代剣道百家箴は、1972(昭和47)年、全剣連20周年記念事業の一つとして企画された刊行物です。詳しくは「現代剣道百家箴の再掲載にあたり」をご覧ください。