図 書
現代剣道百家箴
私の剣道修行
北見 庸蔵(剣道範士八段)
私が札幌師範学校に職を奉じていた昭和14年5月小学校剣道指導要目が制定され文部省主催の指導者講習会があり、さらにこれを地方に伝達する講習が持たれた。私はそれらにたずさわることによって剣道の基本を正しく身につけることが出来たように思う。
私は剣道の修行を通じて「教えることは学ぶことである」ということについて深く考えさせられたが、このことが今日まで私の修行の基本的な態度になってきていると思う。
また広く勉強するということが必要であり多くの人々に稽古をお願いするとともにその数を多くすることも大切であると思われる。
最近、剣道大会が数多く催されていることは結構なことであるが試合がともすればあてることを本位にはしり、正しい姿勢、態度、技がおろそかになってきていることは、剣道修行するものとしては心しなければならないことである。気、剣、体が均衡調和統一され、はじめて正しい剣道の修行となるように思う。
さらに、剣道修行のうえで平常心をつくり上げるということは極めて大事なことであると思っている。日頃稽古を積むことによってものごとを正しく観る力が養われ、にごりない広い心がつちかわれることになると思う。稽古ができてこないと平常心もほんとうのものにはならないように思う。剣の道に志すものは、うまず、たゆまず休むことなく一心に生涯を通じて修行を続けることによって奥義に達することができるものと思う。
*現代剣道百家箴は、1972(昭和47)年、全剣連20周年記念事業の一つとして企画された刊行物です。詳しくは「現代剣道百家箴の再掲載にあたり」をご覧ください。