図 書
現代剣道百家箴
私の剣道修行
土田 博吉(剣道範士八段)
1、尊い体験
武道専門学校で行われた、厳冬三週間連続の「打ち込み切り返し」のみの寒稽古は大いに気力体力の練成となり、確固たる基礎を築き得た。
又一週に二日の日本剣道形の授業は剣の理法の修得に、姿勢の矯正や体の運用に預って効果があったものと思う。
或る本で次のようなこと読んだ記憶がある。
「修行者は先ず基本と形とを能く習う事に全智全能を傾け、基礎を確かにして、次に活用の理を覚え、第三に自己の工夫を加えねばならぬ。然るに基本には勝負がなく、形の勝負は約束によるものだから面白くないので、一日も早く己れの才智に任せて打ち合って見たい、基礎や形は面倒臭いと言う人が多い、此等の人が剣の法を曲げるのである。此の種の人は速成だから初めのうちは勝負に勝つが、本当の太刀もなければ本当の活用もないから、後には行き詰って了う。」
如何に剣道には基礎が大切であるかがうかがわれるのである。
2、信条
誠心誠意。
3、深く心を打つことば
全日本剣道連盟会長木村篤太郎先生がいつも説かれる次の言葉である。
「剣道は日本民族が子孫に伝える大いなる遺産である。」
よく上の真意を銘肝し、祖先より受け継いだ此の立派な剣道を、次の世代の人々に正しく傅える責任と誇りをもって、我々は邁進すべきである。
*現代剣道百家箴は、1972(昭和47)年、全剣連20周年記念事業の一つとして企画された刊行物です。詳しくは「現代剣道百家箴の再掲載にあたり」をご覧ください。