図 書
剣道みちしるべ
第2回 次世代をどう育てるか
総務・広報編集小委員会(当時)
真砂 威
前回は、全剣連発足55周年にあたり、剣道の「課題は何か」ということと、21世紀における剣道の「将来展望」を述べました。
今回は、次世代を育てるための具体的な事項について述べてみたいと思います。
◎青少年の健全育成
学校の週5日制に伴い、文部科学省は、学習塾・予備校・スポーツ団体などに、子どもたちが活動できる受け皿づくりへの協力を呼びかけていますが、剣道界はこぞってこれに一役買うことが肝要です。学校の休日増加は、学校の剣道部やクラブ活動の在り方にも影響しますし、今後の剣道発展の基盤となる青少年の剣道への取り組みの地殻変動的要素になり得ます。
文部科学省の「自ら学び自ら考える力や豊かな人間性等の『生きる力』を育むため」の方針に、剣道界としては、適切に対応することが望まれます。要は、剣道に興味があり、剣道を学びたい、特に土・日にも剣道がしたいという児童・生徒に対し、剣道を学ぶ機会を積極的に与えることが必要と考えられます。
このためには、県から市町村に至る剣連・高体連・中体連・教育委員会・各市町村学校関係者・道場・スポーツクラブなどがこれまで以上に協力するとともに、全国各地の剣道社会体育指導員も、積極的に役割を果たして行くことなどが期待されます。剣道の果たすべき人づくりという社会的役割を、青少年の健全育成を通じて実践するため、剣道人が誇りを持って活動すべき時が到来したものと受け止めています。
◎大会・審判
各種大会を充実させ、勝利者を称えることは、修錬の意欲を喚起あるいは向上させますが、剣道においては、「剣の理法を全うしつつ」という原則をふむことが大前提となります。そこで最も大切なことは、審判の役割です。
目下、全剣連は、審判の良否は剣道の質を左右するものであるとの考え方に立ち、審判員の育成を最重要課題として取り組んでいます。まず、基幹となる上級講師要員の養成を行い、審判員としての思想の統一と、高度な審判技術を習得させようとしています。上級講師要員の講習は、現在各方面で活躍中の厳選された八段を対象に、定期的に実施しており、平成19年4月現在で、88名の講師資格者を認定しました。それら認定を受けた講師が、各種大会のレベルに応じた審判員の育成にあたります。頂上を高めることにより、すそ野を広げるべく、全国津々浦々に波及することを期待しています。
◎審 査
平成12年度に「称号・段位審査規則」を大改正しました。改正の主な内容は、
- 段位は「剣道の技術的力量(精神的要素を含む)」、称号は「これに加える指導力や、識見等を備えた剣道人としての完成度」を示すものとして称号と段位の性格を明確にした。
- 審査員の選考制度を確立し、全般的に審査員の質の向上を図るとともに、審査方法の改善と合理化を進めた。
- 教育・講習と審査の連動を図り、真の実力と質の向上を望み得る制度と、その適正な運用を進めることとした。
- 審査を、実力向上のための手段として効果あらしめるものとするため、審査に関する情報開示、受審者への伝達、指導などを進める。
- 高齢者に対し、修業年限の短縮等、受審資格の優遇措置を講じ、受審者の立場への配慮を深める。
以上の通りです。
真に必要なことは適正・妥当な審査を行うことです。このための施策は、審査の実績を分析・評価しながら検討が進められています。
今後も審査の運用にあたっては、長期的展望に立ち、剣道の奨励・発展を図り、社会の理解を深め得る、望ましい安定した制度とすることが大切です。
◎女子の充実
女性の剣道関心度は年々高まっております。女性の剣道愛好家が増えるということは、次世代の子どもに引き継がれる大きな要因にもなります。これからは女性が剣道活性化の鍵を握っているといっても過言ではありません。そのため全剣連では、下記の諸策を講じています。
①専門委員会に女性の積極的登用
専門委員会に必要に応じて、女性委員を積極的に委嘱することとしています。17・18年度「強化」、「医・科学」、「総務・広報編集(小)」、「アンチドーピング」の各委員会で活動いただきました。
②「全日本都道府県対抗剣道優勝大会」での女子の活躍
従来、男子5人制で行われていた当大会は、平成10年から女子2名(先鋒:18歳以上30歳未満、五将:30歳以上)を加え、7人制の団体戦としましたが、それにより強豪県の勢力図が変動を起こし、女子選手の強いチームが断然優位になるという大会に変化しました。
③女子審判員養成の充実
全剣連が主催する大会に女子審判を積極的に登用すべく、「女子審判法研修会」や「女子審判講習会」などを実施し、女子審判員の養成を図っています。
④「全日本東西対抗剣道大会」に女子の部を設ける
平成9年から、当大会に女子の部を設け、5人制により実施しています。
⑤「全国家庭婦人大会」の積極的推進
全剣連は、お母さん世代の剣道を強く推し進めることを、少子化対策の極めつけと考え、その振興システムの構築を模索しています。大会の実施時期も、日本武道館に働きかけ、平成17年度から海の日(7月の第3月曜日)の休日に実施することにより、お母さん選手の参加の便と応援・支援に配意しています。
⑥「世界剣道選手権大会」に女子の参加
平成12年にアメリカ(サンタクララ)で開催された「第11回世界剣道選手権大会」から、女子が団体・個人とも公式戦に加わることとなりました。
(つづく)
*この『剣道みちしるべ』は、2007年8月〜2010年1月まで30回に渡り月刊「剣窓」に連載したものを再掲載しています。