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図書
『令和版剣道百家箴』
「謙虚に生きる」
剣道範士 古市 満州男(熊本県)
熊本県阿蘇郡(市)の警察署剣道場で、恩師・「故・那小屋 温」先生に手解きを受け、剣道を始めたのが、満13歳の時でした。
日頃は優しい先生でしたが、稽古になると一変して厳しくなり、特に基本稽古を大切にされ、熱心に教え込まれました。私が剣道を続けてこれたのも、そのお陰と感謝しています。
昭和36年、大阪府警察の巡査を拝命し3年後、剣道特別練習生に加えて頂きました。
全国から集まった強剛選手、30名の中で実力の違いを感じながらも必死で頑張りました。「故・越川 秀之介」先生を筆頭に、「故・長谷川 寿」先生・「故・斉藤 正利」先生・「故・指宿 鉄盛」先生、等等の錚錚たる師範の下で、警察剣道の激しさを経験させて頂いた事は、私にとって一生の財産であります。
警察生活42年の殆んどを、所轄警察署の術科指導者として、第一線で勤務する警察官の、「剣道・逮捕術」指導に携わりました。
その間、平成3年の剣道八段審査会において、図らずも満48歳で合格を頂きました。
合格した嬉しさと同時に、剣道八段位の責任の重さを感じ、苦労の日々が続きました。
今迄以上に稽古を重ねることが、苦労を打開する近道と考え、努力しましたが、無理でした。
暗中模索している、そんな時に、「故・賀来 俊彦」先生から指導を頂く事が出来たのです。「流転輪廻」、同じ事の繰返しでは目指すところには届かないと知りました。
剣道の修行には、並行して、「心」の修行が必要不可欠であり、今迄の私の考え方が間違っていたと反省しました。「相手に勝ちたい、強くなりたい」の一心では、求める道には届かないのです。自分を変えて行く努力をしました。「謙虚に生きる」、苦しみから逃げず、苦しみの真ん中を突き進む自信が出来ました。
「之を知る者は、之を好む者に如ず、之を好む者は、之を楽しむ者に如ず(孔子)」
満81歳を過ぎ、満身創痍の身体ですが、楽しく道場に立てる事は何よりの喜びです。今日まで支えて頂いた多くの人に感謝しながら、終生、精進して参ります。(受付日:令和6年6月5日)
*『令和版剣道百家箴』は、2025年1月より、全剣連ホームページに掲載しております。詳しくは「はじめに」をご覧ください。