明けましておめでとうございます。
昨年の日本社会は、新政権のもと株価等色々な経済指標が上昇するなど、アベノミクスの成果が着実に現れ、我々の生活実感ともに本格的な景気回復 に向けて動き出した1年でした。やっと長いトンネルの向こうに光が見えてきた感じがします。今年はさらに上昇気流に乗って経済再生が進むことを願っています。
また昨年の秋には、2020年に開催されるオリンピック・パラリンピックが東京に決定されました。東京都、JOC(オリンピック委員会)、日本スポーツ界はじめ政界、財界を含めて日本中の人々が一体となって招致活動を行った結果でした。本当に良かったと思います。
開催までの今年から数えて6年間は、日本のスポーツ界にとって大変大事な時期になると思います。若いアスリート達はオリンピックに向けて練習に励むでしょうし、スポーツに関する国民の関心は高まり、アスリート育成だけでなく学校教育も充実していくことでしょう。同時にどのように開催するのか、準備段階で各分野において知恵が絞られ実行されていくと思います。これがまた日本経済に大きな影響を及ぼすことになります。1964年の東京オリンピックを思い出すと、日本がどんどん変わっていく沸き立つような高揚感や成長している実感がありましたが、それを今の若い人たちも是非味わってもらいたいし、前面に出て東京大会を迎えて欲しいと思っています。それは、競技だけではなく準備段階から積極的に参加し、世界中の人々に今の日本を見てもらい知ってもらう活動を、是非若い人たちにやってもらいたいということです。オリンピック競技に剣道はありませんが、日本固有の文化として、この機会に世界にPRできるいいチャンスだと思っています。
3年毎に行われます世界剣道選手権大会が、来年は東京で開催されます。本大会を無事成功させることは大事ですし、連盟の基本方針にあるように剣道の質向上と国内外各層への普及活動を一層強化していく必要があると感じております。私は昨年全日本剣道連盟の会長に就任してから、久しぶりに幾つかの試合を観戦いたしました。日光剣道大会、国体、全日本東西対抗剣道大会、全日本剣道選手権大会などですが、剣道界では若い人たちが育っているなというのを実感いたしました。激しい稽古で技を練り、心を練って出てきた人たちや、多くの師範、先生、先輩方の日頃のご努力に頭が下がる思いでした。
言うまでもなく、こういう先生や先輩方の中には大変高齢になられても尚お元気に道場に立っておられる方が多くいらっしゃいます。そういう方々から「剣道をやっていて本当に良かったよ」と聞くと、剣道の奥深さをしみじみと感じます。
もともと真剣勝負から生まれた剣道は、勝敗を争うだけのスポーツとは違います。「剣道の理念」にもあるように、剣の理法の修錬による人間形成が最終の狙いであり、勝っても負けても相手を敬う気持ち「礼」を厳しく仕込まれます。我々は一般的には学校を卒業して社会に出ますが、私はこの社会も新しい道場だと思うのです。実際の道場で先生や先輩に鍛えていただいた精神―不屈・礼・不動心・協調等々―はそのまま社会の道場でも持ち続け、チャレンジしていくことが大事です。日本の伝統と文化を守り、若い人たちを育て、その精神を引き継いでもらうためにも剣道の果たす役割は大変大きいと、新春に当たり改めて感じております。
剣道で鍛えられ逞しく育った若者が、若手の模範として社会を引っ張る原動力になって欲しいと思います。そして本年も1人でも多くの若者が剣道を目指し、育っていくことを念じております。
全日本剣道連盟会長
国際剣道連盟会長
張 富士夫
Fujio CHO