昨年の日本経済は4月の消費増税の影響を受け、駆け込みの反動からやや減速したものの、雇用・所得環境の好転に加えアベノミクス効果による円安・株高の進展と、経済再生に向けて着実に前進していると感じております。今年は10月に予定されていた消費税の追加増税の先送りも決まったことや、昨年末の総選挙でアベノミクスへの国民の信認が確認されたことからマインドも改善し、経済が本格的に回復軌道に乗ることを大いに期待したいと思います。
早いもので2020年の東京オリンピックが決まってもう1年半近く経ち、開催まであと5年となりました。今年は日本のスポーツ界はもとより、政界・財界を含めて日本中の人々が準備に忙しい時を過ごすことと思います。若いアスリートがオリンピック参加を目指して懸命の練習に励むでしょうし、各分野で世界中のお客様を迎えるにあたりどのように〝おもてなし〟をするか知恵を絞ることでしょう。そしてそのことがまた、日本経済・日本社会に良い影響を及ぼすことになります。
剣道が直接オリンピックに参加することはありませんが、何らかの形で世界中の人々にご紹介できればと考えております。礼に始まり礼に終わる剣道は、必ずや外国の方々にも強い印象を与えるでしょう。それは永年かかって作り上げられた日本の精神文化の上に根付いています。礼儀・作法を正しく実践し、相手を敬い、そのうえで正々堂々と技を尽くす、さらに言えば日頃の厳しい稽古の中で心の修行も積み重ね、少々のことでは動かされない強い気持ちを持つ、これらのことが試合や形の演武に表れるので、見る人に強い印象を与えるのだと思います。しかしこれらの剣道の特徴は、日本人だけが感ずるものではありません。人間として心身の成長を目指す人には誰にでも理解できる、共通のことだと思います。
世界の剣道愛好家の数は今や200万人を超え、多くの国々で剣道は大変盛んです。今年の剣道界最大の行事は、5月に日本武道館で開催されます第16回世界剣道選手権大会です。参加国は57カ国・地域にわたり、これまでで最も大きな大会となります。また剣道の本家、日本での開催は1997年(京都)以来18年振り4回目です。世界中の剣士たちがこの大会に参加されますので、全剣連では参加者たちの期待通りとなる素晴らしい大会にしたいと思い、準備を進めております。またそのために昨年から国内の剣道愛好家の皆様に様々なご協力をお願いし、本大会の成功に向けて支えていただいて参りました。新年にあたりこれまでのご協力に対して心から御礼申し上げます。今後とも最大限の努力を重ね、皆様にご満足いただける大会に致したいと思っておりますので、引続きのご支援を心よりお願い申し上げます。
全日本剣道連盟会長
国際剣道連盟会長
張 富士夫
Fujio CHO