昨年を振り返りますと、米国大統領選、英国のEU離脱、諸外国において大きな動きがございました。これらが今年日本へどのような影響を及ぼすのか、大変気になるところです。
このような国際情勢の中で我が国は、比較的安定した政権主導の下、経済・社会も順調に推移したと思います。特に外国人観光客が過去最高の2千万人を超え、経済にも好影響を与えています。今や都会でも観光地でも外国人観光客を見かけない日はありませんが、これは平和で安定した日本社会を好む人々が世界中で増えているという事ではないでしょうか。我々の大切にしている日本の文化が多くの外国人にも認められてきていると感じます。剣道も日本の文化を代表する武道であり、それに従事している私達も誇りとともにこれを大切にし、次の世代へ引き継いでいかなければならないと改めて思います。
こうした状況の中で、剣道連盟として今年も色々な計画を準備しております。まず、昨年初めて実施しました女子剣道指導法講習会を、今年も2月に開催する予定です。剣道全体が国際的に普及・進展している中で、女性の剣道愛好家が増えていることはとても嬉しく思います。昨年も各大会での女性剣士の活躍は目覚ましいものがあり、今まで以上に女子剣道が盛んになると期待しています。日本だけでなく世界的にレベルアップしていますので、それにも対応すべく女子選抜特別訓練講習会も行います。また男女ともに選抜特別講習会の成果が出ており、講習生の日本剣道選手権大会への参加率も高まっております。2018年には世界剣道選手権大会が韓国仁川にて開催されることになり、その準備も怠りなく進め、日本として全力で戦いたいと思っております。そして今年は6月に役員改選があり、将来に向けより充実した体制づくりを考えております。
剣道は我が国の歴史の中で培われ、今でも日本人の精神文化の上に成り立っています。「礼」を以て相手に接し、相手を敬い、試合や稽古も全力で技を尽くす。そして師匠や先輩から多くの教えを受ける。これは技だけではありません。むしろ「心」のあり方、心の修行が大切だと思います。「不動心」「剣道の四戒」「心技体」、若い頃教わったこれらの言葉は今でも私の中に生き続けています。道場だけでなく、社会や仕事の中でも生き続ける言葉のように思います。これは剣道のみならず武道全般に共通するものと思いますが、このことが今世界各地で剣道愛好家をはじめ武道家が増えている理由ではないでしょうか。日本の精神文化と申しましたが、これからは万国共通の文化、価値観になっていくかもしれません。
最後に私が大切に思っていることを申し上げたいと思います。
剣道の稽古は、打ちかかると同時に先生の胸に飛び込み、弾き飛ばされ、また胸へめがけて飛び込む、というように他のスポーツとは違う密度の濃い師弟の関係があります。また稽古が終わった後も防具を片付け、風呂で先生の背中を流し、色々教えてもらう時間がありました。このような先生との時間が大変貴重であり、大切な事を本当に沢山教えてもらいました。先生の役割はとても重要で影響力があります。次の日本を背負って立つ若い人々に、1人でも多く稽古を通じて立派な人間になっていただきたい。そのために、それを教える先生方、先輩方へ、更なるご指導を心からお願いする次第です。
全日本剣道連盟会長
国際剣道連盟会長
張 富士夫
Fujio CHO