残念ながら不合格の皆様は、今回の審査を踏まえて、今一度師事される先生方に指導を仰ぎ、次の審査に向けて修錬されますことを期待いたします。私自身が審査で不合格の時、師事している先生や講習会で、「間合」に気をつけるように指導を受けました。先生方の言われる「間合」は「いざ蹲踞から立ち上がる動作に気の攻めが伴い、いかに相手を動かすか。得意な面打ちを出すか」そんなことを中心に考えていた自分でしたが、いつの間にか相手を打ってやろうとして、近間(剣先が中結より入り過ぎた状態)になり、結果的に捨て身の技を出せずに不合格になったことを教えてくれていました。私自身が稽古で努めていることは、自分から攻める。相手を引き出す。このことに心がけています。攻めが効いていれば、打たれずに打つのではなく、打たれることを恐れずに自分の技を出しきることになります。結果、決まれば捨て身の素晴らしい有効打突になります。こちらで攻めているつもりでも、実は相手に攻めが効いていない場合は、見事に打たれてしまいます。しかし、打たれっぷりの良い人は、大成すると言われます。皆さんも日頃の稽古で捨て身を修錬してみてください。
最後に、改めて「立会いの所作」「正しい構えと姿勢」「足さばき」など、基礎基本に立ち返り、生涯剣道を実践されますこと、さらなる高みを目指されて、精進されますことを希望いたしまして、寸評とさせていただきます。
名古屋で行われた審査会の日本剣道形担当者として感じたことを述べます。
六段6名、七段2名の不合格者が出ました。
剣道形には決められた順序や約束事があり、それをただ覚えるだけでなく、実践に必要な所作・姿勢・気迫・理合・技術等の要素を習得することが指導者として求められます。今回、錬度不足の人が目立ったことを残念に思います。
日頃の形の稽古の中で、自分自身の欠点には、なかなか気が付かないものです。是非、指導者から教えを受けて下さい。そして形に対する認識を深め、『剣道形解説書』『講習会資料』等を熟読、理解し正しい理法と技術の体得に努めて欲しいと思います。
特に気が付いた点を述べます。
- 立会前後の作法・所作が不十分
- 太刀の形(五つの構え)、小太刀の形(半身の構え)が不十分(特に下段の構え・構えを解いた時の剣先が高い)
- 打突の時機「機を見て」「入身になろうとするところ」を理解し、間合、緩急強弱、一拍子の打突等を心掛ける
- 小太刀の一・二本目の鎬で受け流す、三本目のすり上げ、すり落し、すり流し、すり込む所作が不十分
これらの項目が目に付きました。
今後、剣道形修錬に謙虚に、そして真剣に取り組まれ、剣道の内容を向上させるよう一層の精進を期待致します。