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平成11年8月号 第145回

武安義光

若返りの実務型新執行部発足

6月末に発足した新執行部の業務分担の大筋は、7月8日開催の理事会で次のとおり固まり、それぞれスタッフの編成を急ぐと共に、山積している業務処理の体制づくりに向かってスタートしました。

総務   半田・竹内常任理事
事業   大久保・園田・矢野常任理事
審判   福本常任理事
審査   松永・宮崎・角常任理事
強化   後藤常任理事
女子   佐藤常任理事
社会体育   岡村常任理事
国際   竹内常任理事
科学   加賀谷副会長
情報システム   福本常任理事

なお、女子小委員会および情報システム小委員会は委員会に格上げし、業務の充実を図ります。各専門委員会の委員長ですが、総務委員長は宗像専務理事が引き続き担当、その他それぞれ担当常任理事の筆頭の方が就任します。また、居合道専門委員会は、引き続き児嶋審議員に見て戴きます。杖道委員会は結論を得ていません。

このように責任の方が決まりましたので、それぞれの責任者に業務遂行の構想に基づいて、担当役員の追加、専門委員などを早急に立案するように要請しました。

さて遡りますが6月24日に改選された全剣連役員のうち執行部の中心となる、会長、副会長、専務理事、常任理事は、改選直後の理事会で互選されました。役員30名のうち、慣行として半数の15名は持ち回りの地区別の剣連推薦、また4名は横割り団体の推薦によっており、会長予定者をのぞく10名が裁量の余地のある人数で、ここに推薦者で足りない全剣連運営に必要な人材を、指名理事候補者としてあらかじめ準備しました。狭い人選の枠で、執行部の活力を保つために、苦心を要する仕事でした。

今回の選任では、実務能力を高め、かつできるだけ若返りを図ることを目指して、関係者と協議を重ねましたが、幸い地方推薦者の中から常任理事として適任の4人の方を予定でき、12人の常任理事の半数の留任者のほか、指名枠で委嘱した新人2名も加えて常任理事に委嘱、ほぼ満足できる編成となりました。

因みに年齢構成を2年前の顔触れと比較しますと、前回12名のうち半数を数えた70歳代の常任理事が今回は3名になり、残りの新任常任理事6人の平均年齢は、2年前に比べ、5歳余り若返ることになりました。

大幅の入れ替えとなった審議員の顔触れ

今回の改選で目だったのは、15人の定数のうち、3分の2の10人が新しい顔触れとなった審議員かもしれません。これはしかし特別にご無理を願ったためでなく、従来の慣行による定年制というべきものを踏襲した結果です。これは次の任期中に80歳になられる方は、ご勇退願い後進に道を譲っていただくという慣行です。従って新たにお願いした方も、退任された方に続く70歳代の方ばかりで、特に若返りが図られたことにはなっておりません。

剣道家という分類に入る、高段者の審議員の選任は、基本的には所要の識見のある方を委嘱するのが筋ですが、剣道界における審議員は権威ある地位という性格もありますので、地域、年功、出身などへの配慮も含め、従来の慣行を踏襲しての委嘱となっています。

一方、学識経験者の分類では、健康上の理由で顧問に回られた土田國保氏(不幸にして選任直後に亡くなられました)のあとを、副会長であった中村龍夫氏を煩わし、また医学関係の学識者でもある剣道人、伊藤元明氏に新たに就任願いましたが、こちらを含め、新しいメンバーの多い審議会の活発な審議を願っております。

層を厚くしていきたい顧問・参与

顧問・参与については従来の線でお願いしました。しかし今後全剣連の活動を専門分野でご支援戴く方や、広い視点で剣道界を指導して戴ける方に、追加して就任をお願いすること考えています。

また理事の定数に入れられない学校関係の団体(今回は高体連)、少年剣道に関係する中学校の団体の代表を、従来の例に従い理事待遇参与として委嘱しました。

見直すべき相談役と功労年金制度

相談役の委嘱は、従来の線で行いましたが、他の役職者と同じく、任期2年で更改することを明確にしました。またこれまでの相談役は功労年金の制度と結び付いており、高段者のみに限定されていました。しかしこのような狭い運用は、寄付行為の文面からしてもまた社会通念に照らしても、適当と思えないので、2年前にさしあたり功労年金と関係ない相談役として、前会長他をお願いしました。今後相談役の制度はさらに活用を図ることとし、功労年金制度の再点検を併せ、見直しを行います。

事業の展開は本年度事業計画による

多少事務的な話が続きました。そこで新しい執行部はどんな姿勢でやって行くのだという質問にお答えしたなければなりますまい。

これについては新役員の登場、分担の変更はあっても、全剣連の事業は平成11年度の事業計画に基づいて、長期的な視点で、積極的かつ的確に仕事を実施していくことに変わりはないと申し上げておきます。しかしその中では、6月に決まった新称号・段位審査規則の来年度からの実施を目指し、来年度事業計画への折り込み方を含め、諸般の準備に万全を期することが必要で、最も大きな柱として取り組んでいくことになります。その他長期的に見て見直しを要する点が、新しい役員の中からでてくることも期待しております。剣道の長期的発展を図る上で大事な時期に差しかかっております。

役員一同努力し、成果を挙げていく決意でおります。よろしくご支援、ご鞭撻下さい。

土田前審議員の逝去を悼んで

土田さんとは戦前の学生時代からの長いお付き合いでした。戦後は第一生命地下道場の弥生クラブ朝稽古で、昭和30年代から共に汗を流してきました。健康には人一倍恵まれていた、土田さんが2年前に病を得られ、大手術をされましたが、その後完全に回復するに至らず、ついに不帰の客となられたこと、いわば同年代の剣道に関する同志で、全剣連運営でも頼りにしてきた方を失い、悲しい気持ちで一杯です。

個人的なことはさておき、土田さんは審議員として、今年成案を得た称号・段位制度の見直しについて、積極的に所信を披瀝され、現状改革を提案されました。審議の最終段階の今年初めに、体調の悪い中、作業部会に参加をお願いし、称号グループの主査として、取り纏めの意見を戴きました。称号の権威を高めること、称号・段位を通じて、範士を最高位とするという構想は、まさに土田さんの強い主張が実ったものでした。

また土田さんは現代の世相を心配され、剣道の果たすべき青少年教育への役割を強調されています。平成10年5月号の剣窓の巻頭に書かれた剣筆は、経世の遺稿というべきものでしょう。土田さんが意図された見直しは、成案を経て前進しつつあることをこの欄を借りて御霊前に報告し、長逝を悼むものです。

東北・北海道対抗剣道大会を観戦して

昭和32年に始まり、交互に双方の地で開催され、第42回を迎えた歴史あるこの大会、今年は7月4日に宮城県迫町で開催され、初めて参上する機会を得ました。今回の試合は35名ずつの勝ち抜き戦で、大将同士の熱戦で北海道軍の勝利となりました。

充実した試合の連続で、出場選手各位や開催のために尽力してこられた方々、諸団体に敬意を表する次第で、両地方の剣道のレベルアップに効果をあげているものと感じました。

ところで腑に落ちない点は、東北軍は大会開始の初期の頃と打って変わり、このところ劣勢で、特に勝ち抜き戦では毎回大差で負けている有様で、今回の結果もむしろ善戦だったと受け取る向きが多かったことです。東北6県と北海道を比べれば、人口、剣道高段者の数など、東北が倍近い規模で、全国規模の大会に出るチャンスも何倍もあり、北海道が勝るのは面積くらいのものです。どれを見ても潜在力のある東北が有利の筈です。東北が足踏みしている間に、北海道が追い越したと見ることができましょう。これは北海道が一剣連組織である利を生かし得たのに対し、東北が6県の剣連の群雄割拠で、総力を発揮できないうちに地盤沈下をもたらしたということではないでしょうか。

全剣連の行事でも、7月に山形県で開催を予定していた社会体育指導者講習会が近県から参加が集まらずに、初めて中止に追い込まれた例が浮かんできます。しかし最近東北地区合同稽古が始められたり、8月には青森で、杖道の東北地区講習会がもたれるなど明るいニュースもあります。

地理的にも近い地域の歴史ある地区対抗大会を、ぜひ両地方の剣道振興に活かして戴きたいと感じました。

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