新年に入ってから各専門委員会がつぎつぎと開かれ、当面の事業に関すること、次年度の計画に盛り込むべき事項の検討が進められました。これらの論議を踏まえ各担当理事のもとで、構想を纏めつつあります。全般的調整を経て所要の予算も計上し、3月15日の理事会・評議員会の議を経て決定に持ち込まれます。以下事業について検討されている事項の一端を紹介します。
この一両年、大会の在り方についていくつかの改善を加えてきました。都道府県対抗大会には女子を加えて7人制にし。象徴となる優勝兜を用意したこと。国体には成人女子の部を設けたことなどが挙げられます。新年度はこの枠組みの中で、所要の改善を加えていくことになります。鳥取県米子市での東西対抗大会では、段位別人数の微調整を行うことが考えられ、七段の高年齢部の選手枠を減らす方向です。
昨年武徳殿建立100年記念行事を終えた、京都での剣道演武大会は例年にかえって開催されますが、全国の剣道家が、1年間の修練の成果をもとに、最高の剣技を示し合う、歴史と伝統に彩られた大会として続けるべく、運営を改善していく方針です。
居合道、杖道の大会も前年を踏襲しますが、13年度の大会の開催地が決まっていないのが気掛かりです。
4月に施行される新しい称号・段位制度への移行が、新年度事業の最大の課題であることは改めて申し上げるまでもありません。このための仕事は3月までの本年度の中から手掛けていくものが幾つもあります。すでに全剣連でも、5月の審査会は新しい規則に準拠した要項を発表しております。また3月に決まる予定の居合道、杖道の八段、称号・段位審査についても、新規則に基づくものであらかじめ公示しています。
審査員選考の改善は今回の制度の眼目の一つであり、全剣連と各剣連ともに、審査員選考委員会の設置など、準備の必要があります。剣連ではその前に、規則改正などが必要になり、それぞれ準備が行われている状況ですが、円滑に進められることを期待しております。
新しい制度で重視される称号の審査候補者の申請手続きも変更されました。従来の教士・錬士の推薦に当たっては、各剣連から名簿の通知があるだけで、これに基づいて全剣連の称号審査会が、素通りともいうべき形式的審査で合格としていました。したがって称号は範士以外は剣連で決めるものと思っていた向きもあった程です。審査が形骸化しているこの実態は、即称号の権威が低下に結び付いているものと言えましょう。教士・錬士の審査は秋からになりますが、それぞれ個人別申請書を全剣連連に提出して貰い、審査委員会で綿密に審査を行うことになります。
最高位の範士の審査は、本人の申請でなく、剣連の推薦書に基づいて行うことにし、会長の署名による推薦理由を書いて戴くことになります。いずれも事務が多少複雑化しますが、称号・段位審査の内容を高める目標達成のためであることをご了解願います。
試合偏重の近年の風潮を改め、剣道全般の質を高めていくためには、全般にわたる審判力の向上が不可欠です。しかしこれまで規則の普及徹底は叫ばれてはきましたが、向上のための具体的決め手を見出だしていないのが実態です。これらを実現する方策は、剣道研究会や試合審判委員会での検討を経て、具体的改善行動計画を作りたいと思っています。
剣道の普及と水準の向上を図るための講習の重要性はいうまでもありませんが、これも同様に決め手に欠く恨みがあり、改善のための突破口を見出だす必要があります。主要な事業である各種講習会の充実、効率的運営を図ることは当然ですが、この際受講者の成績評価、受講認定などを確実に行う方向で改善を図って行くことが必要です。
ここで特記すべき新しい構想が出ました。初心者、初級者向きの基本的の形を立案、制定し、修業に役立たせようというもので、具体化に着手することになりました。成案を急ぐわけではありませんが、確実な実現を期待しております。
この事業、すでに4年を経て、中級の資格取得の講習会を、東京と大阪で行う運びになりました。また初級資格取得者がすでに2千5百人と、取りあえずの目標に達したことに鑑み、従来中年者の受講を用意ならしめるため高く設定していた受講者の年齢を、当初の構想に従い、新年度から切り下げることにしております。年齢を大卒の22才にし、一層の制度の普及が進むことを目指しています。
一昨年末に始めた全剣連ホームページは若手担当委員のご尽力もあり、内容も充実してきました。コンピュータの普及もあり、利用者が急増しています。秋の全日本選手権大会の結果を進行に応じてリアルタイムで速報した効果もあり、11月の利用は跳ね上がりました。年間のアクセス数は60万件に及び、さらに驚くべきことに、海外からのアクセスがその3分の1に及びました。このような状況をさらに発展させるため、従来の広報誌「剣窓」と関連づけて実施する体制をとり、広報の一層の充実を図っていく構想を進めます。
全剣連設立50年記念事業の柱となる現代剣道史の編集に着手
昭和27年に設立された全剣連は、明後年の平成14年に設立50年を迎えます。設立以来の歴史と、先人の労を振り返りつつ、今後の発展に繋げるための記念行事を行う予定ですが、その中の柱として、「現代剣道史」の編集、刊行を行うことを考えています。すでに加賀谷副会長をリーダーとするタスクフォースを発足させており、学識者のメンバーも依頼し、編集の構想を練っています。対象は幕末期の竹刀剣道の発生期から始まり、現在に至るものとし、14年度中の刊行を目指します。
またこの他に全剣連五十年史も作成します。これは昭和57年に刊行した三十年史、平成4年の設立四十年に刊行した「この十年」に続くもので、全剣連の歩みの五十年を振り返る、記録を中心とした資料として纏める予定です。
「剣窓」に連載され、好評を博している「剣道医学サロン」を、新たな視点を加え改めて集大成し刊行しょうとする方向が決まり、伊藤元明委員が中心になって準備体制に入りました。
用具関係では、広野美次委員の手で平易な、用具のメンテナンスについての解説資料の作成が進められています。いずれも一般剣道人向きの有意義なものとして完成が待たれます。
3年前の京都市での大会に続く、第11回世界剣道選手権大会は、来る3月24日から3日間、米国カリフォルニア州サンタクララしで開催されます。今回は新たに女子団体選手権大会が准正式種目として加わります。日本はすでにお知らせしているように、男子、女子それぞれ10名の選手団を派遣します。男子監督に西山泰弘範士、女子監督に角正武教士が当たられ、選手団長には森島副会長が就任されました。
このほか国際剣連役員、大会役員、係員などが出向きます。世界剣道の水準向上を反映した、充実した大会が行われることを願っており、さらに当然のことながら日本選手団が世界の範とするに足る剣技を示し、立派な成績を収めることを期待し、確信しています。
悲しい知らせをお伝えしなければなりません。まず元参議院議員、元自治大臣、剣道範士、全剣連顧問加藤武徳氏が去る2月9日岡山市で亡くなられました。加藤さんは長年剣道を愛好され、国会武道議員の重鎮として、長年剣道界をご支援戴いた方です。全剣連は平成10年剣道功労賞を贈呈しております。
剣道家として最近まで元気で活動してられた。最古参の剣道九段、居合道も九段の長老である全剣連相談役中倉清さんが2月9日に亡くなられました、戦前から実力者として頭角を現した方で、戦中は活動が制約されましたが、戦後の復活とともに実力を発揮されました。初期の東西対抗大会の勝ち抜き戦で独り舞台の活躍をれたました記録を「三十年史」などでご覧ください。剣術家の鬼才と申し上げるのが、ピッタリの方で、一橋大、中大など学生指導に特に力を注いでおれました。
また居合道範士九段草間昭盛さんが去る1月30日に逝去されました。居合道委員会委員として指導、推進の中心の方でした。以上の方々の急逝をお悔やみ申しし上げます。
昨秋剣道有功賞を差し上げた、徳島県日和佐市の平岡竹雄氏(86才)からお便りを戴きました。徳島剣連での祝賀の場もあったとのこと、大変喜んで戴き何よりと存じています。寄せられた短歌を紹介致します。今後ともお元気に剣を楽しまれんことを念じます。
『子らを教え 我も学びて70年 教学一如の剣を勤しむ』