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平成12年4月号 第153回

北の丸公園、靖国神社の桜も満開の、春爛漫の季節となりました。全剣連のこの4月は、懸案であった称号・段位審査の新規則が施行される、歴史的な新年度を迎えます。

新称号・段位審査規則の施行にあたって

戦前からの長い歴史を持つ、称号・段位制度は、剣道の普及・発展に大きな役割を果たしてきました。戦後発足した全剣連は、これを継承し、社会情勢に対応して、いく度か手直しを加えて今日に至っています。しかしその間万全を期し得なかったことによる問題点が目立つようになり、見直しを必要とする時期を迎えました。全剣連は平成9年に発足した新しい役員態勢のもとで、称号・段位制度と運用の見直しに取り組む方針を固め、同年秋から称号・段位専門委員会での検討を開始しました。その後作業の進展に応じて、全剣連の諸会議に諮りながら、修正と調整を進めるほか、部外の意見の聴取、吸い上げも行いつつ立案を進めました。

審議に当たっては、見直しの大綱というべき、「称号・段位の見直しについて」を作成し、大筋の点について論議を重ねて方向を固め、約2年の時日を費やして各方面のコンセンサスを得つつ、新しい審査規則の立案を進めました。この間多くの論議を呼びましたが、結局見直しの方向について大方の了解を得ることができ、平成11年6月の理事会・評議員会で決着し、新剣道称号・段位審査規則を決定いたしました。さらに同年11月細則・実施要領を定め、当初の目標どおり平成12年度より施行することになりました。

居合道・杖道についても、剣道に準じた審査規則、細則、実施要領もこの3月に決定、同じく新年度より施行されます。

新規則の立案に当たっては、これまでの制度と運用について全般を見直し、今後長期にわたっての剣道の奨励と発展に役立ち、社会よりの理解を深め得る、安定した制度と運用を確立することを目指しましたが、一方現在迄の運用の実績にも配慮して、移行に大きな摩擦がないよう配慮も加えております。

新しい制度の要点はつぎのとおりです。

(1)制度の目的について、これまでの規則に記載がありませでしたが、「剣道の奨励およびその向上に資する」ものと明記しました。

(2)段位は「技術的力量、称号は「これに加える指導力や識見などを備えた、剣道人としての完成度」を示すものと、性格を明らかにし両者を並存させました。そして称号を権威あるものとして位置付け、「称号・段位を通じ、範士を最高位とする」と明記しました。

(3)称号・段位それぞれの具備すべき基準を示し、この基準に基づいて審査の合理的実施を進めるが、特に審査員の選考を適切に行うよう、選考委員会の制度を重視し、審査員の質の向上を図ります。

(4)段位審査は、実技審査を行う八段までとし、九、十段審査は規則に記載せず、実施しないことにしました。

(5)これまでの規程により取得した称号・段位はそのまま効力を有することになっています。

(6)五段以下の審査は、これまでどおり、加盟団体に委任して行います。

(7)学科審査の在り方、形審査の着眼点などについては、十分な検討を加えておらず、概ね従来のやり方を踏襲しますが、引き続き審議を行い、方針を定めます。

以上の要点に示したところにより、規則は新年度から実施段階に入ります。しかし審査の枠組みが発足するとはいえ、規則の目的として掲げた「剣道の奨励と向上」の実効を挙げて行くには、全剣連ならびに各剣連、さらに審査に当たる方々、剣道愛好者などを含め、剣道界をあげての大きな努力が今後必要とされることをここに重ねて申し上げ、大方のご尽力をお願いするものです。

新規則施行に関連して

(1)新規則では審査員の選考を重視し、選考委員会を設けています。この委員会は審査員を選考を主な任務としますが、この他規則に定められている所により、会長が合格の決定を不当と認めて取り消そうとする時などに、会長に意見を述べるなどの役割を果たします。しかしこの他選考委員に期待されいるのは、委員会が選んだ審査員が適切に審査活動を行っているかどうか、審査の運用を評価する監査役的の役割です。

審査員が審査を公正に当たっているかどうか。また個々の受審者への判定を妥当に行っているかなど、審査員を評価し今後の選考に資すること、そして審査の質を高めることを、選考委員が果たす役割として期待しています。

(2)新規則による選考委員ー理事2名、範士3名、学識者2名は、3月15日に理事会の承認を得て決定されました。これを受けて会長が招集する選考委員会を3月17日に開催、5月の一連の審査会の審査員を厳重、公正に選考しました。選考委員には早速審査を評価する仕事をお願いすることを考えています。

(3)同じ日称号・段位の剥奪などを行う場合、会長に意見を述べる役割を持つ綱紀委員会委員5名も指名されました。いずれも人事管理や法務に、学識と経験を持つ方々です。しかしこの委員会の活躍の場が、多くならないことを念願しております。

(4)新規則では、追綬の制度が廃止されました。これに代わるものとして、功績のあった方が死亡された場合、加盟団体の特別の推薦により、全剣連会長が顯賞状を贈呈する制度を新たに設けました。

(5)称号の証書の様式を見直すことを考えています。とくに新制度による範士の証書は立派なものを作るべきとの声か多くあります。

(6)剣道九段、80才以上の方を相談役に委嘱し、その方々に功労年金を差し上げる制度がありました。これは古く昭和30年代に始まったものですが、国の年金制度が整備された今日、その使命を終えたものと判断し、九段審査を取りやめる今回の制度改革の機会に、功労年金制度を規程した「相談役選定の内規」を廃止しました。ただし現在年金受給の4人の方への年金は継続します。

新年度の事業計画決まる

3月15日の理事会・評議員会で平成12年度の事業計画、収支予算が別項の記事のよう決定されました。事業計画策定に当たっては、それぞれの担当役員の提案も盛り込んでおり、常任理事会では例年に見られない活発な論議が交わされました。計画に盛られた事業の中で、全剣連が日本の剣道の発展を実現していく上で取り組む重点事業を披露します。

まずは「称号・段位規則」の施行を適切に進めることであり、新年度の事業の最も太い柱です。

普及活動では日本剣道形の初心者版ともいうべき基本形(仮称)の編成に着手します。突きや上段を禁じている、幼少年の修業に役立つ形を、本年末までに纏める計画です。

なかなか決め手を見出だし得ない、審判技術の向上のために、着手する「評価システム」導入への挑戦を取り上げております。高段者が当たる場合が多い、試合審判の質を高めるための評価システムの導入はなかなかの困難を伴うものですが、春の都道府県対抗大会など、全剣連主催の大会から、審判主任や評価委員を定めて、チエックリスト方式で試行するため、準備段階に入ります。

以上の二つの仕事は、即効性がないなどと言われることかも知れません。しかし高段者の多い審判員の評価にはなかなか取り掛かり難い雰囲気があり、これまでなら見送られたかも知れない仕事です。これらに取り組むことになった担当役員以下の活力に経緯を表し、その成功を期待したいものです。

このほかの事業では、全剣連情報システムの革新やホームページの充実があり、また新しい業務体制に即応しての、事務局組織の抜本改組も考えています。また加賀谷副会長をリーダーとした、タスクフォースから、全剣連設立50年の記念行事についての斬新な案が出ることも期待されます。

このほかの前年より継続する業務が多々あります。これらの仕事をしっかり行うことは当然ですが、以上の諸点を念頭において、新年度の事業計画を読み直して下さるようお願いします。

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