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平成12年7月号 第156回

効果を期待できる幹部剣士への講習

5月の京都での演武大会、一連の審査会を終えて、剣道界は実力充実期を迎え、各剣連とも講習会のシーズンに入ります。全剣連もつぎつぎとプログラムを進めていますが、この時期は幹部養成の講習が集中して行われます。

まず昨年秋の審査と、5月の京都審査の合格者を併せ、合計28名という多数の参加者を得て、9回目の剣道新八段研修会は5月23日から4日間、例年の東京武道館で開催されました。難関を突破して油の乗り切った受講者の意気込みは格別なものが感ぜられました。「剣道の奥義に通暁、成熟し、技量円熟なるもの」という新規則の八段の基準への新任研修を終えて、皆さんの今後のご精進とともに広い視野での識見を備えた剣道人として発展されることを期待しております。

続いて38回目という長い歴史の中堅剣士講習会は、各剣連から推薦の40才台、剣道七段の精鋭を集めて、東は埼玉県北本の解脱会研修センターで、西は奈良市柳生の芳徳寺で、共に6月14日から5日間の厳しい日程をこなしました。この講習会は剣道界の幹部養成の重要行事として始められ、かつては全剣連が参加者を選抜し、柳生での集合教育による、厳しい講習でした。現在の長老クラスの多くの方が、幹部への関門として、このコースを経ておられます。柳生氏発祥のいわば剣道の聖地の禅寺の道場での猛訓練は、多くの方の記憶に刻みこまれ、参加剣士同士のつながりも深めるなど、特色ある成果を挙げてきた講習会でした。

しかし道場の広さ、さらにそこに寝泊まりする収容力の問題、食事の場所を含めての講習生の居住性の悪さから、講習能率が問題視されました。そこで参加者を増やし各剣連で育てたい幹部を派遣して貰うようにし、現在のように東西2か所で行うことにして今日に至っております。今回は東は33名、西は28名の参加で行いましたが、講習の効果には参加者全員が満足の感想を残しており、事業として有意義であったと感じます。これは講師も含めての全員の熱意がもたらしたものと評価できます。

しかし西の会場、居住性の悪さに加え、食事は毎回500mの坂道を下っての往復を要するなど難点が多々あります。この年代の幹部養成をさらに効果あらしめるため、講習の方法を改めて見直すことが必要と感じました。

つぎに第5回を重ねた、女子審判講習会が、調布市のNTT研修センターで6月3、4の両日開催されました。女子の五段以上の剣士が対象で、全剣連事務局の千葉まり子六段をはじめ72名が全国から参加、熱心に受講、成果を収めたものと思います。審判実技の実習には試合の実演が必要ですが、今回は東海大、日体大の両校の男子学生が当たってくれ、講習効率を上げるため有効でした。審判力の向上は、全剣連事業の重点で、これまで各地で比較的チャンスに恵まれなかった、女子審判員の能力向上のため講習の意義は大きいものがおります。そこでこの講習会を昨年までのように年2回にして欲しいとの声が、女子側において高いことは聞いており、その意義を否定はしません。しかし女子だけの講習のチャンスは他にもあること、そして優先すべき男子高段者への審判能力向上の対策が出遅れている状況から、さしあたりは見送りたいと思います。資格取得者が2千5百人に迫った社会体育指導員養成講習会も新年度のプログラムが始まりました。第29回の初級コースは、今回伊勢神宮のお膝元、伊勢市郊外の森の中の厚生年金休暇センターの恵まれた施設で開催、三重県剣連のご努力もあって、県内の方を中心として、73名の参加を得て、6月10日から3日間の日程を終えました。実技、講義とも廊下続きの建屋で実施できる便利さもあり、参加者も全員満足できたと思います。ただ1人アキレス腱の傷害の方が出たのは残念でした。

称号・段位審査関係第二段の事業進む

段位審査の関係では、夏の剣道六、七段の地方審査が迫り、新潟での七段、福島県郡山市、福岡県宗像市での六段審査の準備が進みました。また居合道では宇都宮市、松山市でそれぞれ地区講習会に続いての、六、七段審査が行われます。

5月の審査を1回休んだ、錬士、教士の審査を新しい規則によって11月に行います。地方剣連の推薦に基づいて、全剣連としては実質的にフリーパスであった錬教士審査が厳しくなるということから、昨年度には駆け込み受審が多かったこと、またそれぞれの段位取得後に、1ないし2年を置くという制度変更から、受審者はあまり多くないことを予想していますが、審議の後要項を決定しました。錬士は各剣連の書類推薦であることは変わりませんが、受審者ごとの推薦書と、自筆の小論文の提出を求めています。

また教士は剣連の推薦書の他、全剣連としての筆記試験を行います。受審者の便を考え、試験場は兵庫県、福岡県と、東京都に設けることにしました。居合道、杖道の称号審査も同時に行います。範士取得の方の証書の様式が固まりました。従来より大型の用紙を用い、全剣連の印も大きいものを新調し、文言も授与でなく、贈るの語を使います。

今回の新規則の発足に伴い、称号徽章を作り、希望の方に佩用して戴くようにしました。図柄は証書にも使われているマークのもので銀製、錬士用と教士以上用との2種類を作ります。またしばらく品切れになっていた、従来の三色徽章も復活させます。これまでのものは直径10ミリのでしたが新たに直径15ミリの大判を製作提供することにします。いずれも剣道愛好者一般に広く利用して戴きます。価格、頒布方法は改めて発表します。

称号・段位の返納の事務処理

称号・段位の受有者が、これを辱めるような行為があった場合、全剣連会長は、定められた手続きを経てその返上を命じ、またはそれを剥奪することができます。しかしそれ以外の理由で自発的に返納したい人が出た場合の処理には、規程がありませんでした。この場合の事務処理について、検討を重ねましたが、結論は本人の意思を尊重して、坦々と受けてその登録を消すということに落ち着き、特に規定化しないことにしました。

ただ登録面での記録は残します。なお私も剣連に関係する以前の昭和53年石田和外会長の名で剣道教士を戴いております。前称号審査規程の第13条に基づくものです。今回の新規則では、功績などに基づく称号授与の制度は廃止しました。この改正を行った責任者として、これを持ち続けることには抵抗感があり、返納することにいたしました。

前年度事業報告、決算固まる

6月22日に理事会・評議員会を開催、平成11年度事業報告、決算を審議、決定されました。事業報告では最近の活発な事業の展開が盛り込まれ、まずまずの状況と思います。決算も称号・段位取得者の増加などの影響もあり、順調な結果でした。事業遂行にご協力戴いた各剣連、また執行に当たった関係役員や事務局などの尽力の結果が総合的に現れたものと考え、厚くお礼申し上げます。月並みな言い方ですが、引き続き気を引き締め、積極的、効率的な事業の推進に努めます。

全剣連設立50周年記念事業の大綱

敗戦、占領のあとを受け、昭和27年に発足した全剣連は、2年後に設立50周年の節目の年を迎えます。荒波を乗り越え、復興、発展を実現した歴史を振り返り、後世に引き継ぐべき記念事業を行おうと、かねて加賀谷副会長をリーダーとして検討し、一部は準備段階に入っていましたが、今回の理事会・評議員会に構想の大綱を諮り、以下の基本事項について賛同を得ました。

(1)記念大会を実施する方向で会場の確保を進める。ただし11月3日の全日本剣道選手権大会と、その前日の2日を使う。

(1)三十年史、四十年史に続く、全剣連五十年史を作成する。

(2)明治以前に溯り、現代剣道史を刊行する。

(3)懸案の全剣連道場の建設を具体化する。

(4)剣道資料室の設立、先人の功績者を記念、顕彰する殿堂の実現。

(5)記念式典、祝賀会の開催など。

若干の説明を加えます。作業に時日を要する(2)(3)については、すでに着手しています。(1)は会場確保を優先させます。(6)については実施する構想で、具体策は、(1)の具体案とともに来年以後に検討すればよいことです。(4)は長年の懸案ですが、実際は実行不可能の状況にありました。しかし最近実現の可能性のある有力案が浮上してきましたので、無理のない方法で具体化を進めます。(5)はこれに付帯して考えていきたいと思います。

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