剣道功績者の顕彰 剣道特別功労者に井上正孝、植田 一氏
全剣連には剣道の発展のため、長年にわたり特別の貢献をされた長老を顕彰するための特別功労者という制度があります。この制度は平成4年、全剣連設立40年の折に設けられ、その年暮れの記念式典の際、大野操一郎、矢野一郎の2名の方が特別功労賞を受賞されました。その後新しい方への顕彰がなく、お2人が亡くなられてから、該当者が無い状態で今日に至りました。
この制度は記念行事の一環としてたまたまスタートしたのであり、長老の顕彰に節目の年を待つ必要はありません。功労年金の運用や称号・段位制度も改まった現在、適格な方への顕彰は積極的に行うべきとの方針から検討を進めました。そして標記のお2人に候補を絞り、学識者の集う功労賞、有功賞の選考委員会に意見を聞き、積極的なご賛同を戴いた後、理事会で決定しました。
顕彰の理由などは別に掲げており改まってご紹介の必要もないかと思います。お2人とも、剣道人の範となる徳操高潔な方で、永年に亙り剣道の発展に尽力され、多大の功績があり、ご高齢の今日まで活動を続けておられることもご承知のとおりです。受賞をお慶び申し上げ、今後もご健勝に過ごされることを祈念します。
有功賞、功労賞による顕彰は、各剣連、関係団体から推薦の候補者についての審査会を10月10八日に開催、有功賞57名の推薦を得て、11月2日の理事会において決定、3日付けで発令しました。その氏名は別に掲載されております。
また功績顕著な方に贈られる剣道功労賞は、該当する方無しという結論で、制度発足以来初めて見送りになりました。審査会では、全剣連側また各剣連などから申し出のあった候補者について検討されました。いずれの方も、地域としての功績は顕著であっても、全国的視点での賞の水準には達しないのではないか。また慣例となる年齢に達しておらぬ方もあり、いずれも取り上げるべきでないとの結論になったものです。そして功労賞の審査は厳正に行い、賞の権威を維持すべきという意見の一致もありました。
6月の役員改選に引き続く専門委員会の編成は、再編成関連の取りまとめなど遅れておりました部分が、11月2日の理事会で決定を見ました。今回の目玉は前にも述べましたように普及の充実で、普及企画・業務委員会と、普及教育委員会を設け、普及教育委員会に、強化、指導、剣道形の3部会を置きます。専門委員会の拡大に伴い、委員会メンバーの合計は役員を含め175名で、前年度と比較して2割増加しました。しかし要は充実した仕事をやって貰えればよいわけで、出遅れていた各委員会は早速活動を始め、能率的かつ積極的に仕事を進めて戴くことを期待します。
来年度全剣連行事の日程編成の準備が進められ、11月2日の理事会、評議員会で内定しました。来年から改められるものに、剣道の段位審査の日程があります。全剣連は審査の日程を、「受審者の立場への配慮を深める」
方針のもとに極力、休日に行うよう調整を加えて来ました。すでに5月の剣道段位審査に、連休中の5月2、3日を活用し、本年秋の剣道七段審査を名古屋でも、週末に行うことにしました。14年度にもこれを継続し、春の剣道七段審査も名古屋で休日審査を行います。
ただ年2回の剣道八段審査は、会場の関係から、春秋とも週日に行って来ました。来年はこれを見直し、まず5月の京都審査では、六段審査と入れ替えて、2日に西京極スポーツセンターで行います。社会人にとって忙しい連休明けの平日審査を避けることになり、八段受審者には便利になりましょう。またこのことは激増している八段審査に、広い会場を使えるメリットもあります。
同じ観点から、来年秋11月の審査でも、六、八段を入れ替え、八段審査を日本武道館で行うことを考えています。ただこの結果、六段受審者には不便になる面もありますが、六段審査には春秋とも名古屋での週末審査がありますので、そちらを活用して戴きます。
また称号の教士審査は、来年度から春・秋の2回実施になります。
本命が消えて混戦となった第49回全日本剣道選手権大会
文化の日の恒例の全日本剣道選手権大会、予想ではいずれも前回の覇者栄花直輝選手と、過去6回優勝の、別格と見られる宮崎正裕選手の2人を中心として試合が展開され、上り坂の何人かの若手の誰かが、両者を倒して抜け出すかどうかということでした。
一回戦から激しい試合が見られましたが、結果はおおむね予想の範囲でした。しかし二回戦に入ると栄花、宮崎の二人が相次いで敗れる予想外の展開になりました。栄花選手を阻んだ佐藤博光選手は注目されていた若手で、栄花にとっての難敵と目されていましたが、反則で決着という後味の悪い結果でした。宮崎を終盤までに降すとすれば、恐らく若手であり、それも警察外の選手ではなかろうかという予感がしましたが、田崎智春選手が立ち向かい、激しい攻防の末、面を決めました。その後の展開では、注目されていた選手が勝ち進みましたが、実力は認められていながら、優勝候補としては有力とまで見られていなかった岩佐英範選手が、粘りある試合展開の中、機会を捉えての小手で勝負を決める試合を繰り返し、ついに栄冠を手にしたのは鮮やかでした。
久方振りに警察官の優勝を阻むかと見られた、教員の佐藤充伸選手もついに及びませんでしたが、最年長39才の倉成選手が難敵を下しての三位入賞とともに見事な試合ぶりでした。また優秀選手に選ばれた6人のベテラン、若手の今後の成長も期待されます。標題に掲げた印象の大会でしたが、それぞれの選手にとって、これからも続く剣道人生の中の節目として今後の成長の糧としての大会だったことと思います。厳密な判定を行われた審判員、大会運営にお骨折戴いた係員の皆さん、終始整然たる観戦・応援をされた多数の観客の方々に主催者としてお礼申し上げます。来年は全剣連設立50周年の特別行事として、11月2、3日に開催されます。
各地巡回で開催の全日本居合道大会は、10月20日(土)に甲府市に舞台を移し、県立武道館で全国各都道府県からの代表選手、さらに全国からの居合道の五段以上の剣士340名も加わって、盛大に行われました。
この大会必ずしも居合道が盛んでなく、居合道人口も少ない山梨県が、他に開催地として 名乗りを挙げるところが少なかった中を、積極的に引き受けて戴いた経緯があります。剣連が一丸となって準備に取り組まれ、強化にも意を用いた結果、見事に団体成績で初優勝という、予想外の好成績を収められたこと、ご同慶の至りです。次回大会は大阪市での(※)開催となります。
(※)月刊「剣窓」12月号誌上では上記の赤文字部分が【埼玉県秩父市で八年ぶりの】となっておりますが、「大阪市での」とご訂正くださるようお願い申し上げます。(事務局)
選手権大会のデータ幾つか
出場64選手のうち、警察官は47名、教員11名、その他6名、学生の出場は今年もゼロです。選手最年長39才、最年少22才、平均年齢30.2才、段位は七段から四段、平均すれば五・五段というところでしょうか。
試合に目を転じます。総計63試合の中、一本の勝ちが52試合、二本取っての勝ちは例年より多い11試合でした。この中で準優勝の佐藤選手の二本勝3回は光ります。決まった技、77本、内訳メン41、コテ26、ドウ8、ツキ1、最後に反則1は選手権大会としては残念です。一番長かった試合は、一回戦の北条ー岩佐戦の35.5分、最短の試合は二回戦の小田口ー山田戦の55秒。
優勝の岩佐選手の準決勝戦までの5試合の試合総時間は68分、一方の佐藤選手は30分と対照的でした。
入場者数を見ると、アリーナ席は完売で1,050人、一階指定約1,500人、二階自由席約2,500人、小中学生無料客約1,200人、ほかにひな壇の役員や招待客など約460名で、入場者合計6,700人は、ほぼ前年並でした。
当日のホームページへのアクセスは21,000件で昨年より倍増。
また大会運営の役員、係員合計は140名。プログラム販売数3300部は前年より微減、なお全剣連が用意したおにぎり弁当は810個でした。
秋の深まり
数日前の晩、編集委員会を終えて外に出ると、田安門のあたり枯れ葉がこがらしに舞って、舗装の上にカラカラと響いており、秋の深まりを感じました。向寒の折皆さんご自愛ください。