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平成14年3月号 第176回

設立五十周年行事計画の趣旨

昭和27年10月に発足した全剣連は、新年度で設立50周年を迎え、すでにいくつかの記念行事の準備を進めています。そもそもこの機会の行事は、漫然と慣行に倣ってのお祭り騒ぎでなく、かなりの費用とエネルギーを投じても、全剣連と剣道界にとって永く意義あるものにするべきと確信します。そこで計画に当たって、その狙いと趣旨を検討し、これに基づいて進めることが大切であり、執行部として常任理事会その他の会議での意見も徴して以下の考え方を纏めました。

この50年を顧みれば、戦争末期から戦後の占領下を通じて、瀕死の状態にあった剣道は、独立回復後いち早く全剣連の発足から蘇生のスタートを切りました。その後多くの困難を乗り越えて、当時予想できなかった今日の普及、発展を実現したと集約できます。長い目で歴史を振り返って、一度落ち込んだどん底からはい上がったこの50周年は、やはり祝賀に値する節目と考えられます。

 

そこでまずはその間の先人の労苦を偲び、感謝の念を表すことにしたいものです。またこれらを単に全剣連という団体の思い出にとどめず、当時から激変した社会に対応していく、新しい発展の方向を模索し、実行する出発点とするべきです。

そしてこの節目を祝うべく、主な大会などの行事を充実させ、剣道界の活性化と、剣道人の士気を高めるきっかけとする。また充実した現況を一般に披露し、剣道に対する認識を深めて貰う機会としたいものです。

以上に加えて大事なことは、今後長期に亘る剣道の発展の方向を、原点にかえって見直し、現状の問題点、また今後の社会動向にも配慮して対応策を検討し、実行に移すために取り組むことです。

以上の理念に立脚し、記念事業としてつぎの事項を取り上げます。

実行する事業・行事のあらまし

まず50年を振り返り、現在までの功績者の顕彰を取り上げます。特に戦後の困難な時期に剣道を育て、その立上がりに尽力された方、また現在の剣道を基盤で支えて戴く功労者、団体への感謝の意を表したいと思います。

大会では50周年記念大会を開催するほか、主催大会、共催大会の充実を図り、表彰、記念品などに配慮します。また剣道振興に顕著な貢献をした大会などの行事の後援、助成を行います。

出版関係では、かねて進めている「剣道史」「全剣連五十年史」、を刊行し、剣道および全剣連の歴史を集大成させます。また愛好者の交流に便宜を図るため、「高段者名簿」を4年ぶりに刊行するほか、「剣窓」の記念特別号を発行、配付します。

文化活動の目玉として、剣道博物館の計画の策定を進めます。これは在来の概念の博物館とは異なる映像を主体とした新しい形のもので、大きな施設を持たない、情報による「姿なき博物館」です。一方剣道に関する資料の収集は経常業務として続けていきます。

つぎに剣道の成立、発達に格段の貢献された、先人の功績を永遠に伝えるための、人物の博物館ともいうべき仮称「殿堂」を併せ設けることとし、選定などの準備に入ります。

また例年の写真コンテストのほか、40周年に際して行った、剣道の普及を進めるためのポスターの公募を行います。さらに剣道に関する文化講演会を開催するほか、セミナーなど有意義な企画に対し、後援、助成を考えます。

業務関係分野では、剣道界の事務処理能力の向上のために、IT化の促進を図りたく、剣連などの事業への助成、剣連、団体の行う、有意義なその他の事業の後援、助成を検討します。

さて最後に取り上げるのは、剣道の長期的発展を図る上で必要な、基本的な考え方を再構築するための検討、また全剣連の今後の前進のための指針、事業の進め方、剣道団体の在り方などについて、基本に溯る検討で、寄付行為や、長期的事業指針に反映させることを進める必要があります。

また節目の年としての式典や祝賀の行事も12月初めに行います。

なお具体化への期待があり、検討と折衝を重ねていた、本部道場の計画は、諸条件が折り合わず、撤退することにしました。

事業に対する資金対策

経常の予算できるものは、極力これにより、また大会、出版など収入が期待できるものは、それにより賄うようにします。これ以外は「記念事業費」の特別予算を計上します。財源としては、一部積立金の取り崩しを行い、平成14年度予算に組み込みます。

積立金は全剣連が近年蓄積したもので、剣道愛好者の協力に依るものであり、その一部を記念事業において剣道愛好者に還元することは、許容されることとの考えです。

剣道愛好者への事業費の一部賛助を依頼

一般からの寄付金集めは特に行いませんが、1回だけ全国の主な剣道人が集う5月の全日本剣道演武大会の参加者に、従前の例にならい、1人1,000円の賛助をお願いすることにしました。強制する性格のものではありませんが、ぜひ協力をお願いします。

その他篤志家の賛助は歓迎するもので、これには要項を定め、免税措置を講ずる予定です。われわれも貧者の一灯を献ずる所存です。

学校の週休2日にうまく対応したい

本年4月から、学校が週休2日になります。文部科学省は新学習指導要領にあるとおり、「土日を利用して家庭や地域での体験や活動を通じて生きる力を育てる」ことを期待しています。

これに関連して文部科学省は、学習塾、予備校、スポーツ団体などに、子供たちが活動できる受け皿作りへの協力を呼び掛けていますが、これについては学校側を含めこれからという段階のようです。

一方文部科学省の調査によると、休日に何をしたいかの問いに対しての、中高生の答えでは「ゆっくり休み寝る」が、保護者の希望では「手伝い」が一番だったと報道されています。

このような状況ですが、学校の休日増加は、学校の剣道部やクラブ活動の在り方にも影響しますし、今後の剣道の発展の基盤となる、幼少年の剣道への取り組みの地殻変動要素になり得るものです。剣道界としてはこれに関心を払い、対応することが望まれ、できればビジネスチャンスとして捉えたいものです。

要は剣道界として、剣道に興味があり、剣道を学びたい、特に土、日にも剣道がしたいという児童・生徒に対し、剣道を学ぶ機会を与え、増やす活動をして行くことが必要ではないでしょうか。

  

このためには県から市町村にいたる剣連、関係の高体連、中体連や各市町村学校関係者、さらに道場、スポーツクラブなどが協力して行くこと、また全国各地の剣道社会体育指導員も積極的に役割を果たして行くことなどが期待されます。

剣道の果たすべき人作りという社会的役割を、青少年の健全育成を通じて実践するため、剣道人が誇りを持って活動して戴くこをこの際お願いするものです。

山根幸惠氏が急逝される

前審議員・鳥取県剣連会長山根幸惠氏は去る1月24日朝急逝されました。山根さんは戦中の京都武專のご出身、戦後郷里鳥取にあり、教職の傍ら鳥取県の剣道の育成に尽力されました。昨年12月鳥取県剣連の設立50周年祝賀行事があり、ぜひにとお招きを受け参上しました。式典での日本剣道形も自ら演武されるなど、立派に行事を終えられたばかりでした。

山根さんは鳥取県剣連が戦後発足してから、終始一貫運営に携わってこられた、戦後剣道の生き字引ともいうべき方でした。

剣道の史実、古文書などにも造詣が深く、全剣連資料西小委員会の委員長として活動され、「幕末藩校における剣術の実施状況一覧」を纏められばかりの逝去でした。学識者としても貴重な、剣道人であった山根さんのご逝去を、謹んでお悼み申し上げます。

断片

1月号「まど」のミス訂正----「平成13年剣道界を振り返る」の新規則による初めての範士誕生は誤りで、初めての剣道・杖道範士誕生というべきでした。訂正いたします。

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