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平成14年8月号 第181回

諸業務の展開ー夏の陣を迎え本格化

第14半期を終え、14年度事業も軌道に乗り、進展しつつあります。6月の理事会・評議員会は、前年度事業報告・収支決算が固まる、一つの締めくくりの会議ですが、設立50年の諸事業も決定され、本年後半の事業実行に弾みがつきました。

例年の行事から見ると、第14半期は実力を養うシーズンです。4月の中央講習会から続く各剣連での伝達講習、全剣連としては各地での地区講習会の他、今後の発展の基礎となる基幹人材養成事業である新八段研修会、中堅剣士講習会、また女子基幹要員の審判講習会などが続きます。また国際活動では7月末の外国人剣士の講習の準備が進む他、各国への講師派遣が行われました。

こうして事業の流れは学生・生徒の錬成の成果を競う夏の大会シーズンに入って行きます。

この時期に目立つ全剣連の活動を以下紹介します。

充実した審判講習会を展開する

まず7月上旬の教育系大学学部の大会では、例年通り講習の日程が組まれております。

8月に入ると、姫路で開催の学校剣連大会には、大会前に1日半の審判講習会が組まれました。また和歌山市での中体連による中学校大会でも同様な講習が行われます。

最低1日半の審判講習日程は、標準スケジュールとして、全剣連が設定したものです。これまで、他の科目を含めた盛り沢山の科目の中で審判講習が存在する例が多いのですが、これでは効果が不十分なことが痛感されました。まずは受講者を資格ある適当な人数に絞り、実地の演習に時間をかけ、事後の評価を行うことまで含め審判技術を受講者に定着させるためには、この程度の時間を要するとの結論を得ております。

すでに6月の関西学生連盟の講習会に続き、7月以降には、7月20日から、神奈川剣連での講習があり、秋には沖縄県、山口県、茨城県での計画も決まっています。これらの講習会は地元剣連主催、全剣連後援の形で行い、全剣連は講師の選定、派遣など所要の援助を行います。講師要員の都合が付く限り、全剣連は各地の要望に応えて行く方針でおります。

中堅剣士講習会での指導風景

中堅剣士講習会での指導風景(撮影:武安義光)

審査の改善のための事後評価を充実させる

本年5月の一連の審査に当たっては、剣道形の評価方法や、審査員の資格など幾つかの面での改定を行いましたが、全般的には順調に終えることができました。その経過を振り返り、今後の審査会の実施に当たって改善すべき点を修正していくことにしています。

最も重視すべき審査員の評価結果に対しては、綿密にチェックしました所、満足できない点が見出だされました。これらは不適切とまでは言えないもので、従来は見過ごされてきた程度のものです。これらの結果を集約し6月20日に開催した審査員選考委員会に報告、検討を加え、今後の選考の参考にして貰うことにしました。

また審査業務を適正に行っていくための審査会場における会場管理、審査業務運営などの責任体制を明確にしていくこと、審査員の責任、遵守事項の明文化などが必要と感じられますので、早急に作業を進めていきます。

剣道指導法・審判運営の手引きなど講習内容の具体化進む

普及と教育を多数の対象に広めていくために、基本となる考え方と、これに基づく実務的手引きの整備が必要です。

昨年来指導部会では、「剣道指導法」の策定を急ぎ概成の段階に至りました。内容は、初心者・初級者・中級者・上級者ごとに、準備運動、整理運動、礼法、基本動作、応用動作、基本稽古、稽古の項目ごとに、指導内容、指導上の留意点をまとめています。近く講習の手引きとしてお目見えすることになりましょう。

つぎの「審判運営の手引き」は、「試合・審判規則」の実務的解説書となるもので、規則改定後策定が期待されていながら、実現を見ていなかったものです。この文書作成の過程では、解釈の不明確であった点が議論されました。重点として進めている、審判技術の向上のための講習や、審判法研究に当たり、良き参考資料になることと思います。

このほか進行中の剣道形の手引きの策定は、委員の努力により、原本に忠実に解釈を統一する方向で検討が進んでおり、近く成案に至ることを期待しています。

このような資料を纏めることは、従来の剣連界では、手が回らない領域で、遠慮なくいえば遅れていた分野です。ようやくいくつかの大事な分野で作業が行われ、具体化の運びになっていることに、大きな効果が上がることと期待しています。

剣道を通じて問題児を立ち直らせたある高校での嬉しい話

去る6月28日夕方NHKで放送された特報首都圏「前に向かう心」は、普通高校を失敗したり、中学校で不登校だったりした生徒が多い普通サポート校といわれる埼玉県の定時制高校東京西武学館での話です。この学校の鳥山先生は平成3年、生徒に夢を与えようと剣道部を造り、生徒を自立させ苦しみを味わわせ、自分を信じて受け身にならず前に出て打ち込む剣道を指導し、自信を取り戻させた一生徒の記録を中心にNHKは紹介しています。

いうまでもなく、われわれは剣道を通じての心身の鍛錬、人造りを目指しています。剣道が果たした社会的役割の見事な事例を見せて戴いた報道、指導者の方、また申すまでもなく達成されたご本人にお礼と敬意を表します。なお剣道部顧問の鳥山先生、段は初段を持つだけとのこと。テレビでご覧になった方も多いことでしょうが高段者の皆さんのご感想はいかがでしょうか。

全日本学生剣道連盟設立50年に寄せる

昭和27年の講和条約発効後に発足した剣道団体がつぎつぎと50周年を迎えます。全日本学生剣道連盟も、記念行事を7月7日より行いました。所感の一端を述べます。

明治の頃からの長い歴史を持つ学生剣道は、昭和に入り隆盛を極めましたが、戦時の軍隊への学徒動員、軍需工場への勤労動員により活動がほとんど止まり、さらに敗戦後の占領政策による学校での剣道禁止により、致命的な打撃を受けました。

しかし受難の10年を終えて講和条約成立から立ち上がり、学生剣道連盟が発足しました。そして多くの困難を克服して、学生剣道の普及と発展を促進し、日本剣道の盛況に大きく貢献して来ました。戦後の剣道史を顧みて、その功績は評価すべきで、活動を支えてこられた多くの先人に深く感謝の意を表すべきと考えます。

そしてこれからの時代、経済的に豊かになり、社会環境や諸条件が大きく変わった今後の社会に対応して、健全な学生剣道を育てる役割を永く果たしていって欲しいと念願します。

大学学生の剣道の取り組みは、いくつかに分かれましょうが、卒業後、剣道に関係のない職業につく大部分の学生が、剣道を通じて最善のものをいかに得られるようにするか、ここに学生剣道がめざす最大のものがあろうと思います。そしてここで重要な役割を持つのが剣道部で、剣道を通じてお互いに切磋琢磨し友情を培う部生活が、他の分野での剣道活動では及ばない人間形成を実現する場であります。学生連盟が最も重視すべきはこの認識でありましょう。

つぎに剣道の指導など、剣道を生活の中心とした職業を目指す学校があります。学生界はこれまでも日本の剣道そのものを支える人材を養い、供給してきました。この領域では今後とも、高い水準の剣道の伝承、発展に貢献する役割を果たして欲しいものです。

しかしいずれの分野でも、日本の歴史と文化に培われた剣道の良き伝承を果たしていくことは学生剣道の共通課題であって欲しいものです。そして真の日本社会の発展を担う人材を、剣道を通じて行う人造りの役目を、名実共に担って戴くことを衷心より期待するものであります。

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