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平成14年9月号 第182回

酷暑の終戦記念日を迎える

57年前の8月15日の東京も今年のような暑い日だったようです。軍務に服していた私は当時南方の島にあり、日本からの電波を通じて玉音放送を聞いたのですが、その時の鮮烈な印象は忘れ難いものとして残されています。

個人的思い出はさておき、敗戦・連合軍による占領で、日本社会と日本人は大きな変革を迫られました。その中で戦時中もてはやされてきた剣道は占領政策の中で厳しい弾圧の対象にされました。戦争に生き残った剣道人も当時の生活難の中、多くの苦労を重ねた筈です。しかし剣道は生き抜くことができました。講和条約の発効により独立を回復した昭和27年から表での剣道復興が進み、全剣連、各剣連も設立され本年50年を迎えることになりました。立ち直っての剣道復興の50年は祝うに足るものと信じ、全剣連も祝賀の記念行事の計画を進めています。

瀕死の状態にあった剣道を持ちこたえて下さった多くの剣道人、また苦しい生活事情の中、剣道の諸活動に尽力された先人の労を想起し、感謝の意を表することに始まり、現状を一般に見てもらう配慮も加えつつ、50年の歴史に一区切りをつける事業を行います。

そして人も入れ替わっていくこれからの時代への剣道の発展に向って、新しい努力を進めることで、ポスト50年への道を歩んでいきたいものです。

戦前の剣道・現在の剣道

50年を経て最も喜ばしいことは、剣道自体は受難の時代を経ても、今も昔と同じように行われるようになったことです。私共戦前派にとって何よりも幸せなのは、昔やっていた剣道を変わることないやり方で現代も稽古できることです。その意味では剣道は昔のものが大筋では復興したといってよいでしょう。しかし戦前の剣道と現在と同じかというとそうもいえないと思われます。

打突部位や稽古のやり方は同じでも、試合のやり方やこれに対する捉え方、社会・学校などでの扱い、修業を貫く考え方など種々変化が見られることは事実です。その意味では同じ所もあれば変わった所もあり、昔に比べて良くなった点、悪くなった点があります。

今後の発展を考える際、これらの比較をしながら実証的に研究を進めることは大事だと思います。そこで全剣連は事業として、剣道史や、全剣連五十年史編纂を進める一方、戦前の映像などを集める博物館構想にも取り組んでいます。

一方、具体的資料に乏しい戦前の剣道に比べ現代の剣道の実態を究明していくことも大事で、取り組みを進めます。

この際、現在なお健在の戦前派の方々の記憶・記録を集めていくことも進めています。

年末に出す『剣窓』特別号には長老の回顧を含めた座談会を計画します。戦前の大きな剣道イベントとも言える昭和天覧試合に出場された剣士の記憶も甦らせてもらいます。例えば『剣窓』本号に昭和15年の紀元2,600年奉祝の天覧試合の出場経験者である阿部三郎範士に登場して戴き、次号には山形高校生徒で代表になられた吉村さんをお願いしています。以上は事業の一端ですが、これらを口火に、資料の発掘を進め、戦前・戦後の剣道の比較の研究を進めたく考えています。

以下夏に駆け歩いたいくつかの行事について記します。

活発な豆剣士が武道館を埋めた全日本少年剣道錬成大会

7月27・28の両日の日本武道館は全国各地から参加の少年剣士の活気で盛り上がりました。この大会に集った道場や剣道クラブで編成した5人1組の小学生チームは初日449、2日目は464、合計913チーム、約4,600名の少年剣士の参加で賑わいました。

何年か前の1,000組を超す参加があった時代よりは減少しましたが、開会式で日本武道館の道場を埋めた多数の少年剣士の姿は剣道人口の減少などを忘れさせ、頼もしい限りです。

この大会の勝負には、試合でのポイントだけでなく、切り返し、基本打ちの演武の評価で決める方法を取り入れているのが特色です。

各チームに付き添っている指導者の方々の平素のご努力に敬意を表するほか、応援の家族の方々の力によって、どうか剣士たちが健やかに成長し、目前の叩き合いや勝負にこだわることなく、一生できる剣道を実践していくように成長し、日本の社会を、また剣道界の将来を支えてくれる事を願わざるを得ませんでした。

物足りなさが残った全国高校剣道大会

今年の高校総体は茨城県で開催、剣道の会場は県西の下館市。栃木県に近い歴史ある中都市郊外の新しい立派な体育館です。

文字通り厳しい各県での予選を突破して全国から集った剣士たちにより、3日間の熱戦が繰り広げられました。私は女子の試合の一部しか観戦できませんでしたが、全剣連側から参加して全体を見た役員の意見では、大会内容にあまり良い点がつけられませんでした。打たれまいとする無理な防御姿勢、すぐくっ付く試合展開、一本とっての時間稼ぎなどばかり目に付く競技性に偏った内容に終始したとの印象が主流でした。

そこで記録に残るのは、一本取られて取り返す、二本目を決める厳しい展開がなく一本で決まる試合ばかり。時間を悪用する展開が続き、高校生らしい伸び伸びとした試合が少なくなっています。

警察大会などで採用され、復活しつつある一本勝負にした方が良い結果が出るのでは…との声が高まってくるでしょう。

こうやって勝ち抜いてきたからここに出られるのだということかもしれませんが、勝ち負け偏重の実体は考え直す必要がありましょう。審判も十分に対応しているとはいえませんが、何といっても各校の指導者の意識の問題が重要でしょう。

一方彼等はこれからの剣道界を担うべき、金の卵ですが、大学や警察のスカウト活動が目立つ大会会場であって欲しくないものです。

多数の熱心な参加者で競う東西の居合道地区講習会

居合道の地区講習会の特色は、まず各地からの多数の参加者です。6月の岡山市での西日本地区講習会に続き、7月13、14日の埼玉県秩父市での東日本地区講習会も400名を超す参加者で埋まりました。次には高段者の参加が多いことです。秩父市の場合、範士8名を含める37名の八段取得者が集っております。大勢の講習生を相手にする講師も大変ですが、熟錬した指導で効果を挙げたように見られました。

ここは高野佐三郎氏の出生の地、会場の体育館は、次に予定される埼玉国体の剣道大会会場にも決まっています。

新しい顔ぶれの台頭が目立った全国家庭婦人剣道大会

これまで大都市地区が優位を占めていた大会でしたが、8月6日に開催の第19回大会ではガラリと変わって、珍しい顔ぶれが上位を占めたのが今回の特色でした。東京A・B両チームが予選で退き、前回優勝の福岡県もベスト8に留まりました。

ベスト4に残ったのは長野、岡山、高知、栃木と、これまで上位進出の少ないチーム。

その中で二位2回の実績のある岡山県が初優勝しました。

今年は大将の段位制限を外したため、多くの六・七段剣士が出場、試合内容充実に拍車を掛けました。レベルの向上のほか、起用された女性審判員も、まずまずの実績を示し、今後が楽しみな家庭婦人大会となりました。大学剣道部出身の選手が増え、一方いわゆるママさん剣士の出場の道は狭くなってきたのは、止むを得ない所でしょうか。

33カ国からの参加者を集めた外国人サマーセミナー

恒例の夏の行事、外国人指導者講習会は7月26日から、8月1日まで埼玉県北本市の解脱研修センターで開催。最近の選考方針により数名を除いて初参加。

17歳のドイツ・サブリナ嬢を最年少、59歳パナマ・ノリエガ氏を最年長とした53名(内女性八名)が猛暑の中猛勉強をして7日間のコースを終了しました。

前記のパナマの他、仏・伊国境の小国アンドラからの参加もあり多彩な顔触れでしたが、この頃常連となっているロシアからの参加者が、ビザが取得できず欠席となり、なお残る障害を実感させました。

最終日のサヨナラパーティーでは、それぞれの宿泊室ごとに隠し芸を披露、賑やかに親睦を深めました。

さて、佐藤(成)講師以下には大変なご苦労だったと思いますが、受講者の熱心さに講師は暑さを忘れて努力戴きました。

この講習には、国際委員会委員のほか、これまで海外で指導に当たられた方々も多数応援戴き一段と成果が挙がったと思います。

さてこの講習会、剣道の海外普及の観点のみならず、関係国の日本理解の増進にも、大きな効果を収める事業となっていることを自負しています。なお例年のことながら行き届いたお世話を戴いた解脱会の皆様、また補助を戴いた小型自動車振興会には改めて御礼申し上げます。

全日本東西対抗剣道大会出場選手決まる

第48回目を迎える東西対抗剣道大会、今年は静岡市の西の藤枝市に新設された静岡県武道館で9月29日に開催されますがその出場選手が東西の選考委員会で決まりました。全剣連設立50周年を記念して、各剣連より実力選手を推薦してもらい、選考を行ない、両軍望ましい顔触れが名を連ねました。35名の選手枠の中の偏りを防ぐため、一剣連からの選出を5名までに抑え、できるだけ多くの剣連からの選手が出られるための配慮も行ないましたが、結局東日本から3県、西日本から4県が選ばれずに空白が残ったのですが選考の厳しさから止むを得ぬ所でしょう。全剣連設立50周年記念の代表的大会らしい見応えのあるレベルの高い試合が展開されることを期待いたします。

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