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平成15年2月号 第187回

武安義光

新しい年を迎えて前進開始

雪に見舞われたり、厳しい寒気に襲われた年末、年始でしたが、皆さんは元気によい年を迎えられ、すでに寒稽古を終えられた方もおられると思います。全剣連も遅まきながら始動、正月気分を吹き飛ばして、まずは残された本年度事業の段取りを進め、また新年度に向かっての構想づくりに取り組んでいます。50周年行事は、節目の式典を終えましたが、行事では、1月18日の「剣道文化講演会」が残されております。またいくつもの会議での審議を経て、年度末の事業計画、予算を固め、来年度の事業に取り組みます。

年頭の新聞論調から剣道界を顧みる

ここで新年の新聞に目を移します。世界情勢では、イラクに対する軍事行動が行われるか、その場合の日本の取るべき態度、また北朝鮮の核武装への対応などが、当面の課題です。国内では見通しが付かない経済不況からの立ち直りはどうするか。これが新年論調の主な話題です。

(1)日経

「ただ待つだけでは再生はできない」と、実践と行動を説くのが 日経です。バブル景気が崩壊して10余年の日本の経済が一向立ち直れないのは「この歴史的な大試練に積極的に立ち向かおうとする、気力、気迫が欠如している」ことにより、政治家と官僚には「使命感」が、企業家には「企業家魂」が、一般の人々には危機に挑戦する「なにくそ精神」と言えるものが希薄であり、これらが無気力と、問題の先送りの風潮を生んで来たと説きます。そして危機に対処する人材、技術力、貯蓄などの資源は国内に十分あり、ないのは「それらをフルに活用しようとする政治の意思であり、官僚の使命感であり、企業家精神、一人一人の決意である」「たとえ荒削りであって実践こそが肝要である」と手厳しく、明快です。

(2)産経

さて同じような類型といえる産経は、「非行動主義から決別」を説きます。幕末の鎖国に象徴される「非行動主義」の江戸日本が、よくも行動的な明治日本に転換できた精神を想起し、実行することを訴えます。そして国際的にも大きな選択を要する現在の情勢に鑑み、国家の戦略的ありようを磨きあげることが必要で、まず「どういう日本でありたいか」つぎに「日本の国または国民が当事者意識を取り戻すこと」であり、日本が他者依存の「非行動主義」を放棄する選択の年とすべきと説きます。

(3)毎日

さて具体的方策について毎日は「自然体を身につけよう」という少し変わった提案で、素直になれば問題は解決できるとし、「普通に考えておかしいことを一つづつ直していけばいい」。例えば、借金をこれ以上増やせないから道路造りは少し待てや、年金は集金に見合って減らすので我慢してください。企業も月給を下げるのだから、公務員も下げさせて貰います。など」具体的で、最後に、漸近でわれわれが雇っている政治家に、政局より、再生への共通認識を持つことを期待しています。

(4)読売

さて経済問題に対して明快なのは読売で、昭和恐慌再現の危機にある現状において、財政再建より当面は景気対策優先への政策転換を主張します。また国際面では、テロに対応するには、集団自衛権についての、平和ボケの議論と一線を画した行動を取ることが必要で、国際的には非常識でしかない解釈を現実的なものに直すべきとします。

(5)東京

以上積極姿勢の意見に対し、東京は教訓的で、軍事的勝利で尊敬を勝ち取った国はかつてないと米国の政策を戒め、世界の貧困の解決が優先すべきで、日本は世界の貧困対策にもっと力を入れるべきとします。

(6)朝日

朝日も力で外交に臨む、米国の在り方を批判する姿勢で、最近の日本のナショナリズムの気風に危惧を示します。そしてアニメ映画「千と千尋の神隠し」を引用して、必要なのは、一神教の対立を生んでいる世界に、夛神教の歴史を持つ日本は、新たな「八百万(やおよろず)の神」の精神を発揮し、複眼的な冷静さと柔軟さを忘れぬことを説いています。

いずれも傾聴すべき意見ですが、経済の問題はさておき、剣道界の現状は、日本の経済事情に見られる深刻さはないとしても、改善、改革を要する問題は多く、取り組みに当たっては、(1)(2)に掲げた諸紙の意見をかみ締めるべきでしょう。

出版関係記念事業は進捗中

50周年記念事業としては、出版関係が残っていますが、剣道の歴史は印刷中で近々完成します。全剣連五十年史は、編集も終わり に近付いていますが、内容あるものにしようと、主文の部分は各役員が分担して取み、私もかなりの部分を引き受け、暮れ、正月はねじり鉢巻きで取り組みました。多少遅れ気味ですが、充実したものにしようと、執筆者の督励もしています。ご期待ください。

高段者名簿は5年前と同じく、七段以上の方を収録しますが、掲載される人数は、前回を上回る1万4千人に及ぶ予定です。すでに該当の方に照会が行っているはずですが、年度内完成の予定です。購入方についてもご協力戴きたく存じます。

多数の方にご協力戴いた記念募金

さて予定を上回るご協力を戴いたのが、記念募金で、昨年12月末を以て締切りとしました。個人として1,200人余りの方から総計1,780万円、法人63社から、430万円、総計予定額を上回る22,000万円の浄財を戴きました。これは構想としてお知らせしましたように、剣道発展に貢献された先人を記念する殿堂(仮称)の、レリーフの作成費や、映像博物館の充実など、後世に残るものに使っていく予定です。改めてご協力にお礼申し上げます。

平成14年の剣道界を振り返って

(1)まずは昭和27年の、日本の独立回復直後に発足した、全剣連や各地の剣道連盟が、昨年次々と50周年を迎え、祝賀行事が行われたことをあげます。

(2)剣道人口の増減の有力な指標である、初段取得者が10年ぶりに5万人の大台を回復しました。

(3)称号・段位制度の手直しは、剣道六段以上の剣道形の審査を別立てで行うなど改善を行うほか、日程調整など受審者の便宜を考慮しつつ審査の適正化を進めました。このクラスの受審者は過去最大の12,720人となり、また筆記試験を加えた教士審査も定着しました。

(4)剣道指導法の講習要領、「剣道試合・審判・運営要領の手引き」、「木刀による剣道基本技稽古法」など、指導指針、マニュアルなどの技術資料が続々と完成しました。

(5)綱紀委員会審理。2人の処分を上申、3人を審理中。

(6)各種演武を交えて、50周年記念大会を実施。30年ぶりの選抜剣道八段優勝大会では、末野八段が優勝。

(7)全剣連50周年記念式典で、40年以上、週数日続けられている稽古会6件、剣道界直営のものを除き、振興に貢献してきて大会8件を表彰。剣道界を育ててきた功労者938人(一部団体を含む)に感謝状を贈呈。またこれまで試合などで抜群の成績を収めてきた宮崎正裕氏を特別表彰。

(8)出版・広報事業で、10年ぶりのポスターを募集、優秀作品を表彰。これによる絵葉書も作成。「剣窓」記念特別号を刊行。

(9)各剣連で50周年記念出版が行われ、過去の資料の掘り起こしや整備が進んだ。

(10)4年前にスタートした、全剣連ホームページは、次第に充実され、利用件数年間2百9万件に達した。

この年の物故者

剣道の発展に貢献して来られた次の方々が永眠されました。謹んでご冥福を祈ります。

山根幸惠氏(鳥取県剣連会長・元審議員)   1月24日
若松武彦氏(大分県剣連会長)   3月15日
小林盛夫氏(人間国宝、全剣連剣道功労者)   5月16日
大西友次氏(元島根県剣連会長、剣道功労者)   8月07日

断片

(1)1年前の「まど」で紹介しました、剣道人松本宜之さんが責任者となり開発した、ホンダの小型自動車フイットは、その後ますます販売好調で、昨年の小型自動車販売でトップになり、34年ぶりにカローラの王座を奪ったことが、発表されました。ホンダが、強豪トヨタから面一本を取ったことになりました。

(2)本誌などの編集担当、事務局の草野孝紀主幹代理が、念願かなって居合道六段に合格しました。今後も文武両道でのご精進を願います。

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