琵琶湖のほとり風光明媚な環境に位置する滋賀県立体育館で、9月28日に第49回全日本東西対抗剣道大会が開催されました。この大会毎年全国各地を巡回する、全剣連の重要大会ですが、東西の境に最も近く、日本の重心といえる滋賀県で今まで開催されたこてがなかったのは意外とも感じられました。
この大会は東西両軍女子5名、男子35名の剣士による対抗高点試合ですが、最後の範士2名以外は各剣連から推薦された剣士を、東西の選考委員会で選考し円熟、かつ油の乗り切った日本を代表する青壮年剣士の試合です。
現在所属の剣連により東西に分けておりますが、今回の選手の出身地を見ると、東軍の30名の剣士の中には、10人の西日本出身者がおり、逆に西軍には東日本出身者が1名であるのを見れば、西日本特に九州が、日本の剣道人材の供給源になっている実情が窺われます。
さて午前10時すぎに始まった女子の部に続く、男子の部の試合は西軍が4人の六段選手の試合で全勝、東軍がこれを追う展開を見せました。東軍が盛り返し、14人の所で同点となりました。
これに続く七段の後半部分の試合は、例年とかくダレた試合が見られる部分ですが、今回は充実した熱戦の連続で大会を引き立ててくれました。ここでは東軍がリードして、高いレベルの見せ所となる八段の部に引き継がれました。
見応えのある試合が続きましたが、今度も西軍が6連続の勝ち星を挙げ、昨年に続く勝利かと見られましたが、六将から東軍が奮戦、とうとう大将まで逆に6連勝、東軍の勝利に終わりました。このような対抗試合でも流れが勝負を左右するのを示しました。全体をふりかえりますと、前座の女子の試合、またとかく堅くなるのか動きが冴えない六段にはじまる前陣の試合で好試合が続き、その後の七段の試合の後半も盛り上がり、最後の範士の試合で締めくくるまで、勝負の面でも興味ある充実した大会であったと思います。詳しくは別項にある観戦記などでご承知ください。
この大会では、6人の個人優秀選手のほか、ふつう行われない優秀試合2組に対する表彰も行っています。いずれも満場を感服させる内容のものでした。
また観客席を埋めた観戦者の多くの地元の学校生徒にも感銘を与えたことと思いますし、運営に当たられた地元剣連の努力も報いられた久し振りに東西対抗らしい後味の良い大会でした。
剣道界の重要行事であるこの大会に際しては、全剣連の役員、審議員、相談役などが全国から参集、観戦戴きます。執行部は大会前日に、この機会を活用しての相談役会、審議会、理事会を開催し、近況報告や懇談、ご意見拝聴を行い、また所要の審議を願っています。
久方振りの相談役会でのご意見の一端を披露しますと、最近の大会、警察大会や学生大会を見ると、勝負にこだわり過ぎた内容低下が目に余るものものがある。剣道の前途が心配に耐えない。また剣道界復興の50周年行事が各地で行われたが、新たな発展を目指して努力を要する。また表彰にしても、過去の功労者への顕彰は大事だが、いつまでもそれだけに目を向けるべきでない。新しい時代の剣道の発展に向かって地味な努力をしているものにもっと日を当てなければなるまい。などのお話が耳に残りました。いずれも難しい問題ですが、執行部として取り組むべきことと感じました。
新しい体制のもとで編成を進めてきた、専門委員会の委員の顔触れが出揃い、去る9月27日の理事会で決定を見ました。内容は本誌の記事でご覧戴きますが、これから次々と委員会の活動が始まります。このうち広い範囲の仕事に対応する普及委員会は、まず強化活動の展開、講習活動の充実方策などに取り組みますが、その進展に応じての組織の微調整が必要になるかと思います。また専門委員会を廃止した、情報システムに関する業務の進め方も同様です。新しい領域に取り組む長期構想企画会議はまずはこの顔触れで仕事に取り組んで貰うことを期待しています。
10月7日には新しい顔触れを交えた称号・段位委員会を開催、当面の問題の他、課題とされて残されている各剣連に委任されている五段以下の段位審査に対する検討の進め方を議題にしました。また新たな組織として設けた事業関係調整会議は8日に第二回会議を開催、現業関係事業の担当役員連絡会議はすでに月2回のペースで動いており、効果を挙げつつあります。また9日には試合・審判委員会、10日には杖道委員会、また23日には普及委員会と開催が続きます。専門委員会については取り扱う問題を明確にし、検討内容の進捗状況に応じて会議を持つことにし、漫然と開催することによる経費と時間の無駄のない運営を行っていくことを要望しています。
去る9月19日から3日間、山形県寒河江市の市民体育館での表記講習会、正式にいうと「第48回社会体育指導員(初級)養成講習会」という長い名前です。これまで資格取得者が一桁の空白県といえる山形県での講習会で、80名の熱心な受講者を集めて成果を収めることができました。実は山形県での開催計画は以前に一度、4年前にあったのですが、申し込みの受講者が30名に満たず開催を見送ったことがあります。
この前例を踏まえて今回は、山形県剣連でも万全の準備で取り組んで戴きました。参加者のうち34名が教員の方々であったことは、恐らくこれまでの開催で見られないことであり、今後のこの地区の普及活動にも大きな効果を及ぼすものと期待されます。これは県教育委員会の後援も得ての勧誘も効果があったと思います。一方講習会に参加しやすくするもう一つの条件としての参加経費があります。今回は会場に付設されている実質的な宿泊施設の利用が可能であったことと、全剣連が行った料金改定の効果も挙げられましょう。内容は講習参加料を値下げし、26,000円を20,000円に改めており、(65才以上の方へのシルバー割引では18,000円)この適用は本年度からですが、これらを含めて今回の参加に要する費用は、30,000円を少し超えた程度の、かつて無い低い料金で開催できたのは、盛会をもたらした一因と見られます。
私も講習科目になっている朝、夕の実技実習に参加しましたが、平均して打ちもしっかりしており、参加者の質の高さを実感しました。剣連と受講者のご尽力に敬意を表させて戴きます。
第6回を数えるこの研修会、今回は全国各地からの26名中22名の新しい八段の研修生の参加を得て、10月4、5の両日、勝浦市の日本武道館研修センターで開催しました。研修員の方々は全剣連主要大会の審判員ともなる基幹要員でもありますが、今後各地での講習講師として指導に当たって戴くことを期待しています。これら八段の方々が審判技術向上のため努力される姿は、必ずや全国至る所での試合審判の内容向上に繋がるものと確信しています。
毎年の各道の審査が立て込む季節を迎えます。実施側では、今年から改められた審査規則による審査の定着を望んでいます。また今回は、11月からの七、八段審査の審査料の低減の恩典が受審者に及び、負担の軽減となる初めての審査です。全剣連としてかなりの決意を以て、受審者の便を図ったことを理解して戴ければ幸いです。
(1)セルビア・モンテネグロで国際武道フエスティバル開催
9月6、7日にセルビア・モンテネグロで国際武道フエスティバルが開催された由で、これに関する駐在大使館より外務省への報告の中で、この催しに約2千人の観客が集まったこと、またテレビなどマスコミの反響もあり、日本文化普及の効果が大きいこと、また剣道が精神面をも重視していることが理解されつつあるとしています。そこでこの面への協力が、同国の人作りへの援助にもなることを述べ、剣道具寄贈などのこれまでの援助に謝意を表されたほか、今後一層の協力を要請されています。海外普及の努力に関する嬉しい話題です。
(2)寒河江市郊外にある名刹慈恩寺を訪ねる
講習会の傍ら、宿の人に教えられ郊外の慈恩寺に参りました。創建は1千年余り前の平安時代、当地に見えた行基菩薩の意見具申により、勅命で建立された由。その後朝廷とも繋がりを持ちつつ権力者の保護を受け、明治に至った歴史ある寺院で、山の懐にある堂々たる国の重要文化財の本堂や、仏像を残しています。関東が荒野であった時代にこの地区が京と密接な繋がりを持つた歴史に思いを馳せる一時を過ごしました。