文化の日の選手権大会が終わると、全剣連は秋の審査会の月になります。剣道八、七、六段、居合道七、六段、さらに教士、錬士の審査が加わります。このところ審査会へ挑戦する人は増加傾向にあり、一昨年の受審者合計は1万2千人台で過去最高を記録しましたが、平成15年の受審者総数は1万3千人を超え、さらに記録を更新しました。これは全国の剣道愛好者、特に壮年から上の年代の、剣道に対する意欲の向上を反映したものと受け止めています。
秋の審査会をとっても、受審者数は最高となり、東京での剣道八、七、六段審査会のほか、休日に行う名古屋での六段審査会を含め、各審査会の受審者はいずれも1千人を超えました。審査員、立ち会いを含めた会場の係員、運営側の全剣連担当者などそれぞれ努力願って整然と実行されました。皆さんの尽力に感謝しております。
審査の内容に目を向けます。合格率は全般に低下しております。剣道七段は10%余、名古屋では9%台となり注目されました。合格率が剣道に比べて高かった居合道も、厳しく審査されました。称号審査では、各剣連から小論文を付して推薦される錬士の審査で、小論文の不合格者がかなりの数になりました。これは採点を厳しくしたということでなく、採点者がどうにも合格にできない不出来のものが多かったことによります。
今回は外国人に受審しやすくするため、錬士審査に英文での受審を認めました。海外から三道で24人の申し込みがありました。半数は在外の日本人などの日本語のものでした。英文答案については採点者を追加して審査した結果、杖道1名を除いて合格、門戸開放の結果はまずまずでした。
今後解析を要しますが、概観して審査会場、審査員による不均衡、偏りはこれまでに比べて少なく、改善が認められ、審査員にも努力の跡が見られます。注目される剣道八段審査の合格者18人で春とほぼ同じで相変わらずの難関です。年齢別には、40代7人、50代7人、60代4人で、バランスのとれたものとは言えましょう。
さて段位審査の原点は、評価により、実力のある人を見出すことです。基準を無視していたずらに合格者を増やすことは、段位の権威を下げ、かえって真面目に取り組む人に対して励みになりません。今回の一連の秋の審査は、たとえ合格率は低くても、この目標に一歩ずつ近付いていることを感じさせます。
審査に挑戦し苦杯を喫した5千人を超える愛好者の皆さんは、是非今回の経験を生かし、正すべきは正し、鍛えるべきは鍛えて捲土重来を期して戴くようお願いします。
審査の内容向上を図るため、全剣連は審査会ごとに事前に審査員に対する研修会を行っています。ここでは、これまでに改正、あるいは増補された規則、細則などの内容、改訂の趣旨を審査員に確認して貰うこと、また最近の審査会の会場別や個人の配点を含めた審査結果、データをお知らせし、執行部としての評価も加えて参考にして貰うことなどを内容としています。
夏の福岡での七段審査会に際し、研修会で私からお願いしたことについて、10月号の「まど」に記しました。要は七段位は一般人にとって最高の段位であり、各地で指導などの重要な立場にたつものであるから、審査に当たりただ六段の次ということでなく、八段の手前の段位という見方で、要は七段の権威が高まるような審査をお願いしたいということです。
つぎに経験的に積み重ねて行われてきた手法で規則化していたこれまでの規定を改め、平成12年度に施行された新規則では、段位に基準を設け、審査は基準によって行うことを大原則としています。その基準は規則、細則、実施要領などに記されていますが、これはその性格上、どうしても抽象的のものになります。そこでこれを補って的確な判定を行うところに審査員の役割があります。この判定を審査員自身の判断で基準に則して行うことが期待されています。
さて以上のほか、秋の審査会で審査員に要望したことを述べます。まず審査を基準に準拠して行うべきとすることの、裏側の意味も汲み取って実行して欲しいということです。これは基準以外のものを取り入れて行ってはならないことです。
そのため何に気をつけるべきでしょうか。排除しなければならないものの代表が「情」です。情の字の付くもの、感情、同情、私情などを排除しなければなりません。特に悪いことに情実があります。
一方指針とすべきものは「理」です。これには理念、理合、剣理、道理などがあります。同じ音でも「利」はいけません。
以上をことわざ風に纏めて見ます。「審査の判定においては、情を排除して当たり、理に徹して行うものとする」となりましょうか。
12月2日に、表記大会が済寧館で開催され参上し観戦しました。この大会は皇宮警察本部が主催されたもので、天覧の大会としては、4年前の陛下御即位10年を奉祝しての大会以来のものです。大会は皇宮警察の職員を中心として行われ、これに他の警察剣士を配した特別試合が加えられていました。最後を飾る特薦試合では2003年世界大会女子優勝者の馬場選手と警察大会優勝の久木山選手、全日本選手権大会優勝の近本選手と警察大会優勝の佐藤(博)選手という豪華な対戦で幕を閉じました。両陛下は最後の1時間余りの試合をご熱心に観戦されました。内容的にも立派に行われ、このような大会を計画、実施されたことは、剣道界として大変喜ばしいことだったと思います。
高知県で初めての表記講習が、12月5日より3日間、高知市の厚生年金施設で開催され、55人が熱心に受講されました。充実した内容でしたが、成績は厳しく評価され、保留が多い結果となりました。四国各県の初級講習もこれで一巡したことになります。
一昨年から取り組んできた日本剣道形の解説書の作業を終えたのを受けて、策定に取り組んだビデオがようやく完成、近く発売されます。参考にして戴ければと思います。
(1)石原忠美氏に特別功労賞を贈呈
11月に特別功労者に推戴された、石原忠美氏への顕彰状ならびに金杯贈呈のため、12月5日に岡山に参りました。地元剣連の役員以上の方がお集まりの盛大な贈呈式が行われ、地元の皆さんにも喜んで戴きました。
(2)岡山から高知への路線で景色を満喫
岡山市での行事を終えた足で高知の社会体育指導員講習会に向かいました。瀬戸大橋を渡り、四国に入って土讃線でたどる四国山脈を横断して吉野川沿いに進む山中の大歩危(おおぼけ)、小歩危(こぼけ)辺りの山脈の景色、奇岩、刻々変わる水の流れの美しさに見とれました。世界的大工事の瀬戸大橋の上から見る海の美観は著名ですが、これに続く四国山脈横断の土讃線の鉄道は、昭和10年代にやっと完成した難工事ですが、幹線鉄路として日本有数の景観を提供してくれ、時の立つのを忘れた2時間半の旅を楽しませて貰いました。
(3)剣道七段審査でおしどり合格
女性にとっての難関である剣道七段審査を見事パスされたのは、家庭婦人大会で東京都代表としてご活躍の荒武千賀代さん。普及委員会委員でもあります。今回は夫君の荒武和洋さんも同日合格され、めでたいおしどり七段の誕生となりました。
(4)年末と新年の挨拶を併せて
新年号といっても、原稿に取り組んでいるのは師走の初旬。新年のご挨拶は巻頭の文に譲って、普通の月なみの原稿にしました。ともあれ旧年中のご支援を謝し新年もよろしくご愛読、ご鞭撻のほど願い上げます。