厳しかった夏も遠ざかりようやく秋を迎えて皆さん一息入れられた頃でしょう。この夏はマスメディアはオリンピック一色で、視点がアテネに釘付けにされました。居ながらに競技の状況を見られる技術進歩に改めて感服しますが、これには日本の技術が大きく貢献しています。戦前の幻になった昭和15年の東京オリンピックで、世界に先駆けてテレビ中継を実現しようと先達が必死の努力をしていたことが思い出されます。
名古屋で10回目を迎えた第43回大会は、9月5日名古屋市中村スポーツセンターで、全国からの代表64剣士を集めて開催皇后盃獲得を競いました。10回以上の出場を誇る3人のベテランから4名の高校生にいたる15才の年齢幅のある選手たち、初出場が3分の1の21名という、予想の難しい接戦が期待されました。
第1回戦から激しい角逐が見られ、昨年も指摘した全般レベルの向上を実感しました。そして実績のある選手が勝ち進む中、ベスト8に高校生の菅原(北海道)が勝ち進んだのは見事、また日体大学生新里(沖縄)が、ベテランを倒して堂々と決勝にまで進出したのも殊勲、いずれも将来が期待されます。
決勝戦では強みを発揮して勝ち残った岡田(熊本)が、延長の末離れ際の面を決めて新里を下して初優勝したのは順当な結果と見えました。三位を確保した島村、久木山(警視庁)、ベストト8に残った11回目の出場の村山(埼玉)などのベテラン、3年前優勝を飾った堀口(山梨)、活気ある試合を展開した地元の石川(愛知)などの活躍も印象に残りました。
今回の大会、6人の女性審判員が参加しましたが、いずれも立派な審判を行い職責を果たしました。全般に審判の内容は良く、2、3の取り損ないが見られましたが、ミスは無かったという雛段の声でした。
さて次回大会から静岡県藤枝市で開催されます。愛知県剣連にはお世話になりました。全剣連は女子剣士の強化プログラムを近く発足させますが、女子剣道のレベルアップがさらに進むことを期待します。
ここで戦後の女子剣道の発達とともに進められた大会の沿革を振り返ります。実質的に戦後始まった女子剣道は、講和条約が発効して10年、やっと優勝大会を開く気運になりました。
10回目を迎えた全国都道府県対抗大会の付帯行事の形で、昭和37年に大阪市で第1回大会が開かれましたが、参加者は5県からの8名に過ぎなかったと記録されています。その後各地で女子剣道が盛んになるにつれ参加者も増加、昭和46年の第10回大会には参加者が37県の代表44名の選手の大会となり、はじめて選手権大会の名を冠しました。
都道府県対抗大会の前座試合で行なわれていたのを改めたのが昭和62年の第26回大会、独立して大阪地区で開催しました。そして選手に支障が多い5月開催を改め、第29回大会より9月開催として現在に至っています。
主な行事の開催地分散を図るため、平成7年の第34回大会から名古屋地区で開催することにし、さらに女子剣道の発展に対応して、平成9年の第39回大会から優勝者に皇后盃を下賜されて文字通り重みのある大会になりました。
そして次回から藤枝市の県立武道館で開催することになります。
夏は昇段審査のシーズンてもあります。全剣連の行なう六段以上の他に、各剣連でも五段以下の審査が各地で実施されます。新潟、札幌、福岡の剣道六段審査、新潟での剣道七段審査のほかに、居合道六、七段審査が鹿児島で、杖道六、七段審査が大阪で行なわれました。
受審者合計は3千人に上り、そのうち合格の栄冠を得た方は4百人にとどまりました。
新潟での剣道七段審査の合格率は、5月の名古屋審査に続いて10%を割る結果でした。七段には文字通り六段を一段上回る、技の冴えと鋭さが要求されるという観点で見れば、納得できる結果と思います。この中で2名の女性七段が誕生したのはお見事でした。
鹿児島での居合道審査、夏のはじめての大阪での杖道審査も、厳しい結果になったのが目立ちました。
不合格だった方はその原因に思いを致し、錬成を重ねた上で捲土重来されることをお願いします。
8月20日に、久し振りに中学校の全国大会拝見のため、小山市の県立県南体育館を訪ねました。全国からの500人の選手、応援、観戦の人々で埋められた会場での開会式で、何年も前にたしか京都市での大会に行った帰りに乗ったタクシー運転手さんの話を嬉しかった思い出として紹介し、道場外でも剣道の修練の結果が現れて欲しいと要望しました。それは「いろいろのスポーツの選手を乗せるけれども、剣道の選手が一番礼儀正しく、好感が持てるね」ということでした。この大会に集まった少年剣士が立派な日本人として育ってくれることを念じました。
年中行事として定着した写真コンテストの選考会議が、9月3日に行なわれました。応募数に陰りが見られた昨年でしたが、今年は回復し312点の応募でした。例によって最優秀賞以下10点の入選作品が決まりました。作品は本号に発表していますが、来年の全剣連カレンダーの紙面を飾ります。
選考会議後の雑談の際、「剣窓」9月号の少年練成大会を取り上げた表紙の写真にお褒めを戴きました。これは編集担当者が撮ったものですが、コンクールへの応募作品にはこのような大人数、群衆を扱った作品が見られません。案外の盲点があるものと思いました。
来年3月から9月まで「愛・地球博」をテーマに、愛知県の中部丘陵地帯で開催される万博で剣道デモンストレーションを実施する構想のもと打ち合わせを続け、来年8月31日に、「剣道フェスティバル」としてEXPOドームで実施する方向で固まりました。内容はこれから詰めますが、近県の少年の参加による剣道演武を極力取り入れ、国内居住の外国人の演武、その他彩りを加える行事とします。内外の観客に剣道の良さを理解して貰う構想で、加賀谷副会長以下の実行委員会で、愛知県剣連幹部の参加のもと準備に取り組んでいます。
(1)ギリシャの剣道事情
オリンピックに縁のない剣道もギリシャでも行なわれています。アテネから北に百50kmの都市ヴォロスに本部を置く剣道、居合道、杖道、なぎなたを含めた協会があり、欧州剣連にも加盟しています。
(2)全剣連ホームページの充実
広報活動の担い手として活動しているホームページの利用者は確実に増加しています。8月までの本年度利用件数は、ビッグニュースだった世界大会のあった昨年を超えて、262万件となりました。現在情報小委員会で、基本的リニューアルを検討中であり、来年1月から面目を一新してお目見えする予定です。
(3)広報関係事務所が九段事務所への移転
このたび靖国九段ビルにある全剣連事務所の一角の借り増しを行い、武道館地下の広報関係が移転します。北の丸事務所の会議室も九段事務所に設けられます。そのあとに映像博物館が分室より移動し、北の丸事務所には資料関係、博物館関係が集約されます。移転は9月下旬に行なわれ、これに伴って現在映像博物館が置かれている九段分室は閉鎖されます。