第53回を迎えた全日本剣道選手権大会、かつてのような超大物とされる選手は見られない顔触れでしたが、粒の揃った勝負強い選手の健闘による活発な試合が連続し、見るものを納得させる試合が多かった大会でした。2階席まで埋めた観客を満足させた内容だったと思います。
試合結果は長年の優勝候補であり、初出場で二位になりながら、その後二位1回、三位3回と優勝に手が届かなかった原田 悟選手が、9回目の挑戦で壁を破り天皇盃を獲得しました。地味ながら内容の濃い試合展開で群雄を下した見事な試合ぶりでした。
また初出場で良く決勝まで進んだ内村良一選手には、若手剣士として今後の成長を期待させるものがありました。準々決勝戦に進んだのは実績あるベテランが多かったのですが、優秀選手賞の表彰を受けた大熊健司、村木英仁などの若手の活躍が見られたのは今後に期待できるものがあります。
ところで勝負の結果を分析しますと、全63試合のうち70%の44試合が一本勝負、そのうち5分で決まらず延長で決まったのが35試合、一本先取して5分の時間切れで終わったのが9試合という状況です。また三本勝負になった試合19のうち、時間内に二本勝ちの試合が15試合と大部分を占めているのは目立ちます。また延長で勝負が決まった4試合のうち、一本先取された後に取り返して勝ったのは2試合のみでした。
総体としてこの大会は、一本先取したものが勝つ大会で、三本勝負をうたいつつ、現状の5分に限った時間運営で一本勝負の大会になっていることが見られます。これでよいのかどうか、先般の東西対抗大会の経験も踏まえながら、どのような改善策があるか、今後検討したいと思います。
さてこの大会は日本の剣道界を代表するものであり、さればこそ多くの有料の観客を魅了するのは、高いレベルの試合内容だけでなく、出場剣士の風格ある動作、態度、審判員による適格な判定、試合運営であり、さらには観客の応援など観戦における節度ある態度や、主催者による進行の適否、会場の雰囲気造りのための演出の巧拙など、すべてが相俟って大会の良否を決定することになります。
このために主催者全剣連は過去の経験、実績をもとに毎年改善の努力を払ってきましたが、なお十分とは言えませんが、総合評価してみると、日本の武道を代表する大会として、今次大会はまずまず恥ずかしからぬ出来で、合格点は取れていると自賛していますが、いかがでしょうか。
それにつけても剣道を代表する大会ということで、外国からの観戦者が目立ちました。主なところで韓国からの徐 専務理事以下10名、台湾からの20数名、イタリアの8名、中国北京市からの10名など、ほかアメリカ、オーストラリア、アルゼンチンなど多数の方が見えました。剣道の海外普及に伴って、この大会が注目されるのは当然かつ結構なことで、主催者として多数の外来の客を歓迎しております。 |