これまでの教育基本法が作られたのは、戦後占領期の昭和22年3月です。読者の中で60年前のこの時代を体験された方は少数派でしょう。総力を挙げ戦っての敗戦で国民は虚脱状態、飢餓からの脱却が現実の課題であった時代であり、戦中の異常な状態からあらゆる分野で切替えようという時代でした。
この時期に占領軍の意向を柱に作られたのが、現行憲法であり、教育基本法でした。改憲が論議されつつある憲法はさておき、教育基本法は日本を軍事国家として立ち上がることがないよう洗脳することを念頭に、学校制度の切替えの実行などの改革の基本として、総司令部の強い指導、指示のもとに作られた法律でした。
すでに戦力の基になるということで、学校における剣道が禁止されている時代です。この年4月占領政策の基本を定める極東委員会の「教育制度刷新のための指令」が出されています。基本法はその内容と軌を一にする思想のもとに作られていますが、上記指令の中で剣道に関し次のように述べています。
「剣道のように精神教育を助長する昔ながらの運動もすべて廃止せねばならぬ」「体育はもはや精神教育に結びつけられてはならない」。戦中の在り方は別としてわれわれが受け入れられない狭い考えだと感じます。もっとも占領政策による施策には結構新鮮な内容があったことも事実ですが、現実と歴史を踏まえて日本政府の準備したものが織り込まれたものも多かったのも当然です。 |