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平成19年5月号 第238回

全剣連会長  武安義光

  記録的な早い盛りを迎えるとの予想だった東京の桜ですが、その後の春寒で調節され、花も長持ちし、日本武道館で行われる3月末の大学の卒業式、4月早々の入学式は桜花に彩られた環境のもと、多くの若人が人生の節目を祝うことができたのは何よりでした。


  年度に跨った東・西日本剣道中央講習会で新年度の口火を切った全剣連では、役員・事務局が、4月から5月にかけての事業ラッシュへの準備に万全を期しています。 

役割の進展を期待される東・西日本剣道中央講習会

  3月31日、4月1日の両日にわたって東西平行して行われる剣道中央講習会は、各剣連から派遣された剣連指導陣の中核となるメンバーへの講習会で、最も重要なものです。


  歴史をたどって見ましょう。

  昭和27年発足の全剣連は、剣道復活の仕事が一段落した30年代末期に、全国を対象にしての講習事業に手が回るようになりました。試合審判の規則が作られ、改定も行われる中、講習の必要性が高まり昭和41年9月に全国からの剣士を対象に、日本武道館で3日間の審判講習会を行いましたが、これが中央講習会の前身です。43年から剣道形の科目が加わり毎年続けられてきました。


  昭和62年に名称を剣道中央講習会として役割を明確にしました。平成4年には参加人員を増やし、東西で行い現在に至っています。


  今年は東日本は勝浦の日本武道館研修センターに68名、西日本は神戸市中央体育館に52名の高段の講習生を集めて第42回として実施しました。科目の中に救急法の実地訓練を行うのが例となり効果をあげています。


  講習会の役割は時代とともに変化しています。普及のための知見、技術や人材が行き渡ってない当初の時期には、全剣連が中心になり各地の剣連に伝達し、これに基づいて全国のレベルアップを図ることが必要でした。そこで「伝達講習会」といわれてきました。しかし近年資料も整備され、情報も広がり、各地の人材も育ってきました。 全剣連は一昨年度より一般への講習・指導の重心を地方に移動させ、それぞれの剣連が講習を計画・実施し、全剣連はこれを援助する方向に施策を切り換えています。この状況下、中央講習会は再び転機に直面しています。中央よりの伝達すべき新しい事項は減少しつつある今日、この講習会は、各剣連の指導陣の指導力開発・向上のための研修会の役割を主にしていくべきです。中央よりの伝達講習会という慣用語は死語にすることが望まれます。

ゴールデンウイークを中心とした行事の準備進む

  武徳殿での「第103回全日本剣道演武大会」を中心とした行事、これに先立つ4月29日の歴史ある「第55回全日本都道府県対抗剣道優勝大会」で口火を切る一連の行事が展開されます。今年は剣道八段審査を2日にわたり行うため、剣道六段審査会が繰り上がって、大会の日に重なり、観客の便に影響することが懸念されますが、都道府県優勝大会では新年度の最初の対抗試合であり、優勝兜の獲得を目指す各剣連の力戦が見物です。


  剣道八段審査会は5月1、2の両日、場所は例年通り西京極の京都市立体育館で行われます。剣道八段審査会は、受審人員の増加に対応し、運営の適正と審査の質を確保するために2日に分けて行うことにしました。受審者をどのように分けるかについて、幾つかの案について検討しましたが、いずれも一長一短で、受審者の希望に任せて申し込んで貰うことにしました。この場合受審人員がいずれかの日に偏ることが心配されましたが、結果は全く同数になり、実行側は一安心しています。審査は両日同じ顔触れで行われ、等質の審査結果が出ることを確信しています。


  さて、この期間に剣道七・六段審査会、居合道・杖道の各八段審査、各道の称号審査も行われます。多数の受審者のご成功を念じます。


  演武大会の参加者は例年と同様の3千名で、運営も例年通り行われます。新緑の古都に充実した大会が展開されることでしょう。

剣道男子強化訓練新たなスタートを切る

  新年度事業には一連の選手強化活動が組まれていますが、昨年末世界剣道選手権大会の団体戦で苦杯を喫した男子の強化訓練が4月19日から4日間、勝浦・日本武道館研修センターで行われます。


  参加剣士は32名の予定ですが、世界大会の教訓を元に、強化の長期構想、健康チェックの方法など多くの課題を抱えてのスタートになります。

石丸俊彦相談役のご逝去を悼む

  全剣連相談役石丸俊彦氏が4月1日に逝去されました。


  昨年大病で入院され、その後リハビリに努めておられました。昨年暮れの全剣連の顕彰で、剣道功労賞の贈呈が決まり、お届けに参上し喜んで頂きました。本年3月に再び入院、小康を得て退院されましたが、容体急変死去されましたこと、剣道界として惜しい人材を失い哀悼の念に耐えません。


  石丸さんは福岡県出身、陸軍士官学校に進まれましたが、戦後早稲田大学をご卒業、司法畑に入り裁判官を務められ、東京高裁総括判事で退官され、その後早稲田大学特任教授、弁護士として活動されました。


  退官後全剣連の運営に参画され、総務委員会委員、試合・審判委員会委員、称号・段位委員会委員、審議員、理事、副会長を歴任され、平成15年以降相談役に就任頂きました。最後には立案を手掛けられた称号・段位審査規則に基づく綱紀委員会委員長を引き受けて頂きました。


  これらの仕事に当たり石丸さんは司法畑で培われた学識を以って、全剣連業務に参画されました。顕著なものは現行の試合・審判規則の立案、特に現行の称号・段位制度見直しにおいては、審査規則の成文化に格別の努力を頂きました。


  顕著なものとして、称号・段位の付与基準の作成があります。審査は審査員の私観に依らず、それぞれの基準に対して行うのが、新しい規則の重点でした。その立案には自ら筆を取り成文化されました。確かに抽象的と見られるかも知れませんが、石丸さんのご苦心が、立派な基準として平成12年制定の規則に残されています。またこの規則に基づく綱紀委員長として、案件処理の判例を残されました。


  それ以前に参画された平成7年の試合・審判規則においてはそれまでの穴の多かった規則の体系の整備に尽力されました。また剣道界各団体の赤字体質の是正のための料金改定が必要とされた平成8年には、検討のための小委員会委員長を審議員の立場でお引き受け頂き、もう10年も続いている現行の料金体系を仕上げられました。

  そのほか多くの事項について常に適切な正論を発言され剣道界の運営に大きく寄与され、全剣連の歴史に残る貢献を頂きました。九州嘉穂中学、陸士で鍛ええられた剣道は剛剣そのもの、以前第一生命地下の弥生クラブの朝稽古でご一緒して厳しく鍛えられ悩まされたことが懐かしく思い出されます。


  文武両道を実現された剣道人そして熱烈なクリスチャンでもあった石丸さんの人柄とご功績を偲び、ご冥福を祈ります。

初段への参入者減少の傾向

  平成18年度の初段登録者数がまとまりましたが、前年度を約6%下回り、42,400名という数字になりました。6万台を記録したのが平成元年ですが、減少を続け平成14年に5万台を回復しましたが、近年における最低を記録しました。


  いくつかの県で前年を上回っていることは心強いのですが、残念ながら少子化の影響は全国的に顕著であることは否めません。


  剣道人口の増加には、各剣連でも努力しておられますが、参入者の増加について少子化の大勢を覆すまでにいかない結果と見ます。生涯剣道の奨励を含め、総合的な努力を高めていくことの必要性を痛感させられます。

断   片

@事務局ベテラン職員相次いで交代


  第二の職場として全剣連事務局に参加。企業で鍛えられた腕を振るって頂いた方が今年に入って、定年で相次いで事務局の勤務を退かれ、新人のベテランと交代されました。


  国際部門主幹代理として語学で支えて頂いた富田晴雄氏が1月で退職され、シルバー精工〜(株)JAMCO出身の矢澤一統氏が後を継がれました。

  長年経理部門主幹で尽力された木場靖夫氏が3月で退職し、同じNTT出身の鈴木利夫氏に引き継がれました。

  また新日鐵出身の情報エキスパートの打越徹夫氏が情報・登録部門主幹として4月に参画されました。


  本年に入っての異動ですが、退職された方のこれまでの剣道界へのご尽力に感謝し、今後のご健勝を念じ、新たに参加された方をこの場を借りてご紹介します。


A事務局恒例の花見は異動された方を交え、靖国神社境内で3月29日夜に実施。
 満開の桜の下、盛り上がりました。

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