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平成19年9月号 第242回

全剣連会長  武安義光

  7月16日の午前10時過ぎ、日本武道館では「第24回全国家庭婦人剣道大会」の試合が始まっていました。そこにゆっくりとした揺れが来ました。「地震だ、かなり大きそうだ」との声で、ただちにテレビに目を移すと、震度6クラスの大きい地震が中越地方を襲ったことが報じられ、その後つぎつぎと柏崎地区を中心とする大きな被害が報道されました。


  昨年9月には「第53回全日本東西対抗剣道大会」が開催されたばかりの地です。会場だった柏崎市総合体育館も使用不能の被害を受けたとのことです。何年か前には「原子力剣道大会」がこの地で開催され訪れたことも思い出されます。関東地区への電力供給基地の柏崎刈羽原子力発電所も被害があり停止のやむなきに至っています。


  被害を受けられた方々に心からお見舞い申し上げ、復旧が早からんことを念じます。全剣連も心ばかりのお見舞いを、新潟県剣連に託してお届けしました。

三重県が連続優勝を飾った全国家庭婦人剣道大会

  第24回を数えるこの大会は、毎年試合内容のレベルアップが実感されます。
  これは学生を中心とした女子剣道の充実が、年配層に及んできたことが与かって力あるものと見てよいでしょう。
  生涯剣道の実践者の集まるこの大会、さらに発展を続けることを期待しています。
  三重県の連覇にはお見事と申し上げます。

日本武道館を2日間にわたって埋め尽した全日本少年武道錬成大会

  毎夏の恒例行事である「全日本少年武道(剣道)錬成大会」ですが、開会式に臨む度に心が弾みます。今年も7月28、9の両日、日本武道館は、北は北海道、南は沖縄から馳せ参じた少年・少女の剣士で埋められました。


  参加資格は小学校4・5・6年の生徒、参加人員には近年陰りが見えますが、2日に別けて行われるこの大会の参加団体は900余り、参加剣士の総数は5千名を超す盛況です。


  この大会は、それぞれのチームの指導者への基本打ちの優劣と、試合の合計点で勝負を決めますが、全般的に技術の向上が感じられ、審判員も判定に苦心している様子が見られました。


  出場チームを引率する指導者は、それぞれの仕事を持ちながら、時間を割いて少年剣道育成に努力しておられる方々で、各地におけるそのお骨折りが、日本の人造りにどんなに役立っていることかと、お礼を申し上げたいと思います。


  さて全剣連はかねて社会体育指導員認定事業を進めてきました。この大会の審判員には東京都剣連の推薦に当たり、中級の資格を持った方を優先して頂いています。今度は各チームの指導者にどのくらい資格者がいるか抜き取りで調べましたが、一割あまりとの結果でした、まだ資格者の活動は十分とは見られません。さらなる活動をして頂くことを期待します。

34カ国・地域から参加しての外国人剣道指導者夏期講習会

  恒例のサマーセミナーと呼ばれるこの講習会、7月27日から8月3日まで、埼玉県北本市の解脱研修センターで行われました。


  世界剣道選手権大会のあった昨年は、審判員研修会として行われましたので、一般への講習は2年振りで第32回目でした。


  イスラエルなど新しい国からの参加もあり、遅かった梅雨明けで襲ってきた猛暑の中、55名の講習生は、熱心に受講され、1名負傷者が出ましたが、元気に日程を終えました。


  厳しい環境の中、熱心に指導に当たられた、佐藤成明範士他の講師と国際委員各位ならびに、行き届いたお世話を頂いた解脱会の皆さん、さらに毎回助成頂いている小型自動車振興会に厚くお礼申し上げます。

久方振り東北での社会体育指導員養成講習会

  異常気象のせいか今年の東北地方は何時に無い暑さです。仙台市も東京に劣らぬ30度を超す気温の中、広瀬川ほとりのエアコンの無い宮城県武道館で第65回を数える標記初級講習会が、8月3日より3日の日程で開かれました。


  実はこの講習会、昨年度の計画に乗っていたのですが、参加者が集まらずに見送られました。しかし今回改めての開催ということで、地元の宮城県剣連も募集に力を入れられ、関東からの参加と併せて100名の講習生を集めての盛大な講習会になり名誉を挽回されました。


  宮城県での初級講習は、この事業が始まって翌年の平成8年から11年振りで、いわば処女地に近く、地元の七段の方も多数参加され、レベルの高い初級講習会になりました。


  全剣連の役員交替で、新たにこの事業担当をされる目黒常任理事(秋田県)が岡村前常任理事から引継いではじめての講習会は、幸先よいスタートでした。
今後の施策の重点―称号・段位制度の運営を向上させる

  まず平成12年に改正された現行制度の趣旨を認識して頂きたく存じます。
  そこで現行の規則の立案に先立ってまとめられた、骨子と思想を記した、規則集の冒頭の「称号・段位の見直しについて」の要点を掲げます。


 @ これまでの制度を見直すに当たって、「長期にわたっての剣道奨励、発展を図り、社会よりの理解を深め得る望ましい安定した制度と、適正な運用を確立しようとする」と宣言しています。


 A これまで確立していなかった、称号と段位の性格を明確にしています。段位は「剣道の技術的力量」とし、称号は「これ(技術的力量)に加える指導力や、識見などを備えた剣道人としての完成度」を示すものとし、「審査を経て授与されるもの」としています。そして称号の優位を明らかにし、両者の併存を宣言します。


 B これまで規定されていなかった、段位・称号それぞれについて「具備すべき条件、基準を明らかにするよう努める」ことを要請します。


 C これに「準拠して、審査方法の改善と合理化を進める」ことを大原則としてうたっています。


 D 審査に当たる「審査員の選考制度を確立し、全般的に審査員の質の向上を図る」べきことを強調します。


 E 審査と教育の連動を図ること、また受審者の立場への配慮を深めることを要請し、「受審者をふるいにかけるための審査にせず、審査を実力向上のための手段として効果」あるものとするため、情報の開示、指導などを進めることとします。


  以上が「見直しの大綱」のポイントですが、以下「具体的改善策」として掲げられている主な点を述べます。


 @ 範士が「剣道界の最高鋒である」としてきた伝統的な立場を再確立します。戦後、功績までも条件として取り入れた、乱発と批判される状態を厳しく規制すべきとします。そして旧規則で実質的に高位となっていた九段、十段は新規則では記載しないこととします。


 A これと同じ思想に基づいて、功績あるものに対する認定審査、死去された方への追綬を廃止することにします。


 B 前記の趣旨から範士の審査を特に重視することにし、主に八段の年功序列によっていた現状を改め、候補者は加盟団体の推薦順によらず、全国的視点で候補者名簿を作って行うようにすることを指摘しています。


 C 規則作成に当たり、現在「称号審査」と「段位審査」の二本立てになっている規則を一本化すること、現行規則では書かれていない制度の目的を、規則第1条に「剣道の奨励および、その向上に資する」と明記すべきことを指摘しています。


  さて現行規則の前文に掲げられているものの骨子を紹介しましたが、変革は範士審査などの上級審査の結果を取り上げます。これまで一定年限大過なく努めてこられた八段剣士は、範士に昇格されたのに対し、新規則の趣旨により厳選されるようになりました。さらに功績条項で昇進を認めた、七段剣士の範士昇格が無くなったことは大きな変化をもたらしました。


  新規則制定時の平成12年6月の剣道範士在籍者は、八段以上の範士279名、七段範士157名、功績による範士13名、合計449名でしたが、19年現在、八段以上の範士220名、七段範士60名、功績範士7名、合計287名になっていることを記しておきます。


  また平成7年から5年間の範士昇格者が156名であったのに対して、この5年の範士昇格者は40名であり、新規則の趣旨による運用変化がでています。
  審査実行上の配慮すべきことについては次号に譲ります。

断   片

  7月から始まった全剣連出版物等のインターネットによる販売は、1カ月が過ぎ、好調な出だしを見せているようです。

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