まず長い目で見て、世界と共に具体的対応を要するのは地球温暖化の問題です。燃料使用によって排出される大気中の二酸化炭素の増加による、大気の温度上昇が、世界の環境に大きな影響を及ぼすことへの対応を、世界各国が協力して行うべきことが、総論的には一致しています。京都議定書での削減目標への行動が、やっと各論として実行を要請される段階にきています。
日経はこの新聞の性格を反映し、「低炭素社会への道」を掲げて元日から社説を連載しました。「国益と地球益を満たす制度設計を」と説いています。欧州が制度設計で先行しているのに対し、日本は遅れていることを衝いています。この面では政府が産業界と協調してこの分野で施策の促進を図らねばなりません。
朝日も3日の社説で「技術の底力で変身しよう」とし、「エネルギーの地産地消や分散型の都市をつくる『企業の競争』により、地域と産業を脱温暖化に衣替えする」ことを説いています。この方向に努力することは結構なことですが、これらの方策だけで目的が達成されるかについては甚だ疑問です。論説では賛成でない原子力発電の増強による、石油・石炭火力発電の抑制を進めることは避けて通れない急務であることを私見として強調しておきます。あわせて付け加えますが、二酸化炭素排出の現状、抑制のための仕組みなどの情報を国民に周知し、対応策について理解を得ることが大事で、このための努力強化が今後重要です。
さて中期的に目を転じますと、複雑・不透明に変動しつつある国際情勢の中、日本がどのように生きていくかが問題です。世界唯一の超大国であった「米国の揺らぎ」があり、近い将来に、ロシア・中国・インドなどが経済大国として登場し、世界のパワーバランスが変わって行くことが予想されます。この中で日本としては日米同盟を機軸として堅持しつつ、世界戦略を立て外交努力を進めるべきと強調するのは読売です。そして外交に発言力を持つためには国内政治の安定が必要であり、さらに社会保障費の増大をも抱えて危機状態にある財政の解決への見通しも持つ必要があるとし、現内閣がなすべきことは内外に強い政治意思を示すことと主張します。
産経も日本の安全保障については読売とほぼ同様の姿勢ですが、国の安全保障の根幹を首相が示すことを要求します。日本の国際的指導力が試される洞爺湖サミットにおける首相の奮起を促します。また民主党は国家安全保障を政争の具とすることを止め、現実的姿勢への転換をすべきとします。
さて現在の政治における衆参のねじれ現象での国政の停滞に対し、朝日、毎日は元日の社説で、選挙で民意を問うべきと主張しますが、読売は選挙に依らず、国内政治の安定に努力すべきとします。
新年に当たり日常追われている身の回りの問題を離れ、長い目で国としてあるいは社会として取るべき方向を考えて見たい、そのための題材を得ようと、年頭の新聞論調を毎年取り上げてきました。その内容に学ぶというより、生き方の参考にすることで見て頂きたいと存じます。 |