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平成20年05月号 第250回

全剣連会長  武安義光

  4月は進学、就職、転勤など職場・学校での立場の変動の多い時期です。
  定年など仕事を離れたり、転職して人生の節目に立つ方も多くおられましょう。
  心機一転充実した人生の構築に立ち向かって頂きたいものです。
  この際生涯修業の剣道も忘れずに生活に取り入れること、また生活の変化から遠ざからざるを得ない方も、復活の日に備え技術の温存に心掛け、一生の財産となる剣道を大事にすることが望まれます。


  さて春は強豪が火花を散らす4月20日の名古屋での第6回全日本選抜剣道八段優勝大会で幕を開けます。多くの方のご光来をお待ちします。

一連の大阪・京都での行事目前に

  年度初めの各剣連の総力戦である4月29日の第56回全日本都道府県対抗剣道優勝大会は、新年度を飾る歴史ある大会です。大阪市中央体育館では力の入った試合が行われることでしょう。


  京都に移っての第104回全日本剣道演武大会には、3,200名の剣士が全国から集い、1年間の精進の成果を示し合い、交流を深めるお祭りになります。教士七段の方のうち剣道初日の3日に演武を希望する方が毎年増えて今回は400名を超えました。ゴールデンウィークを活用しようという方が増えている世相を反映しています。剣道の部の組み合わせは本誌に掲載されていますが、熱戦が展開されます。

6千名を超える方が挑戦する一連の初夏の審査会

  厳しい剣道審査会が京都市西京極の京都市立体育館で4日にわたり行われます。
  京都での七・六段受審者はそれぞれ1千名余りで前年並みですが、5月10、11の両日の名古屋市枇杷島スポーツセンターでの挑戦者はいずれも増加、特に七段は15%増加の1,400名になりました。


  一方前年から2日にわたって行われる八段審査は、総数では前年より微増の1,400名ですが、1日が603名、2日が877名と、今回は2日目に偏りました。これも休日を合理的に利用する世相の反映でしょうか。ただいずれも実行面での問題はありません。


  5月3日に京都市武道センターで行われる居合道・杖道八段の審査会のうち杖道は昨年並みの34名、居合道は173名で、前年より44名減っています。


  これらの審査会に、規則16条2項3号による修業年限短縮条項により、申し込まれた60歳以上の方は、受審者総数6,500名のうち、380名ですが、この制度につき、本年度事業計画にある「見直し」を行うこととしており、一連の審査会後に結論を出します。


  称号受審者のうち範士審査には、剣道64名、居合道21名、杖道5名の多数の方が各剣連から推薦されました。審査規則による、全剣連会長の候補者推薦を行う予定はありません。以上の候補者の中から合格者が選ばれますが、制度における範士の基準、近年の実績からみて多い印象は拭えません。審査会で厳選されましょう。


  教士候補者は剣道161名、居合道5名、杖道3名で例年並みです。ここでは4月12日に各地で行われる筆記試験の結果が大きく影響します。


  錬士候補者は剣道308名、居合道9名、杖道9名です。総数6,500名を越す多数が挑戦される春の審査会ですが、ご健闘、ご成功を念じます。

充実した内容で行われた第43回剣道中央講習会

  4月5、6日の両日にわたって東西並行して行われる剣道中央講習会は、各剣連から派遣された中核となるメンバーへの講習会で、全剣連としても歴史と重みのあるものです。


  東日本は東京・夢の島の東京スポーツ文化館に69名、西日本は神戸市立中央体育館に53名の講習生を集めて行われました。


  講習会の役割は時代とともに変化します。普及のための知見、技術や人材が行き渡っていなかった当初の時期には、全剣連から各剣連への伝達講習会といわれてきました。しかし現在は、各剣連の指導陣の指導力開発、向上のための研修会の役割を主にしての趣旨により行っており、熱心な受講者・講師の努力により効果を挙げました。

全国剣道人口調査の結果まとまる

  全剣連設立55周年記念事業として、初めての剣道人口調査を全国規模で行いました、通称「剣道人口国勢調査」として全国各剣連の協力のもと、昨年9月現在で、剣道人口構成、活動主体、有段・無段別、都道府県別分布などについて調査しました。


  これまでは剣道人口というと、全剣連が持つ登録時の有段者数、合計全国148万名という数字だけでしたが、今回初めての調査結果がまとまりましたので以下紹介します。


@活動中の剣道人総数は47.7万名、そのうち有段者は29万名であり、段位取得者の約  2割であること。


Aうちわけは一般社会人40%、中学生以下が45%、このうち半数が小学生以下である。


B男女構成では女性が23%と4分の1を占めている。


C組織別には学校剣道部28%警察関係14%、一般道場・スポーツ少年団が58%である。


D総剣道人口としては、今回把握した無段者18.3万名を登録人員148万名に加えると、  166万名と見ることにしたい。


  今回の調査で多くのことが分かりましたが、とくに段位取得以前の剣道人口が把握できたのは大きな成果といえましょう。また活動している剣道人口48万名であること、登録済みの有段者の20%が活動していることも少ない感じを受けました。


  しかしこの調査は、全国的に1つの基準で行った初めての調査であり、現場でのご苦労も多かったと思います。このような統計と情報は基本的にそれぞれの剣連の運営、事業のために整備が必要なことと信じます。今回の調査は完全なものとは言えませんが、初めて得られた情報も多く、55周年行事として成果を挙げたものと評価しています。詳細は別の報告書をご覧ください。


  実行に当たりお骨折り頂いた方々に謝意を表するとともに、次の機会にさらに実態の把握が適切に行われるようにしたいと存じます。

充実した剣道パリ大会開催される

  全剣連の京都での演武大会と趣旨を同じくする、剣道パリ大会が3年ごとに開催されており、第4回大会が3月15、16の両日、パリ市カルパンチェホールで行われました。


  今年は幕末に日仏交流が始まって150年の記念の年で、多くの行事が、両国で開催されましたが、この大会もその一環として行われました。全剣連はかねてこの趣旨に賛同しており、今回も古武道協会の協力を得て、27名を派遣しました。一部笹川財団のご援助も頂きました。


  大会は初日は各段の立合い、古武道の演武、日本剣道形、日本から派遣された高段者による模範演武が披露されました。入場は有料ですが、1,000名を超す観客が熱演を注視していました。式典も行われ、駐仏飯村 豊大使もご来場、挨拶を頂きました。


  2日目は団体対抗試合も行われましたが、2日間を通じて、試合の勝ち負けを争うだけでない、剣道の文化性を強調しており、フランスならではできない催しで、同行の派遣団メンバーはいずれも感銘を受けた印象を語っています。


  このような大会は、海外ではフランス剣連ならではできない行事で、フランス剣連、また実質的指導推進に当たられた、在仏の好村兼一八段のご尽力に敬意を表します。

功労のあった方、相次いで死去される

  昨秋功労賞を差し上げた吉本 實さんが4月2日に死去されました。吉本さんは官公庁剣連会長であり、全剣連では綱紀委員会委員長をお引き受け頂いておりました。富山高出身、旧制高専大会の常連、生涯剣道の実践者でした。


  大野健雄さんは内務省から警察畑ご勤務、生涯剣道を実践され、各地で剣道の振興に尽くされました。晩年は『神道大系』の編纂に打ち込まれましたが、名文家で『剣窓』に特色ある文をいくつも残しておられます。3月25日に亡くなられました。


  また4月4日、岡山県剣連会長産賀敏彦さんの訃報に接しました。医学者で岡山大学医学部長も務められ医学界の重鎮でした。


  以上の方の長年のご功績を偲びご冥福をお祈りします。

断  片

(1)全剣連19年度登録者数減少続く


  19年度の初段登録者数は40,500名で前年比2,000名近く減少です。登録料収入全体も減少は避けられません。


(2)「高段者名簿」刊行される


  5年ごとに刊行される七段以上の『高段者名簿』ができ、関係者に配付されています。掲載人員は14,804名で5年前に比べ約1,000名の増加です。


(3)全剣連花見を3月31日に


  例年にない見事な桜に九段界隈が彩られた年度の最終日、恒例の全剣連花見を、靖国神社の大村益次郎銅像下の例年の場所で実施し、新年度の充実した活動を申し合わせました。


訂正


  先月号の「まど」の記事で、小説『ながい旅』の著者を大岡昌平と記しました。昇平の誤りでした。訂正いたします。

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