総合的に見て良い点がつくと見られる、今回の大会をいくつかの視点で振り返って行きます。
新旧対決が活発に行われ大会を活性化した
今年の大会は、日程的に8月末の世界剣道選手権大会に続く形となり、10名のうち7名が出場している世界大会の代表選手と、例年より多い26名の初出場者選手の活動ぶりが注目されました。
出場組では昨年の大会の覇者の正代賢司(神奈川県)、準優勝の若生大輔(北海道)が揃って1回戦で敗退、正代は初出場の大石寛之(大阪府)に食われました。また出場3回目の高橋秀人(東京都)が準優勝を勝ち取り、ベストエイトには初出場者が2名入るなど、新勢力の進出が目立った大会になりました。
一方ベテランは実力を発揮しました。世界大会組が苦戦した中、2年前に優勝、先般の世界大会で団体試合の大将を務め、個人優勝も果たした寺本将司(大阪府)と、3年前の若手選手権者内村良一(東京都)はともに勝ち進み、準決勝戦で両者が顔を合わせることになりました。この対決は事実上の決勝戦と見られましたが、この勝負を1本1本のあと延長戦で制した内村は、同じ東京(警視庁)高橋との決勝戦において、延長に入り見事な面を決め、2度目の天皇盃を取得しています。
ベテラン組ではこの他、10回目出場で表彰を受けた最年長43歳の染谷恒治(千葉県)、12回目の出場で優勝経験もある原田 悟(東京都36歳)がいずれも優秀選手の表彰を受けたのは立派でした。
新人の進出に、ベテランが立ちはだかることで、1回戦から目を離せない活気ある試合が展開された大会でした。
一般社会人の奮起を期待
選手構成では警察官の比率が高く、64名のうち実に55名を占めました。学生の出場は見られず、ベストエイトに残ったのはいずれも警察官と昔に戻った感がありました。教員・刑務官・産業人や学生の奮起を願うや切なるものがあります。今大会で物足りなく感じられた所です。
大会を盛り上げた審判、公開演武
全国から選ばれた範士の審判員は良い仕事をして頂いたと思います。また公開演武としての冒頭の日本剣道形、後半に行われた少年剣道指導における、「木刀による剣道基本技稽古法」での少年の演武も見事でした。
満員の観客の中での静寂な大会
まず主催者を喜ばせたことは、近年で一番大勢の観客に来て頂いたことです。アリーナ席、1階席はいずれも完売、2階席も若干の余席を残す程度の大入りほぼ満席の状態、入場者総数は、8,200名と近年では最高になりました。
さらに満足すべきは、この多数の観客の見守る中の静寂ともいうべき空気で試合が最後まで進められた事でした。おそらく他の武道・スポーツの大会に比較して、剣道が誇っていい所と断言できます。
観客が多いこと、会場の空気と試合者との相互作用のもと、試合内容にも好影響を及ぼしたのは当然と思われます。放送されたNHKのテレビ放送でも、例年を越える4%台の視聴率であったとのこと、一般の剣道への関心の高まりを感じました。
試合会場管理と情報提供
大会の進行の進行管理、場内へのアナウンス、電光掲示などの情報提供、音楽利用などを含め、運営管理など、満点とは言えませんが概ね適切に行われたと言えましょう。
また観戦に来られない人のためには、動画を取り入れたホームページによる報道を昨年より行っており、本年は24件の動画を提供し、13日現在の再生数は17万件あまりに達しました。また、大会当日のホームページへのアクセス数も、22万件におよびました。
初めに申し上げた良い大会の内容でいくつかの点で申し上げてきました。もちろん試合内容の良否が第一ですが、来年はこの点を含めさらに良い大会になって欲しいと期待しています。
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