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平成22年01月号 第270回

(財)全日本剣道連盟会長  武安義光

  今年の気候のせいか九段坂を初め、都内の銀杏の晩秋の彩りが見事です。経済不況からの脱却に各界必死の努力で、ある程度の立ち直りの兆しは見られますが、デフレの進行、失業率の悪化、学卒の就職難など先行きの暗い話題にこと欠きません。

  この中交替した政権での次年度に向かっての予算編成が進んでいますが、選挙時のマニフェストに縛られてか迷走ぎみです。これまでの選挙対策に捕らわれず、最適の施策に邁進することが必要です。とくに外交・防衛・科学技術・教育について、この際国の長期的進路を確認して、着実に前進するよう要請します。

  剣道界は11月の大型審査、表彰などの一連の行事を終えて例年なら一段落ですが、今年は強化訓練が本格化しているほか、幹部研修会なども続き、関係役員以下汗を流して頑張っています。

  法人制度改革への長期構想企画会議の検討も本格化しており、息の抜けない年の暮れを迎えています。

  「まど」は例年の構成で平成21年を終えますが、読者の皆さんのご健勝と良き年を迎えられることを念願します。


一連の剣道段位審査会終了

  全剣連の実施する審査会で最も受審者の多い、秋の一連の愛知・東京での八段から六段審査が無事終了しました。

  剣道六段は受審者合計3,211名、合格率は名古屋14.7%、東京13.2%で合格者は合計443名(除再受審)でした。

  剣道七段は受審者合計2,879名、合格率は名古屋9.0%、東京10.6%で合格者は合計287名(除再受審)でした。

  春・夏の審査よりいずれも合格率が向上していますが、修錬の度合いによる実勢を反映したものとの感を受けました。

  2日間にわたり行われ、1,500名余が挑戦した最難関の剣道八段審査は、一次合格が両日とも7%弱、二次合格も同じく1.4%の結果となり21名が合格しました。

  それぞれ難関を突破された方々にお慶びを申し上げますが、今後一層の修錬を期待します。

  八段審査の内容、どうも良くなかったという長老の所見は厳しく受け止める必要がありましょう。


平成21年を振り返る 全剣連・剣道界の主なニュース

  ①世界剣道の普及・充実を示したブラジルでの14WKC大会、盛会裡に終了・日本チームも四種別に勝利面目回復

  8月にサンパウロ近郊で開かれた世界剣道選手権大会は38カ国・地域参加の下、盛大に開催されました。日本は前回苦杯を喫した男子団体戦でも勝って面目を回復しました。監督以下選手全員の努力が報いられたものと思います。

  ②全国家庭婦人剣道大会を全日本都道府県対抗女子剣道優勝大会に変更、全日本都道府県対抗剣道優勝大会を男子のみの大会に改め順調に実施された

  組み替えを行っての4月、7月の両大会、生れ変わった内容の大会として行うことができました。高校生・大学生に出番を与えたことも大会を盛り上げる上で効果的でした。

  ③全剣連役員に指導担当を置き、専門委員会に指導委員会、更に普及委員会に学校教育部会を設けた

  剣道界全般にわたる指導力の充実、向上を進めるため、6月の役員改選の機会に、指導担当、学校教育担当の役員を指名し、専門委員会に指導委員会を、普及委員会に学校教育部会を設け、指導・教育の推進と、専門的事項の調査を加速させることにしました。

  ④中学校における剣道教育手引書『剣道授業の展開』を出版

  平成24年からの中学校体育授業における武道必修化への移行に備え、剣道授業の手引書の編集を急いで進めてきましたが、4月に出版して以後普及が進み、好評です。これを活用しての講習会が各地で行われています。

  ⑤全日本剣道選手権大会で内村選手2度目の優勝を飾る

  第57回標記大会で内村良一(東京都)が高橋秀人(東京都)との警視庁同士の決戦を制して2度目の優勝を飾りました。若手が活躍した充実した大会でした。一般の関心も高く、日本武道館には満員の観客を集め、剣道大会ならではの整然、静粛の雰囲気で試合が展開さたことも、他の武道、スポーツに比較して誇って良いことと思います。またNHK放送も従来を上回る高い視聴率を記録しました。

  ⑥全日本女子剣道選手権大会で村山選手が4度目の優勝の偉業達成

  9月に開催の標記大会で、村山千夏(埼玉県)が前人未踏の4回目の優勝を飾りました。全般的に女子剣道の充実ぶりを示す大会でした。

  ⑦森島健男氏に特別功労賞を贈呈

  秋の表彰で、森島健男氏に特別功労賞を贈賞、12月5日に贈呈しました。平成4年に剣道界最高の賞として制度が作られてから7人目の受賞です。また同日剣道功労賞が5名の方に贈呈されましたが、この1人英国剣連の会長を務め、欧州剣道の振興に努力されたJ・ハウエル氏が受賞されました。

  ⑧30年ぶりに級位審査規程改定

  段位の下の級位審査規程は各剣連に運用を任されており、整合性を欠く恨みがありましたので、今回30年ぶりに改定しました。地方剣連に運用を任せる点は変わりません。今回の改定では級位審査規則に基づく級位は一級から三級までとし、審査基準を示しており「木刀による剣道基本技稽古法」による審査を取り入れています。

  ⑨公益法人の新制度への移行のための検討に着手

  国の公益法人に関する制度の改革により、現在の公益法人は昨年末から5年以内に、新制度への移行を行う必要がありますが、全剣連としては新制度に基づく法人としての在り方を、長期構想企画会議において行うこととしました。加賀谷誠一議長の下、秋から熱心な討議を進めています、来年上期には結論を得ることを目途としています。

  ⑩全剣連ホームページ発足10年を迎え、内容充実アクセスも増加

  当初慶応大学の庇を借りてスタートした剣道ホームページを全剣連が自前で行うようになり10年を経ました。選手権大会の動画サイトを設けるなど、内容は充実してきており、アクセス数も本年は600万件に達する勢いです。


慶弔 昨年の物故者

 谷口安則氏  剣道範士 全剣連相談役 元福岡県剣連会長  05月19日  88歳
 石川政勝氏 剣道範士 北海道在住 全国最高齢の範士  05月29日 103歳
 砂田卓士氏 剣道教士 元全剣連常任理事 法学博士
元専修大学法学部長
 07月07日  86歳
 武藤嘉文氏 岐阜県剣連会長
国会議員として外務大臣などの閣僚を歴任
され、更に昭和48年4月以来実に35年8カ月
の長きにわたって剣連会長を務めて頂きました。
 11月02日  82歳
平成21年の「まど」の内容

 新年巻頭言  ・「剣道人は国勢を支える人材として努力しよう」
 01月号  ・秋の審査会終わる ・平成20年の剣道界をふりかえる
 02月号  ・年頭の新聞論調 ・級位審査規則の見直し
 03月号  ・21年度事業への構想 ・水戸東武館の寒稽古NHKに登場
 04月号  ・21年度事業計画決定 ・全剣連ホームページ立ち上げて10年
 05月号  ・「剣道授業の展開」の内容と特色
 06月号  ・男子だけの全日本都道府県対抗剣道優勝大会
 ・選抜剣道八段優勝大会 ・GAISF武術大会開催決まる
 07月号  ・前年度事業を振り返る ・前年度収支概ね順調 役員改選
 08月号  ・新しい役員の担当決まる
 ・指導業務充実に向けて体制整備 ・全剣連マークの由来
 09月号  ・第1回都道府県対抗女子剣道優勝大会 新潟県優勝
 10月号  ・世界剣道選手権大会 男子個人苦戦 女子堅陣揺るがず
  男子団体前回の雪辱果たす
 11月号  ・秋の三大会の結果 ・専門委員会始動
 12月号  ・全日本剣道選手権大会総評 ・剣道高段者審査会
断  片

  剣道功労賞を受けるため、英国から来日されたハウエルさん。「剣道は私の人生そのものであり、楽しみと価値ある人間教育を与えてくれた」と心境を述べられました。

  また有志での歓迎会で、グラスゴーの世界選手権大会の際、エリザベス女王の来場を実現した苦心を淡々と語られました。


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