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平成22年03月号 第272回

(財)全日本剣道連盟会長  武安義光

  厳しい寒波が全国を襲い、豪雪の被害も報ぜられていますが、季節は着実に春に向かっています。庭に梅花も綻びました。

  多くの方々が、年度末を控え仕事の締めくくり、不況との戦いを続けておられましょう。進学、卒業から就職へと人生の転機に立ち向かって頑張る若い人も多く、家族の方の苦労も察せられます。剣道で養った気力で、難局を切り抜けて行きましょう。

  さて各剣道連盟は春の行事に、本年度事業の締めくくりや、次年度事業の準備に奮闘中とお察しします。全剣連も年度計画に基づく講習会に追われる一方、新年度の事業計画、予算作成を前に、剣道研究会、全国剣連の専務理事・理事長会議、審議会など、例年の手順に従って仕事を進め、3月9日の評議員会・理事会での決定に持ち込みます。

  最近スポーツ界・政界で国民の関心を呼んだニュースが続きました。まず武道の一つといわれる大相撲の最高の地位である横綱の起こした事件への対応と処分の問題です。結局自発的引退ということですが割り切れなさを残しました。

  この横綱、とかく風格に欠け、平素から地位に相応しくない言動を繰り返していたようです。強いだけの力士を最高の地位に置くこの大相撲が、国技の代表のような扱いを受けていること自体納得しにくいのですが、武道の一翼にあるとすれば許されざることです。

  剣道界を振り返りましょう。ここは段位・称号の2本立て、段位は腕前、その上に剣道の目指す「人間形成度」に応じて授与される称号があり、段位・称号を通じての最高位が範士とされるのはご承知の通りです。強くても、人格・徳操・識見が伴わないものは、最高位に推されることはありません。剣道界はこの制度を大事に運用して、本当の国技としての道を歩みたいものです。

  もう1つの政治資金の絡む問題の渦中にあった与党幹事長は、秘書は刑事処分、本人は不起訴ということで、落着したようです。罪にならない方法であれば、政治資金の集め方・使い方が問われないのかどうか。剣道界から言うべきかどうか分かりませんが、これは日本の政治家の品格、日本人の品格が問われる問題と感じます。


平成22年度事業の基本方針は

  全剣連の事業は、毎年決定される4月からの1年の事業計画と、予算に基づいて行います。ここ数年の流れは、それぞれの事業分野で、まず専門委員会、担当理事段階で、現状と実績の検討が細かく行われ、これに基づいて次年度の仕事の進め方が立案される手順が定着してきており、大変良い傾向と感じます。

  この積み上げの上に全体的検討が行われ、最終的決定を見ますが、基本方針は近年ほとんど変更ありません。とかく見過ごされやすいこの部分を、「まど」として改めて掲げ御覧おき頂きます。

  基本①本連盟は、わが国の伝統と文化に培われた剣道の普及・発展を図るとともに、心身の鍛練による人造りと、わが国社会の健全な発展に貢献することを目指す。

  続いて事業展開の基本方針は、②基本方針は「剣道の理念」に基づき、社会から高く評価される活力ある剣道界の実現を目指し、国内外各層への剣道普及を図る。

  ③来年度事業の重点事項として次の三項目を掲げています。
  1.中学校武道の必修化に伴う諸事項を検討して、その推進を図る。
  2.新公益法人制度に伴う新法人への移行準備を推進する。
  3.指導力の強化・充実を図る。

  この方針のもと事業が展開されます。


22年度の事業の具体的展開

  まず掲げるのは大会で、一昔前はこれが事業の最重点となっていました。現在はいかに効率的・効果的にこれを進めるかという視点で取り組んでいます。

  本年度を振り返ると、全日本都道府県対抗剣道優勝大会と全国家庭婦人剣道大会を組み替え、男子・女子の都道府県大会として実施し、効果を収めました。来年度はこれを継承し、スムーズに展開されることを期待します。その他の大会には枠組みの変化はなく、本年を継承します。

  さて各剣連主催で全国で展開される大会はこのほか数多くありますが、これらを効果あらしめるには、審判技術の向上が必要で、そのための指導は引き続き充実させていきます。

  称号・段位の運用は的確に進め、とくに審査はその質の向上を進めますが、段位の下の級位の審査が各剣連で効果的に進められること、また「木刀による剣道基本技稽古法」が普及することを期待します。

  講習事業は、指導者の養成、指導力の強化を重点として、力を注ぎます。幸い『剣道授業の展開』などの手引書・参考資料の整備が、進んできましたので、それらの活用を進め、教育が充実して行われるよう、努力していきます。

  各種強化活動は、効果が上がるよう努力します。

  指導者養成の枠組みとして進めてきた「社会体育指導員養成事業」は開始以来15年を経ました。今後も着実に広げていきますが、別項に譲ります。また一般講習計画を各剣連が主体的に作成し、全剣連が講師派遣などで応援する、いわゆる軸足のウエイトを地方に移動する方針は継続していきます。

  国際関係に移ります。昨年8月にブラジルで行われた第14回世界剣道選手権大会は順調に行うことができ、日本は4種目制覇の実績を収めましたが、さらに今後努力を要します。

  本年9月に北京で、世界スポーツ連合(GAISF)の武術グループによる武術大会に国際剣連として参加することになります。

  国際関係の剣道振興への援助の要請にはできるだけ応えていくことが必要ですが、アジア地区の振興に配慮していきたいと考えます。

  公益法人制度に対する、新しい政府の方針に対応して、新制度に移行するための検討を進めています。次年度中に申請を出すよう検討していますが、内容と方向について改めてこの欄で取り上げることにします。

  以上、取り敢えず主要事項のみお知らせしておきます。


社会体育指導員養成事業15年を経る

  平成7年秋に第1回初級講習を行ったこの制度、活動を始めてから、次年度で15年になります。生みだした資格取得者は概数で初級6千名、中級2千名、上級4百名に及び、本年度から上級資格の更新講習を行う段階に進みました。

  資格の活用面でなお十分に行かないとする所見はありますが、資格取得者の指導力向上、自覚と自信の充実などを含め、全国的に大きな戦力になりつつあることは間違いありません。

  全剣連では、剣道専攻の学校の卒業者に対する、資格取得のための特別講習を実施するほか、上級取得のための資格年齢を40歳に引き下げることも検討しています。2年後に迫った中学校体育での武道必修化にも資格保有者が貢献できることを望んでいます。

  なお初級講習会はすでに76回が各地で行われ、未実施の府県は、宮崎・鹿児島の2県を残すだけになりました。


訃  報

  次の方々が亡くなられました。謹んで哀悼の意を表します。

  ①片岡 守氏(70歳)が、2月5日急性肺炎で死去されました。片岡さんは明治大学出身、((株)ニチベイの常務取締役を務めておられました。学生剣道の振興に尽力され、全日本学生連盟の代表理事で学生界代表の全剣連参与(理事待遇)として運営に参加され、試合審判委員会委員も務めて頂きました。歯に衣を着せず、活発に意見を述べられる元気な方で、急のご逝去は意外です。ご冥福を祈ります。

  ②小川正亮氏(96歳)範士八段受有、2月9日に逝去。国士舘専門学校卒業、一貫して学校教育、とくに学生剣道の育成に努力され、名古屋市立大学名誉教授、東海学生剣道連盟名誉会長でした。平成11年に剣道功労賞を受けられました。ご冥福を祈ります。


断 片 東京女子医大での総合医学研究プロジェクト終わる。

  5年にわたり40億円を投じて、患者の遺伝子を調べることを手掛かりに、病気の予防・治療の方法を開拓しようとする、この意欲的な国家プロジェクトの取りまとめ・推進に当たられた、東京女子医大教授・国際統合医科学インスティテュート事務局長佐藤征夫教授は、全剣連常任理事・国際担当、国際剣連事務総長の佐藤さんでもあります。

  このプロジェクトは新しい医療の開拓に資するものとして、内外の人材も集めて成果を収めており、今後更に女子医大を場として発展が期待されます。身近な剣道人の業績として紹介します。


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