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平成22年12月号 第281回

(財)全日本剣道連盟会長  武安義光

  秋も本番となり、北国では雪の訪れも報じられています。年賀はがきやカレンダーも売り出され、年の末も近くに見えてきました。剣道界も多くの大会をこなし、今年の活動も山場を越えた感じです。

  全剣連も本年度の前半の行事を終え、その実績を踏まえて、次年度事業の準備に取り組む時期を迎えました。

  11月3日(祝)は例年の通り、全日本剣道選手権大会が開催され、いろいろの意味で充実した大会でした。この前日には評議員会・理事会を持って、来年度行事日程を審議・内定しましたが、特別の案件として、新法人体制への移行に備えて、初めてその定款試案を会議に提案し説明しました。これは今回決定に持ち込むということでなく、各方面の理解を求め、意見も取り入れて本年度末の決定を目指して、内容を固めて行こうとする第一歩の案です。今後各地で説明会も開催し、意見交換も行い、成案を得て行く方針です。


総合的に見て良い大会と見られた今回の全日本剣道選手権大会

  58回目の歴史を重ねた選手権大会、今回は近年に無い充実した大会であったと思います。大会の評価はまずは選手による試合内容かと思います。しかしそれ以外の試合を取り巻くいくつもの要素がうまく調和されたかどうかで大会の良否を判断されます。

  要素としては試合に直結する審判の良否、試合場の適否、観客の数と態度、会場の雰囲気、社会の関心、広報などの条件がありましょう。これらを総合的に見て、今年の大会はこれまでの歴史を顧みても良い点を付けられる大会であったと感じています。


充実した試合の展開が見えた今回の大会

  今年は新人・古豪が入り交じっての激戦が繰り広げられ、緩んだ試合が見られず、技術的にもレベルの高い試合が展開されました。戦前から有力視されていた、三回目の優勝と史上二人目の連覇を狙う前回の覇者の内村良一(東京都)と、八回目の出場で過去に入賞の実績を持ち、警察大会でも優勝を重ねている優勝候補の高鍋 進(神奈川県)の決勝対決となり、双方譲らぬ角逐の末、高鍋が鋭いメンで内村の連覇を阻み、見事な戦いを展開して初優勝を飾ってくれました。

  また新鋭の活躍を見るならば、学生時代から1年おいて2回目の出場の畠中宏輔(東京都)が、初出場の古川耕輔(大阪府)とともに、三位に食い込みました。このほか初出場の松脇伸介(東京都)、石井洋幸(千葉県)がベストエイトに進み、優秀選手賞を受けました。また現職の医師である乗本志考(鳥取県)が、警察官が多数を占める中、3勝してベストエイトの一角に食い込んだ健闘は見事でした。ただ1人学生で出場した遅野井直樹(茨城県・筑波大)は1回戦で敗れましたが、学生界に刺激を与えたことでしょう。

入場者は前年を上回る 筆者写す
入場者は前年を上回る 筆者写す

満員の観客の中整然たる雰囲気のもと大会が進められた

  文化の日の日本武道館には開会の時から、多くの観客が見えました。満員札止めと言われた前年を5%上回るほぼ満席の8,600名の観客の来場を見ています。特筆すべきはこの観客の下、静粛、整然たる雰囲気の中に大会が進められたことです。これは剣道では毎度のことですが、剣道以外では恐らく見られないことで、観客の意識の高さは、剣道の持つ文化性としてお互い誇りにできることと思います。


大会への関心は場外でも高かった

  毎年放映されるNHKテレビですが、今年の視聴率は例年を上回り、5%を超え550万人にご覧頂いたことになります。また当日の全剣連公式Webサイトへのアクセス数は3つを合わせて、前年より激増の30万を超しており、内外での関心の高さを示しました。

  新聞報道での扱いは例年程度だと思いますが、大会終了後、優勝者の所に殺到してサインを求める人々を見るにつけ、審判、大会運営など多くの人の努力、協力による大会の成功を実感させられたことでした。


選手権大会出場者枠の再検討、前大会優勝者の出場特権を廃止

  男子・女子の両選手権大会の都道府県別の出場選手枠については、剣道人口などの統計に基づいて、5年ごとに見直しを行い、所要の修正を加えてきております。本年度がその年に当たりますので、普及委員会などで検討しました。その結果、男子・女子とも若干の修正が行われることになりました。

  今回の大きな改定は、両大会に認められている前年度大会の優勝者を無条件に次回出場できるようにする慣行の修正で、両大会始まって以来行われてきた慣行を、次回より廃止することになりました。 その論点は、選手権大会はあくまで、その年の優秀選手で争うべきで、前年の成績による特権を持ち込むべきでないということです。誠に正論であり、来年の両大会から優先出場の資格を与えず、すべて予選を戦って資格を得た選手で選手権大会を戦うことになります。

  この件は10数年前、筆者が専務理事の時代に、一度提案しましたが、反対論も多く実現しなかった案件です。天皇盃・皇后盃を頂いている両大会であればこそ、妥当な改定というべきでしょう。


新法人体制における定款試案を提示

  政府の法人改革における新体制については、全剣連は一般財団法人として進める方針のもとに準備を進めていますが、このたび長期構想企画会議(議長・加賀谷誠一副会長)での定款試案がまとまりましたので、常任理事会の審議を経て、11月2日(火)の評議員会・理事会に提案、説明を行いました。前書きで述べましたように、来年3月成案を得ることを目途に準備を進めます。

  すでに何回か取り上げていますが、新体制では評議員会の権限が強化され、株式会社での株主総会に近い役割を持つようになり、理事会は執行機関として業務運営を進めることになります。

  これに対応して、評議員は現在の加盟団体のほかに、現在関係団体としている横割り団体、学識経験者を加えることにして定数を増やし、理事は執行機関として数を減らす案になっています。業務運営はできるだけ、現行を踏襲する構想のもとに、条文の整理を行う他、会員制度として団体会員・個人会員を明記しています。


初段受審年齢引き下げを内容とする審査規則改正を見送る

  先月号で記しましたように最近の情勢に鑑み、初段受審資格を中学2年生としている現行基準を、いろいろ問題がある学校年次と切り離し、年齢13歳に引き下げる改正案を専門委員会・常任理事会・審議員会の了承を得て、11月2日の評議員会に提案しました。

  この場で現行の学年制を崩すべきでないとする意見を主張する向きもあり、議論・説明の時間を十分に取れない状況でしたので、皆さんの賛同を得て決定したほうが望ましいとの判断で、会議での決定を見送りました。従って現行基準を続けることになります。

  学校教育と直結する必要のない段位の問題を、学校の学年と結びつけてきたことは、少年体力の成熟度の差の問題を持ち込んだままになる点のほか、国際的に分かり難かったという指摘があります。いずれご理解を得て改めて取り上げることにします。


社会体育指導員養成講習会上級の受講資格を改定

  発足以来15年を経て、順調に進んでいる標記講習会、上級受講資格を「錬士六段以上、年齢40歳以上の者」に切り下げるなどして実施します。詳細は41頁を参照ください。


「段位審査における安全対策」の通達

  実技審査の事故防止のための安全対策について、専門委員会において検討、取りまとめて各剣連に通達しました。


第6回講師要員(指導法)研修会を開催

  10月23日(土)・24日(日)、勝浦市の日本武道館研修センターで、標記研修会を開催しました。25名の範士・教士の講師要員が全国から参集し、2日間の研修を終えました。大家といってよい、全国で指導の役割を担う高段の方々であり、皆さんが謙虚、熱心に受講、研究されることは、各地の指導力アップに大きな効果をもたらすこと確実と期待が膨らむものを感じました。

25名が参加した指導法研修会 筆者写す
25名が参加した指導法研修会 筆者写す

秋の剣道高段者審査会を迎える

  剣道六~八段の審査会が、東京・名古屋で開催されます。ご承知の通り、六・七段の受審者の増加から、八段審査と会場・日程を振替え、11月24日(水)・25日(木)に日本武道館で剣道六・七段を、26日(金)・27日(土)の2日間、東京武道館で剣道八段審査会を行います。

  人数は名古屋・東京での六・七段受審者数はほぼ前年並、八段審査は二日間合計1,740名と、前年を7%ほど上回る多数で、実行側も六・七段審査会場を八会場に増やすなど万全の体制で臨みます。いずれにせよ合計8,000名に及ぶ多数の方々が挑戦される大審査会です。受審者の皆さんの健闘を念じます。


断 片

  本年上半期の全剣連収支状況がまとまり、理事会・評議員会に報告されました。前年同期に比較して審査受審者・合格者の増加が見られ、これによる収入の増加があり、一方支出では事業費支出の減少も見られ、好調な上半期の収支状況を示しました。


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