読売は財政破綻を防ぐために、安定財源を得るため消費税増税は不可避であるとし、菅首相は民主党公約のマニフェストを撤回し、「バラマキ政策の見直しを約束したうえで、消費税率の引上げを野党側に提示し同意を得るよう汗をかくべき」と主張します。
朝日も同様のことを主張します。「もう財政がもたない」との見出しのもと、「民主は公約を白紙に」し予算案を大幅に組み替える。そうした妥協に与野党ともに踏み出す覚悟が必要と述べます。
これらの問題意識をほぼ同様に持った立場に立って、「これから1、2年が日本再生の最後の機会になるだろう」とするのが【日経】で、このためには指導層と若い層の意識の改革が必要と説きます。「アジア諸国に追われてはいるが、日本は技術に強い工業国、各国と競いながら腕を磨けば成長の余地はある」。なすべきことは「経済開国と国内の改革であり、それはまさに明治人が挑み成し遂げたものだ」。とりわけ急がれるのは「TPPへの参加を中心とする貿易の自由化である」と主張し、そのためにも「農業の改革が欠かせない」とします。経済再生の機会を生かせるかどうかは「多分に政治家次第」とし、「外科手術が必要。痛み止めを与えるといった政策を民主党政権は自民党政権と同様に続けている」と批判します。「嫌われても嫌われても、必要な政策を断行するキャメロン英首相を見習うべきだ」とします。
当然の事ながら再生の一方の主役の企業経営者の意識改革と奮起を促します。「保守的な経営が、働き手の潜在力を殺していないか」政治家と経営者は、日本経済のこの大転換期に極めて重大な責任を負っていることを自覚して欲しい」と迫ります。
日経はさらに2日以後のシリーズで「グローバルに活躍できる人の養成」に続いて「技術の囲い込み排し世界市場を目指せ」と述べ、この中で国内メーカー約40社が始めている、直流給電の規格づくりの例を挙げています。続いて「自由化に耐える改革で農業の自滅を防げ」、「成長へ人材と投資を世界から呼び込め」と説きます。
さて元気を無くしているといわれている日本の底力を江戸時代の例を挙げ、元気にするために、いくつかの課題を挙げ、解決の道筋を付けることが必要としているのは【毎日】ですが、その課題については先に取り上げたものと共通のものが多いので繰り返しませんが、「歌麿、写楽などの絵師の登場を可能にした蔦屋重三郎のように、人々の元気と底力を引き出す仕掛け人を生み育てることが大事だ」と結んでいます。
【産経】は昨年倒れた鎌倉・鶴岡八幡宮の大銀杏に見られた空洞化のように、日本も空洞化が進んでいると思えるとし、日米安保体制を例に挙げています。その要因は「空想的な憲法に基づく、一国平和主義から抜けだせないことにある」とします。しかし大銀杏から新芽が出ているように、日本には芯が残っている。それは皇室に代表される伝統や、勤勉・礼節といった国民精神などに形容されるものであり、そして底力を担うものは創業100年を越える2万余の企業とします。その中の1つとして世界の原子炉容器の8割を造っている室蘭の日本製鋼所を挙げています。ここは日本古来の刀剣造りもこれに繋がるものとして続けていることを強調します。
そしてこのような芯を残した根株から、日本経済の新芽が育つことを希望としています。
最後の【東京】は、理想主義の色濃い論を述べています。新興の諸国がナショナリズムを高める環境が厳しい中、「日本は『戦争放棄』を盛り込んだ憲法を擁し、核なき世界を先取りする、非核三原則を掲げてきています。これは今後国際社会に日本が貢献するときの足枷ではなく、平和を目指す外交の貴重な資産です。脅威には同盟国、周辺国と連携し、現実的に対応しながらも、平和国家の理想を高く掲げ、おろそかにしない。これが日本が世界から尊重され続ける道」と説きます。
以上マスコミが掲げた、本年の日本の課題を紹介しましたが、剣道人の立場で参考にすべき点は取り上げて前進を図りたいものです。
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